掟破りの問題作が遂に公開! 暴力団密着ドキュメンタリー『ヤクザと憲法』は、こうして作られた!

ヤクザはタブーだ。今や条例で交際は規制され、取材するマスコミにすら非難の声が上がる。『ヤクザと憲法』は、そんな時代に反してテレビ放送され、絶賛を浴びた怪作である。制作スタッフが舞台裏を明かした! (取材・文/フリージャーナリスト 鈴木智彦)

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テレビの世界では屡々、地方局が問題作を連発する。伝説のドキュメンタリストである木村栄文時代のRKB毎日放送の如くである。現在、トップランナーの評価は恐らく東海テレビにこそ相応しい。2015年、難しい取材に挑み続けてきたスタッフが選んだテーマはヤクザだった。制作チームは長い時間を掛け、大阪の指定暴力団『2代目東組2代目清勇会』の日常に密着した。40分テープで500本に及んだ取材は、同年3月30日、『ヤクザと憲法』というドキュメントとして放映された。中京地区のみの放送でも評判は全国に伝わり、業界で最高の権威であるギャラクシー賞の選奨となった。その後、日本民間放送連盟賞でも優秀賞を受賞した。今月2日に東京の『ポレポレ東中野』で上映されるこの作品は、ヤクザの現実を切り取ると同時に、マスコミの歪みを自問自答する。最早、暴力団という社会悪は取り上げるだけで非難を浴びる最悪案件だ。東海テレビは、ヤクザという血の滴る生肉に“憲法”という申を刺し抜いた。意地悪く書けば、公共の電波に乗せる為の方便だったろう。しかし、それは紛れもなく、カメラが捉えたヤクザの現実だった。制作サイドの葛藤・挑戦・試行錯誤・発見のプロセスは、画面に映らない本編のサイドストーリーだ。チームのトップである東海テレビの阿武野勝彦プロデューサーは、撮影に至る経緯をこう語る。

取材に禁止事項を設けてはこなかったので、よせばいいのに「調べてみたら?」と言ってしまった。すると、見たこともない雑誌(本誌も含まれていた)が机の上に積み重なっていった。「そろそろ止めてもらおうか」と思い、(監督である土方宏史ディレクターを)愛知県警の暴力団取締りの中核にいたOBのところに連れて行ったんです。「殺されるかもわかんないよ。あいつら、何するかわかんないから」と言ってくれると、僕の中では勝手な物語ができていた。「観たいですねえ~」「冗談で言っているんじゃないんです。本当のことを言って下さいよ!」「本当です。ドブの中に手を入れ、そうすると泥を団子にする。手からはみ出して出ちゃう泥は徹底的に取り締まるけれども、中に残る団子はそれなりに許容するんです。それが社会ってもんじゃないんですか?」。ヤクザ取材計画を中止する為の台本が破綻したので、今度は東京の弁護士さんのところに出掛けた。「止めたほうがいいよ」と言ってくれると思ったら、「それは…とても興味のあることだ」って話になっちゃった。川口和秀(2代目東組副組長・2代目清勇会会長)さんは最初、「ヤクザなんて無くなればいいんですよ。無いほうがいいですよ」と言ったんです。「無くなったらどうするんですか?」と質問したら、「今、存在しているものをどうするかが問題なんですわ」と答えた。ヤクザだけだと時代との結節点を描けないので、弁護士を取材することだけ注文を付けた。サンドイッチの中身はヤクザかもしれないけど、パンはちゃんと持てる状態にしなければならない。それが弁護士であり、憲法だった。




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現場に飛び込んだ土方宏史は、元二課・四課担当(詐欺・暴力団)担当で、記者は勿論、取締りに当たる警察官すら暴力団の実態を知らない現実に疑問を持っていたという。「自主規制したカットは無い」と土方は断言する。

目の前で起きた全てのことを撮った。昔と異質の理由でドロップアウトする現代の若者たちも追えた。思っていたことは起きない。それがドキュメンタリーの神様の教えです。想像するな、考えるな、目の前で起きていることを見る――テーマを理解する為には、時間を費やすしかない。毎日、発見があった。実際、こんなにもヤクザに近寄れなくなってる。逆に言えば、「ヤクザが一般人に近付けなくなってるんだ」と痛感した。メディアもまた暴排条例下にあるけど、「たこ焼き買ってきたで」と組の人に言われたら、貰っていいのかすら判断できない。マスコミですらわからないんだから、一般人は尚更です。こうした場面を目の当たりにして、されど人間というところに降りて考えると、食物連鎖のトップにいるようなイメージの、恐竜のように見えていた人たちが、実は底辺にいるのかも。

シノギの様子・部屋住みの肉声・ガサ入れの現場…。ヤクザや警察に怒鳴られてもカメラは止まらない。一歩引いた目線の編集マンが、熱気をギリギリのラインで切り取ってくる。「強面ではあるけど、ヤクザはカナリアかもしれない。彼らはギーギーと綺麗な声で鳴かないので、その声を社会は聞こうともしない」(阿武野)。作品を観ると、仰々しく思えたタイトルが素直に腹に落ちるだろう。現実を知りたいなら、100冊の書籍を読むより本作を観たほうが早い。ヤクザドキュメンタリーの最高傑作であることは保証する。 《敬称略》


キャプチャ  2016年1月号掲載
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