寺院護持と僧侶育成が目的か? 天台宗が高校からの奨学金を増額して対象校を減らした理由

少子化や過疎等の問題は、寺院にとっても無縁ではない。兼務寺院の増加や後継者の問題等、今後の仏教界にとっても重要な課題である。そんな中、宗派として僧侶育成の変革に乗り出したのが天台宗だ。2015年10月下旬に滋賀県大津市の宗務庁で開かれた第133回通常宗議会において、寺院後継者への奨学金給与規程の一部改正の議案が上程され、可決された。同議案は、これまでの給付対象校を絞り込み、給付額を増加するというもので、平成28年度より実施される。実際にどのような変更となるのか見よう。

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先ずは奨学金給与制度だが、これは得度して僧籍を持っていることが条件で、在籍する学校や学科等に依って給付額が異なる。これまでの年額給付額は次の通り。一般の高校なら5万円、指定校である比叡山高校並びに駒込高校は7万円。高等専門学校が5万円、同じく短期大学が5万円(仏教学専攻だと6万円)、一般の大学は5万円(仏教学専攻だと7万円)だが、宗立校である叡山学院と大正大学は共に9万円。叡山学院の仏教専修学科では16万円が年額給付。大学院も奨学金の対象になる。修士課程で5万円(仏教に関する研究は16万円)。博士課程も5万円(仏教に関する研究で20万円)という奨学金規程だった。それが平成28年度からは、一般の高校は僧籍者でも給付対象外となる。比叡山高校と駒込高校は変わらず7万円。比叡山高校の山家寮入寮者には、これまで寮費の年額2分の1以内で補助となっていたが、30万円が支給されることとなった。大学の場合も、仏教学以外の学科は給付対象外となるが、短大や大学で仏教学を専攻(仏教に関する学問という幅を持たせた運用を想定)している学生は従来通り。大正大学の仏教学科以外に在籍する生徒も変わらず9万円だが、仏教学科の在籍者には20万円と増額された。同じく、改正前は給付額が9万円だった叡山学院は20万円に増えている。また、16万円だった仏教専修学科も25万円に増額された。大学院生も増額されており、修士課程で仏教に関する研究をしていれば25万円、大学院の博士課程で仏教に関する研究をしていれば30万円となり、其々10万円程度増やされている。今回改正を行ったのは、どういう理由なのか。教学部担当者が語る。「『今後、数十年で宗教法人の何割かが無くなる』というような話も耳にしますが、天台宗でも地方の寺院では『後継者が上手く育たない実情がある』と聞いています。どうしたらお寺を護持できるかと考えた場合に、寺院毎に運営方法は違いますが、最終的に『天台宗らしい僧侶を育てていくことが、後継者の育成・寺院の護持発展、延いては宗門の発展にも繋がっていくのではないか』と考えました。その為には、叡山学院や大正大学等、同じような年代の僧籍を持った者が集まって、そこで切磋琢磨しながらお互い刺激し合い、学問でも実践でも若い時分から経験を積んだ僧侶を育てていくことが必要です。そうした場に通い易いような奨学金の給与体系に変えたいというのが、今回の改正の狙いだと思います」




今回、改正に依って給付対象校を絞った訳だが、対象外の者への特例措置条項も設けられている。それは、対象外となった一般の大学や短大に在学していても、特別な事情がある場合には奨学金を給付してもらえるというものだ。例えば、震災や地震等で寺院の運営が困難になった場合や、住職が病気や事故で急に亡くなり、寺院の収入がこれまで通りにいかなくなったといった事情がある場合等が該当する。この特例措置条項が設けられた背景には、事前に教学常任委員会で審議が行われた際に、改正内容について、一部その対象外となる人への支援の要望が出された経緯があった。また、議案が可決された宗議会の代表質問でも、寺院存続の為に他の職業を兼ねる者もいることから、対象外の学校へ進学する者への支援の要望も出されている。改正については、こんな意見もあった。地方寺院のある住職の話だ。「事情があって、お寺を維持する為に、他の大学に行かざるを得ない人もいます。先生になる為には教育学部に行くほうが有利だし、他の仕事に就職するにもそれなりの学校に行ったほうがよい場合もある。人材育成は仏教にもいいのではないかと思います。天台宗のお坊さんが弁護士で頑張ってくれれば、それでいいじゃないか。もっと幅広い分野で活躍する人たちに対しての援助が必要ではないでしょうか。叡山学院や大正大学に通う人を増やすというのはよいことだと思いますが、そうした学校に行けないお寺の後継者の人たちも援助してあげてほしいものです」。様々な意見があるようだが、後継者問題に宗派も動き始めたこと自体、注目すべきだろう。今後の実効を見守りたい。


キャプチャ  2015年12月号掲載


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テーマ : 奨学金
ジャンル : 学校・教育

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