壇上で咽び泣く出場者たち、創設者は洗脳のプロ――洗脳された馬鹿が大集結! 『居酒屋甲子園』の腐った舞台裏

ブラック業界に洗脳された馬鹿たちが“夢”や“希望”を絶叫する祭典。それが『居酒屋甲子園』だ。新興宗教ばりのヤバい行事が毎年開催される理由とは――? 業界に横行する搾取と洗脳の構造を徹底解説! (取材・文/ノンフィクションライター 中村淳彦)

2015年11月10日、第10回居酒屋甲子園に行ってきた。会場は、5000人収容の『パシフィコ横浜』。入場料は何と5000円と高額で、開演は平日午前10時。「誰が来るの?」って価格と時間帯にも拘らず、会場は若者たちで満員で、驚くほど活気と熱気に溢れていた。居酒屋甲子園は、昨年1月に『クローズアップ現代』(NHK総合テレビ)で『あふれる“ポエム”~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~』という特集が組まれて、大きな話題になった。“ブラックの温床”“やりがい搾取”と大きな批判を浴びたにも拘らず、今年は参加店舗数1482店舗と過去最大で、来場者数も増えていた。当日は、居酒屋甲子園の決勝大会である。地方予選を勝ち抜いて決勝に残った5店舗が、パシフィコ横浜の壇上で、5000人の観客を前に夢・感謝・やりがい・独自の取り組み等を叫ぶ。来場者たちは、夢を持って直向きに頑張って生きる居酒屋店員たちの姿を眺め、刺激を受けて感動し、自分自身を自己啓発することを目的にしている。ツイッターで検索してみると、「今日は、この感動をもらいに来ました」「みんなで目標や夢に一生懸命取り組むことはカッコいい」等々、前向きな言葉一色になっていた。他人の夢ややりがいの絶叫を聞いて、どうして感動するのか? 配布されたパンフレットに、第9回優勝店舗である大分県の『陽はまたのぼる』の経営理念が掲載されている。それがわかり易く象徴している。

陽はまたのぼる 経営理念
(感謝)
 私たちに関わって頂いた
 すべての方のお蔭で
 日々幸せな生活が
 送れること
 生かされている事に感謝
 「ありがとう」を
 心に込めます

居酒屋の店員は、低賃金・長時間労働で不人気職となっている。この経営理念のように、感謝・ありがとう・心等、この具体性の無い美辞麗句を経営者たちは只管叩き込み、真面目で純粋な店員たちは言葉をそのまま信じて、挙げ句に大声で叫んだりしている。そして、同じ理念を信じる店員仲間同士で感動して、涙を流しながら「明日も頑張ろう」と手を取り合っていたりする訳だ。

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居酒屋業界の上層部が居酒屋甲子園を派手に開催することで、店舗だけの経営理念の叩き込みが5000人にまで広がる。真面な人間からすると洗脳とマインドコントロールにしか見えないが、純粋で単純で世の中を斜めに眺める力の無い多くの居酒屋店員や若者たちは、このような美辞麗句を只管信じ込む傾向にある。経営者や業界上層部は反論し辛い綺麗でわかり易い言葉を徹底して利用するので、誰も止める者がおらず、年々洗脳が過激化している。昨年は前述のNHK報道で大きな洗脳とブラック営業批判が起こったが、洗脳される居酒屋店員たちはブラックな労働環境で只管長時間労働をしている為、世の中のニュースには疎い。新聞や本等を読む時間も無い。純粋で真面目な若者を中心に、まだまだ居酒屋甲子園を運営する業界上層部に思うままに洗脳されている現実があるのだ。午前10時に居酒屋甲子園が始まった。出場するのは、関西地区の『火の鳥 天下茶屋店』、北陸甲信越地区の『燕三条イタリアンBit』、東海地区の『かわちどん黒川本家』、関東第2地区の『炭焼厨房炎家』、九州第1地区の『陽はまたのぼる 竹田本店』の5店舗。本格イタリアンのBitと炎家は、地域の食材の使用や地域密着への拘り等、地域性と専門性を高めて他店と差別化する無難なプレゼンだった。「あ、そう。凄いね」って感じ。しかし、居酒屋甲子園の本当の狙いである“ブラック人材マネジメント”的なヤバさを感じたのは、『火の鳥 天下茶屋店』『かわちどん黒川本家』である。大阪市西成区の『火の鳥 天下茶屋店』のプレゼンでは、お客様との接点を増やす為にスタッフが考えた取り組みだという“ジャブ100連発”の徹底で、「将来、火の鳥で働きたい地元の子供たちが続出する」という自慢話が始まった。挙げ句に、近隣の小学生に制服を着させて壇上に上げ、「僕は将来、火の鳥の居酒屋店員になりたい!」と言わせている。何が哀しくて子供が低賃金で長時間労働を強いられ、圧倒的な不人気職である居酒屋店員を夢みなければならないのか。唖然とした。経営者と店長は、「次の世代にカッコいい大人の背中を魅せ続ける。それが地域貢献」と大きく勘違いした決意を語り、自己陶酔していた。




