【インタビュー・明日を語る2016】(10) 魅力を発掘して人を呼ぶ、余所者の視点も必要――『モリウミアス』代表 油井元太郎氏

東日本大震災の被災地では、人口流出に依る地域の衰退が進む。人口減少は被災地に限らず、地方共通の課題だ。宮城県石巻市雄勝町に昨年7月、廃校を活用した自然体験施設『モリウミアス』がオープンすると、人口が3割に減った漁村に県内外から多くの子供が集まってきた。代表の油井元太郎さん(40)は、交流人口を増やすことで地域を活性化しようと取り組む。 (聞き手/編集委員 河合正人)

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震災直後、炊き出しボランティアとして中学校に給食を運んだり、避難所に誕生日ケーキを届けたりしていた。そんな時、海を望む高台にぽつんと立つ小学校の廃校舎を見つけたのが、抑々の始まりだった。今年で築93年になる校舎は船大工が手がけたもので、天井が船底のような造り。屋根には、東京駅と同じ地元産の雄勝石が使われていた。古き良き日本の原風景が、大惨事の中にそこだけ切り取ったように残されていた。廃校舎を再生し、農漁業体験や自然探索ができる拠点にすれば、子供が集まり、町も元気になる――2004年にアメリカから帰国し、子供向けの職業体験型テーマパーク『キッザニア』(東京都江東区)の開業に携わり、企画・運営を担った経験も生かせると思った。2013年4月にはモリウミアスの開設に専念する為、キッザニアの運営会社を辞めた。人口減少が盛んに議論されているが、子供の教育を軸にした活性化策は意外と少ない。子供が訪れたい場所には親もついて来る。工場を誘致しても、景気が悪くなれば撤退してしまうが、子供の教育への関心が薄れることはない。モリウミアスには、昨年B月までに県内外の幼児から中学生まで約500人が集まってきた。海と山に囲まれた廃校に寝泊まりしながら、収穫したものを料理し、残ったものを土に返す。自然のサイクルの中に身を置いていると、家では喧嘩ばかりしている兄妹が助け合うようになる。交流人口が増え、“第2の故郷”のように感じ、何度も来てくれる人が増えれば移り住む人も出てくる。そうなれば、一度は離れた人たちも戻ってくる。子供の心に残れば、未来に繋がる。自然も町も持続可能であることが大切だ。

過疎に悩む地域では、どこも定住人口を増やそうと躍起だが、いくら移住を呼びかけても、「住みたい」と思われる地域を造らないと人は来ない。地域の魅力を掘り起こし、新たな未来を創造しないといけない。そうした点では、自分たちのような余所者にも役割はある。地元の人には当たり前で気付かないような魅力を掘り起こし、外部に発信したり、外部との繋ぎ役になったりもできる。雄勝には、狭い地域に海と山の両方がある稀な自然環境がある。両紙は朝ご飯で普通にアワビやウニを食べたりするが、余所から見れば驚きだ。そこに地方の可能性がある。校舎の改修には約2億円かかった。津波の被害こそ無かったものの、建物は基礎が腐り、荒れ果てていた。インターネットで投資を呼びかける等して、アメリカ、イギリス、カタール等の海外を含む財団・企業・個人から資金を集めた。建築家の隈研吾さんの協力も得て、古い木造建築の良さを生かしたデザインにし、延べ約5000人のボランティアが作業を手伝ってくれた。廃校舎を利用することができたのは、廃校後に卒業生が市から譲渡を受けていたことが大きかった。自治体所有のままだったら、これほど早く、大勢の協力者を得て改修・活用はできなかっただろう。行政から支援を受けると、規制がセットになって付いてくる。行政を充てにしなかったことで、教育と交流人口の呼び込みという個性的な試みができた。我々のような団体の力を生かすには、もっと規制を緩和する必要がある。そうすれば、行政の手が届かないような部分にも、市民団体に依るきめ細かい支援を効率的に展開できる。これからは、モリウミアスを地方再生のモデルに育てるのが目標だ。視察に来た人たちには、包み隠さず説明している。地方には沢山の廃校がある。全国に第2・第3のモリウミアスができればと思っている。




■東北人口減、地方の将来像
震災で人口の7割が流出した雄勝は、全国で人口が増加していた頃から過疎化が課題だった。そこに震災が追い打ちをかけた。人口減少に依る活力低下が避けられない地方の将来の姿が、一気に表れたとも言える。岩手県沿岸の2015年の人口は、2010年比で8.3%減。福島県沿岸も13.0%減。宮城県治岸は、震災後に人口が増えた仙台市を含む為に0.5%減に留まった。住民の移転先となる高台の住宅整備や、被災した市街地の再建に長期間かかっている間に、多くの人が家や仕事を求めて地元を離れた。自治体は人口流出に歯止めをかけようと、住宅や町の再建を急ピッチで進め、産業振興に力を入れ、外部から人を呼び込もうとUターン・Iターンに依る移住促進にも取り組む。市民団体や企業等も復興を後押しする。被災地では、NPO法人や一般・公益社団法人の設立認可は、全国平均を上回るペースで進み、ボランティアの受け皿となった。ボランティア等が繰り返し被災地を訪れ、長期滞在する“交流居住”という関わり方も、地域の活性化に役立っている。しかし、人口減少は今後も続く見込みだ。『国立社会保障・人口問題研究所』は、岩手県の2040年の人口を2010年比で29%減少すると予測。沿岸部だけで見ると、減少率は41.6%に達する。福島県も27%減、宮城県でも16%減と予測する。それは全国も同じ。同研究所の予測では、2040年の全国人口は1億700万人。2010年比で16%減。被災地での取り組みは、消滅の可能性が指摘される地方都市を再生する道筋を探る意味もある。 (編集委員 河合正人)


≡読売新聞 2016年1月10日付掲載≡


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