【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(47) “戦場セルフィー”を見ても無責任な正論を叫べますか?

世界中でセルフィー(自撮り)が大流行していますが、最近では紛争地からも多くのセルフィー動画がYouTube等の共有サイトにアップロードされています。イスラム過激派等の武装組織のメンバーが、宣伝・プロパガンダ目的で現地での“充実した日々”や“謙虚な生活”を配信しているのもその一例。『ISIS』(別名:イスラム国)のようにプロっぽく撮影してきっちり編集するものから、ただ戦地の映像を無編集で垂れ流すものまで、その手法は様々です。特に垂れ流し系の動画は、ナレーションも音楽も一切無く、“物語仕立て”になっていない。例えば、ウクライナの武装集団『右派セクター』の戦闘員がウェアラブルカメラを装着し、撮影した動画をそのままアップロードしているものを見ると、1時間以上も田舎道を装甲車と共に歩くシーンが延々と続きます。かと思えば、同じような動画でも突然、カメラを装着した本人が撃たれ、パタッと映像が横倒しになる――。つまり、思いがけず“死の瞬間”に立ち会ってしまうこともあります。

商業的にパッケージングされていない、そんな“リアル動画”に慣れてくると、「従来の戦場写真・戦争ドキュメンタリー作品・ニュース映像は全てが“アート”だったのではないか?」とさえ思えてくる。どんな映像も取材者の思考が滲み出たり、特定の陣営を美化する等、何かしらの“味付け”があるものですが、セルフィーはあまりにも雑で荒々しく、だからこそ戦場とはどんなものかがダイレクトに伝わってくるのです(故に、受け手の知性・リテラシーも問われるのですが)。インターネットは、万人に情報発信の機会を与えました。そこから生まれた“戦場セルフィー”を次々に見ると、其々の陣営に“視点”があり、善悪など軽々しく判断できないことが肌感覚で理解できる。無実の人を処刑する戦闘員でさえも、その行動は“チェーンオブコマンド(命令の連鎖)”の中でやっているだけで、正義と悪魔の物語はそこには無い。如何に我々が戦争というものを“物語化された作品”を通してしか記憶していないのかを思い知らされます。勿論、未知の世界を物語で知ることは悪いことではありませんが、我々はそれに依存し過ぎてきたようです。




“戦場セルフィー”が映し出す辻褄の合わないカオスを前に、僕は謙虚な気持ちになります。そして、遠く平和な国で「戦争はいけない」と叫ぶだけの人の無責任さを実感します。「あってはならない」ではなく、実際にあるんですよ。“正論”が言えるのは、偶々平和な場所にいるからです。若しかするとその人は一生、本当の戦争を知らずに過ごせるのかもしれませんが、いつ終わるとも知れない戦いの真っ只中にいる人たちに、そんな言葉は何の意味も持ちません。有史以来、人間は殺し合いを続けてきました。近年、先進国の人々は“その残虐性を見ないようにしてきた”訳ですが、今やそれをクリック1つで見ることができる時代です。自らの知性と精神の強靭さに自信があり、お仕着せの理想論や精神論ではなく、「今、世界がどうなっているのか?」を本当に知りたいのなら、覚悟を決めて“戦場セルフィー”を延々と見続けてみてはどうでしょうか?


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2016年2月1日号掲載
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