【インタビュー・明日を語る2016】(12) “経済最優先”を貫く、瞬時に情報が広がり流行差は無くなる――『ファーストリテイリング』会長兼社長 柳井正氏

世界経済は、アメリカの景気が堅調に推移している一方、日本・ヨーロッパ・中国を含む新興国は不安要因が残っている。『ユニクロ』のブランドで衣料品の“SPA(製造小売り)”を展開している『ファーストリテイリング』会長兼社長の柳井正氏に、ビジネスの現状を踏まえた2016年の経済展望を聞いた。 (聞き手/経済部 小野田徹史)

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ユニクロの売れ行きは海外のほうがいい。中国経済の低迷が盛んに指摘されている。だが、消費はそれほど悪くない。政府に依る“険約令”や、汚職追放の強化で高級ブランド品は売れなくなったが、無意味な消費が減り、先進国の消費行動に近づいてきたのではないか。沿岸部は中間層が増えた。内陸部は、これから店舗を展開していく。以前ほど、上海と内陸部で服装に差が無くなっている。国民の20%が新たに中間層になれば、それだけで日本の人口の倍の規模になる。それが13億人の威力だ。『独身の日』と呼ばれる昨年11月11日。『アリババ』は日本円で約1兆7000億円を売り上げた。その中でユニクロは4位に入った。アパレルでは首位。ベスト10入りした海外企業は1社しかない。同業の『H&M』(スウェーデン)や『ZARA』(スペイン)より評価されているのは、現地で生産している理由が大きい。我々は「中国の繊維産業を進化させた」と理解されている。ただ、商業施設が過剰になっているのは問題だ。「新しいショッピングセンターには注意しろ」と指示している。地方政府の主導でホテルやオフィスとの複合施設が増えているが、テナントが埋まっていないところが少なくない。施設が完成すると直ぐファンドに転売するような動きもあり、テナント誘致に力が入っていない。撤退したユニクロもある。デベロッパー(開発業者)の見極めが大切だ。アメリカの経済は好調だ。しかし、地域に依って異なる。郊外の道路沿いのショッピングモールは業績が悪い。そこで、アメリカでの戦略の転換を考えている。ヨーロッパと同様に、大都市の中心部に旗艦店を造り、その周辺でチェーン展開していく。出店先は立地が良く、我々が発信する情報が伝わる“A級モール”に絞る。

日本の景気は個人消費を見る限り、良くない。好調なのは東京・名古屋・大阪・福岡の中心部での高額品と、インバウンド(訪日外国人)の需要だ。地方は購買意欲が戻っていない。大企業の給与は上がったが、中小企業はまだまだだ。安倍首相は新たな『アベノミクス』で、“希望出生率1.8”や“介護離職ゼロ”を掲げた。少子化・高齢化問題の解決は、掛け声だけではいけない。親の介護で会社を辞めざるを得なくなった社員がいた。40歳近い子供は結婚していない。典型的な日本の課題で、経済は縮小に向かっていく。首相には“経済最優先”の原点を貫いてもらいたい。法人税(実効税率)は2016年度に29%台まで下がるが、22~23%にしなければ競争力は高まらないだろう。働き手が減ることへの対応も真剣に考えなければならない。今年から国内外のユニクロ店舗で、計100人を目標に難民の雇用を拡大することにした。これまでに、ミャンマーから政治亡命してきた学生等を13人採用したが、皆優秀で、日本語や日本の習慣を直ぐに覚えた。自国に帰り、「我々のビジネスをやりたい」という人も育ってきた。難民の子供たちに対する教育や訓練が無く、自立が促されないと、将来的に犯罪の道を選んでしまうのではないか――そんな危惧もある。世界経済は“グローバル化”“デジタル化”の2大トレンドから逃れられない。デジタル化とはスマートフォンの普及だ。情報が均等に伝わり、流行は差が無くなっていく。ファッションの違いは、「中国人は赤、日本人は中間色を好む」「東洋人、特に日本人のスカート丈は欧米より長い」といった特性に絞られていくのではないか。流行が廃れるのも速まるだろうが、適応していくしかない。どの国も経済は最優先で、政治的な紛争を起こしている余裕はない筈だ。『環太平洋経済連携協定(TPP)』は経済的な効果だけでなく、「自由主義経済を守る」という姿勢にも意味がある。情報が瞬時に伝わる今、必要なのは経済活動を互いに発展させることだ。悪い意味でのナショナリズムに陥ることを、我々経済人は防がねばならない。




■日本の成長率、1%予測
世界経済は先行きの不透明感が強い。先月、9年半ぶりの利上げに踏み切ったアメリカを除くと、成長の鈍化や足踏みが目立つ。『国際通貨基金(IMF)』は昨年10月、「世界全体の2016年の実質国内総生産(GDP)が前年比3.6%の伸びになる」との見通しを示した。昨年7月時点の予想より0.2ポイント下方修正した。中国の景気減速に加え、原油安で原油輸出国の低迷が続く見通しだ。中国の成長率は6.3%のまま据え置かれたが、昨年(6.8%)より伸びは鈍い。IMFは、中国向け輸出の落ち込みが他の国に響くことも警戒している。ロシアとブラジルはマイナス成長が続きそうだ。ヨーロッパはギリシャ危機の後遺症が癒えず、依然としてデフレ懸念が付き纏う。昨年11月に起きたパリの同時テロの影響を指摘する声も少なくない。日本はアベノミクスを梃子に、景気の底上げに取り組んできた。“3本の矢”として“金融緩和”“財政政策”“成長戦略”が掲げられ、昨年には“GDP600兆円””希望出生率1.8”“2020年代初めまでに介護離職ゼロ”という“新3本の矢”も公表された。IMFが予測した日本の今年の成長率は1.0%。他国に比べると極めて低い水準だが、IMFは尚、回復の足取りの弱さを指摘している。先陣を切るアメリカに、どの国が続くのか。2016年の世界経済の注目点だ。 (経済部 小野田徹史)


≡読売新聞 2016年1月11日付掲載≡


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テーマ : 経済
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