【誰がテレビを殺すのか】(05) ヒットメーカー2人が明かす“超”人気バラエティーの育て方

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「NHKの大河ドラマの裏番組にも拘らず、無名の素人で勝負するのは勇気が必要だった」――日本テレビの古立善之は、視聴率ランキングで常に上位にランクインする『世界の果てまでイッテQ!』のチーフディレクター。深夜番組としてスタートした2005年から参加し、今は企画の立案から番組の総合演出まで担う。イッテQは“謎解き冒険バラエティー”という冠が付いている通り、灼熱の砂漠から極寒の氷雪地帯までタレントが世界中でロケをし、素朴な疑問の答えを探しに行く冒険番組だ。お笑いタレントのイモトアヤコが“珍獣ハンター”として巨大トカゲに追い掛けられたり、マッターホルンやモンブラン等の登頂に成功したりしたことで、一躍、人気番組となった。そんなイモトも、スタート当初は全くの無名タレント。にも拘らず古立が起用したのは、「ユーロ高と原油高が重なって海外ロケの費用が高騰し、制作費が厳しくなった為、ギャラを抑えられるタレントにした」ことが理由だった。しかし古立には、世界中を無名タレントがヒッチハイクで旅して大ヒットした『進め!電波少年』のスタッフとして、海外ロケ等に同行した経験があった。「たとえ無名でも、出演者にお題を与えると自然とキャラクターは生まれてくるし、ロケに出掛ければ神様が降りてくる。だから、素朴な疑問中心の番組から、出演者のキャラクターをフィーチャーするようにシフトさせた」と古立は語る。

とは言え、テレビ放送が始まって60年余りが経過し、海外と雖もカメラが入っていない場所はそんなに残されていない。番組テーマについても粗食い尽くされ、“どこかで見たことのある番組”が溢れている。だが古立は、「見せ方次第で可能性は未だある」と異を唱える。例えば、珍獣ハンターの企画も、「子供たちに野生動物を見せたい」という思いから生まれたもの。先輩たちからは「野性動物なんて過去に散々取り上げていて新しくない」と言われたというが、「それは制作者の一方的な目線だ」と反論する。「そんな番組を見たことがない子供たちにとっては、初めて見る映像。出演者を上手く絡ませることに依って、新しい映像に生まれ変わらせることができる」というのだ。根底にあるのは徹底した視聴者目線だ。古立は、「いつも、『おふくろが見てわかるかなあ?』『うちの子供が見て面白いかなあ?』と考えながら作っている」と言うのだ。ただ、「(視聴者が)見終わった時に『で、何が言いたかったの?』という番組にだけはしないようにしている」という。「驚きが無かったり、腑に落ちないような内容だったりすれば、視聴者が消化不良を起こす。そうならないように起承転結を付け、ストーリーにするよう心掛けている」と語る古立。ここでも、視聴者の目線を大事にしているのだ。




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「テレビが面白くなくなった」と言われる昨今、古立とは違ったアプローチで新たな番組制作に挑戦しているのが、テレビ東京のディレクター・太田勇だ。太田が手掛けるのは『YOUは何しに日本へ?』。来日した外国人に手当たり次第インタビューして、ストーリー性がある外国人を見つけては、日本でのハプニング満載の生活に密着する人気番組だ。そんな番組の中で人気上昇中なのが、日本特有の印鑑に興味を持ち、印鑑を押すことを夢見て来日したロマ君。太田が成田国際空港で捉まえたフランス人モデルだ。そんなロマ君を紹介した週の放送内容を見れば、太田のチャレンジが凝縮していることがわかる。内容を掻い摘んで紹介しよう。念願の印鑑を作製したロマ君は、「預金口座を開けば押せる」と思って訪れた銀行で「近所の銀行に行ってくれ」と断られる。「ならば携帯電話を契約すれば」と訪れたショップで、今度はタブレットにサインさせられてしまい、結局、押せずに終わってしまうのだ。先ず、バラエティーの定石で言えば、印鑑を押すシーンは必須。にも拘らず、太田は押せずに断念することを番組にしている。仕込みゼロで起こったことを全て記録し、失敗したことも敢えてそのまま放送するという手法だ。また、殆どの番組が捨ててしまう印鑑を押すまでの過程(太田の言葉を借りれば“ストローク”)を撮影し続けることで、その顚末をネタにしながらVTRを構成し、ロマ君の愛すべきキャラクターを活写しているのだ。そして、太田が最も大事にしているのは、外国人を変人扱いしないこと。日本人との異質さを強調したり、日本人のほうが優れている点を打ち出したりといった、外国人を“格下”に扱う番組が氾濫する中で、日本を愛し、視聴者が共感できる部分がなければ、たとえ密着に成功しても“お蔵入り”にするというのだ。結果、取材したもののうち、放送に至るのは実に70分の1程度という徹底ぶりだ。古立・太田という2人のヒットメーカーは、「やり方次第で面白い番組は作れる」と口を揃える。だが、テレビマンたちがこうした努力を続けない限り、番組の同質化は更に進み、視聴者から見放されてしまう日は確実にやって来るだろう。 《敬称略》

■世間から馬鹿にされてきた“ながら視聴”こそテレビの武器  TBSテレビ相談役・鴨下信一
「テレビは世の中を映す鏡」という古い言葉があるが、最近漸く実感できるようになった。ただ、この鏡はそれほどクリアではなく、番組に依っては全く映らないこともある。それでも1日中、テレビをつけっ放しにすれば、世の中の動きや向かっている先が朧げながらわかる。そして、視聴者にそういう鏡だと認識されることが大切だ。逆に、インターネットは世の中のことがわかるようで、実はわからない。1秒間に発信される活字中心の何百万もの情報から取捨選択せねばならず、テレビ局の番組ネット配信でも、視聴者は集中して見ることを暗に求められ、疲労感を残す。ドラマもバラエティも報道も、意味のある番組からくだらない番組まで、無作為にダラダラと見たものを頭の中で混ぜ合わせられるメディアは、テレビしかあり得ない。世間から馬鹿にされてきた“ながら視聴”といったテレビの特徴こそが、寧ろ最大の武器になる。業界の人がそのことに気付き、できるだけ多種多様な番組を作り続けることができれば、テレビの未来を悲観することはない。


キャプチャ  2015年11月14日号掲載


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