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洗脳目的の居酒屋甲子園の壇上で叫ぶ姿は、カッコいい大人どころか、決してそうなってはいけない大人の見本だが、根本から勘違いしていることを露呈していた。名古屋市の『かわちどん黒川本家』は、学生アルバイトを中心に運営している。「心理学をベースに、インプットよりアウトプット」という人材マネジメントを叫び出した。学生アルバイトを集めた“パワーアップミーティング”では、“お客様に感謝の気持ちが伝わる接客”をアルバイトたちが自分で考えて発表するようだ。言語化することで自己が開発されるとのこと。はい、これ洗脳の手法です。壇上に上がったアルバイトの男子大学生は、「素晴らしい仲間に囲まれている、本当にかわちどんで働いてよかった」と感極まって泣いていた。社会人というより、大学生の部活かサークルだ。居酒屋店員は男子学生が泣きながら感謝するほど、真面な大人が従事するような仕事ではない――そんな現実が浮かび上がる痛々しさが残った。開演から3時間近くが経ち、5店舗全てのプレゼンが終わった。来場者は優勝に相応しい店舗に投票をして、その集計時の合間に“全国優秀店長”が発表される。「アルバイトは家族です! 本当にみんな大好きです!」と満面の笑顔で叫ぶのは、全国最優秀店長を受賞した『稲毛海岸北口の串屋橫丁』店長・渡辺氏。アルバイトの離職が殆ど無く、その理由が「みんな“家族”だから」とのこと。離職が少ないことは素晴らしいが、スタッフは単なる職場の同僚であり、家族ではない。“家族”と聞いて、「従業員は全て私の子供」と公言する“ブラックモンスター”渡邉美樹を思い出す。ワタミは、単なる雇用者と被雇用者の関係に“疑似家族”という概念を持ち込み、底無しのブラック労働に突入している。何の疑いも無く、自信満々に「みんな家族!」と子供のように嬉しそうに語る渡辺店長に唖然とする。結局、優等生的な無難な取り組みをプレゼンした北陸甲信越地区代表の『燕三条イタリアンBit』が優勝店舗となった。居酒屋ではない業態が優勝という面白みの無い結果となっている。

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居酒屋甲子園はNPO法人『居酒屋甲子園』が運営する非営利事業で、法人理事には全国の居酒屋経営者が名を連ねている。入場料は高額だが、覆面調査・地方予選・決勝大会と1年間を費やした大きなイベントであり、居酒屋甲子園で儲けている訳ではない。一体、何が目的で大々的に居酒屋甲子園を開催するのだろうか? 調べていくと、大嶋啓介・渡邉美樹・宇野隆史、そして『倫理研究所』という胡散臭いキーパーソンが浮かび上がる。居酒屋甲子園というイベントを作ったのは、自ら居酒屋を経営する『㈱てっぺん』の大嶋啓介だ。大嶋は、NPO法人『居酒屋甲子園』の初代理事長である。彼は自己啓発セミナーマニアであり、渡邉美樹の講演会に参加して感動し、渡邉に深く傾倒する。そして、中小企業経営者を信者とする“宗教的団体”倫理研究所の熱心な信者であり、彼は倫理研究所の中でも宗教色が徹底して濃いと言われる『渋谷区倫理法人会』に属している。理念経営で富と名声を掴んだ渡邉美樹に感動した大嶋は、自社の居酒屋で従業員たちを洗脳することを目的に自己啓発セミナーに通いまくり、渡邉美樹の経営理念を研究。渡邉美樹の夢という言葉を徹底利用した理念経営と、信奉する倫理研究所の儀式である“朝礼”を合体させたのが“てっぺんの朝礼”であり、てっぺんの朝礼をハイブリッド化したのが居酒屋甲子園だ。そこには、“朝礼”という宗教儀式が根本にあるのだ。大嶋が開発したてっぺんの朝礼は開店前、スタッフたちが夢や仲間の素晴らしさを絶叫して、ハイテンションな覚醒状態にして、勢いよく居酒屋営業に突入する。従業員たちは低賃金で長時間労働を強いられるが、夢を絶叫することで心が高揚し、チームが一体になるという理屈だ。所謂、若者たちの“夢”を利用して洗脳し、覚醒状態にしてモチベーション高く労働をさせる“夢喰い”である。このような洗脳を伴った人材マネジメントで利益を得るのは経営者だけである。儲ける為に1人でも多くの居酒屋店員たちを洗脳しようと、大嶋に促された全国の居酒屋経営者たちが立ち上がり、大がかりな洗脳舞台を作った。それが『居酒屋甲子園』なのだ。

大嶋は自社と居酒屋甲子園の成功だけでは満足せず、

僕たちはこの“朝礼”を日本中に、そして世界中に広めていきます。なぜなら朝礼で人が輝けるからです。朝礼で店が変われるからです。朝礼で会社が、学校が変われるからです。そして、朝礼で日本が変わるという確信を持てたからです。

『㈱てっぺん』ホームページより

と「日本を変える」「世界中に広める」という大きな野望を抱いた。「世界に広める」と公言した大嶋は、本格的に自己啓発セミナーの講師として活動を開始し、近年は多くの教職員や行政職員を取り込むことに成功している。昨年、福岡市立のある小学校で女性教論が大嶋に心酔し、自分の学級に独断でてっぺんの朝礼を持ち込んだことで騒動となった。小学2年生の子供たちは、大嶋と女性教諭に誘導されるまま「スーパーハッピー! ついてる! ついてる!」と叫ばされた。その凄惨な動画がYouTubeにアップロードされて大問題となっている。このような非常識で危険な問題が起こったにも関わらず、大嶋に洗脳される人物は後を絶たない。2015年には岩手県釜石市役所の28歳職員が洗脳され、公的な地域創生事業に大嶋を招聘している。市民が洗脳に対して「洗脳、NO!」を突き付けない限り、全国に広がり続ける勢いなのだ。このような過酷な洗脳文化を作り上げたのは、“居酒屋の神様”と業界上層部に崇められる『楽コーポレーション』創業者の宇野隆史と言われている。先日、楽コーポレーションの元店長が「長時間労働で殺されそうになった」と本誌編集部に駆け込んできた。楽コーポレーションは『汁べゑ』『くいものや楽』等を運営する居酒屋業界のドン的な存在で、ワタミを創業した若き日の渡邉美樹が通い詰めて学び、大嶋啓介は現在進行系で宇野を「お父さん、お父さん」と慕っているという。

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「ブラック労働で身体を壊してから気付いたけど、宇野さんが作り上げた居酒屋の世界は異常ですよ。居酒屋甲子園の家族とか粋とか仲間とか夢とか、あれを皆が本気で言っている。店が強制する朝礼とか、居酒屋甲子園みたいなイベントで、業界を挙げて関係者を洗脳する。洗脳されてなかったら、あの厳しい労働条件では働けないですね。ブラックは当たり前というか、ブラック以前に皆、労働基準法とか知らないですから」。元店長は、全ての社員に“独立”という目標を掲げさせて、実質29歳定年制が敷かれている驚愕の実態を涙ながらに語り出した。「宇野さんは、社員が30代に突入したら給料も高くなるし、長時間労働はできないし、旨みが無いので独立させます。それで、20代の間は“修行期間”ってことで、脱法的な長時間労働をさせる。そうやって人件費を下げて、利益を上げるのです。宇野さんの大成功で、日本全国の居酒屋が29歳定年制を取り入れて、それが常識になってしまった。30代に突入した社員は休みの度に呼ばれて、『そろそろ独立しないか?』って言われるんですよ」。更に、宇野隆史はブラック労働で使い倒した社員の独立にもコンサルタントとして関わり、膨大な利益を上げているという。「宇野さんの取り巻きの1社である“東京ワイン”っていう酒屋からヱビスビールを仕入れて、ビールメーカーからのお祝い金を宇野さんと東京ワインのところでブロックして山分けしている。それと、“上昇気流”って居抜き物件専門の不動産屋があって、宇野さんはそこの役員として名を連ねている。誰がやっても上手くいく超優良物件が出たら、真っ先に楽コーポレーションが新しい店舗を出す。一方で独立を促した社員たちには、宇野さんが手を出さない、誰も借り手がいないような物件を紹介している。大半は2年くらいで潰れる。借金だけを背負って居酒屋業界から消えていく。で、その物件が上昇気流に戻って、また、30代に突入した辞めさせたい社員に物件を掴ませる。そんなことを繰り返している。恐ろしいです」。居酒屋甲子園の洗脳の成功体験を武器に、公的機関にまで進出する大嶋啓介。そして、自分を慕う社員を使い倒して大儲けする宇野隆史。若い居酒屋店員たちが夢ややりがいを絶叫する居酒屋甲子園には、上層部だけが儲けて、洗脳された店員たちが人生を破綻させるブラック過ぎる裏側があるのだ。


キャプチャ  2016年2月号掲載


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テーマ : ブラック企業
ジャンル : 就職・お仕事

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