【言論の不自由】(02) そんなにいつも繋がっててどうするの

20160131 01
2013年に起きた『広島LINE殺人事件』、あれは恐ろしかったですね。未だ16歳の女の子が元同級生を集団でリンチして、殺してしまった。何で殺意を抱いたのかというと、「LINEで送られてきた内容がムカついた」とか「グルチャの中で言い合いになった」とかで、俺からしてみれば見当もつかない理由。“グルチャ”って? 抑々、1対1じゃなく、不特定多数を相手に会話をしているっていうのがわからない。未知の世界ですよ。文字を送り合って喧嘩したって、それだけで人を殺したくなるほど憎むものなのかな。感覚が麻痺しちゃったんだろうか。命を軽く見過ぎているんじゃないかと思いました。聞くところに依ると、最近の人たちは家族で食卓を囲んでいる時もスマホを離さないらしい。目の前にいる人と話すほうが絶対に大切なことだし楽しい筈なのに、LINEが送られてきたら、自分が読んだのかどうか相手にばれちゃうからと、急いで返事をするんですって。“既読スルー”というやつが大変罪なことのようだけど、緊急の用事でもないでしょう? 返事しないだけで苛々されたら大変だ。そんな荒ただしい食事、俺は嫌だけどなあ。大体、女房の前でそんなことしたら怒られるどころか、飯抜きですよ。

俺はSNSどころか、パソコンを弄るのが大の苦手。覚えられないんだよね。漫画を描く時に、トーンの指定が一瞬でできるソフトがあるというので、いつかは使ってみたいと思っているけど、本気でパソコン教室に通わない限り、先ず無理だな。携帯も未だにガラケーです。電話帳には50人くらい番号が入っているけど、殆ど仕事相手で、プライベートでは一切連絡をしない。「相手も忙しいだろうな、俺に誘われても困るだろうな」と思うと、掛け辛いですね。メールだって、マネージャーさんから「どこどこに何時」と送られてくるのに「わかった」「OK」と打つくらい。絵文字なんて使いません。以前は女房に勧められて、観た映画の感想や仕事の予定を自分のホームページに書いていたけど、それも止めちゃった。別に皆、それほど俺に興味ないんじゃないかなって。漫画の感想も貰ったりして、その時は嬉しいけど、読み返す内に新鮮味が無くなる。俺の漫画を読んでくれる人って、感想も「面白かったです」とか簡潔なものばっかりだったしね。ツイッターだと、返事を書かないだけで悪く言われるんでしょ? 自分を忙しくするだけでお金にならないなんて、面倒だよね。それだけ一生懸命に友だちと連絡を取り合って、何がしたいんだろう。俺の場合、休みの日に「競艇行かないか?」と誘うことがあるかないか。電話をすれば、相手が本当に「一緒に行きたい!」と思っているのか、「仕方ないから行くか…」と思っているのか、声のニュアンスで直ぐわかる。メールじゃ、こうはいかないでしょう。「断られてもいいや」という覚悟が無いと誘えないです。反対に自分が誘われると、どうにも断り切れなくて、何も予定が無ければ、行くつもりがなくても足を運んじゃう。のこのこ出かけていくのに、女房から怒られたりしてね。本当は、「行きたい」と思ったら1人で行って、友だちとは現場で偶然会うのが一番いい。そしたら、片方が勝っても負けても気まずい思いをしないでしょう。だって、俺が競艇を好きなのは、走者が6人しかいなくて、競馬や競輪よりも当て易いからだしね。お金を増やすことに没頭できるというものです。




友だちに期待し過ぎているんじゃないのかな。俺は“親友”という言い方も好きじゃない。そう呼べる人もいない。寧ろ、いないままでいいな。だって、相手が心の中でどう思ってるかなんてわからないでしょう。勝手にライバル視されているかもしれないし、無駄な喧嘩はしたくない。四六時中スマホで動向を知られるなんて以ての外ですよ。つかず離れずの関係が一番だな。1人で家に籠っていると寂しいから、誰かに話を聞いてもらいたいっていう気持ちはわかりますよ。俺も前の女房を亡くした時、寂しくて仕方なかった。人恋しいあまり、女性が来る雀荘に態々行ってみたりね。恋愛するのを諦めたような人ばっかりで、あんまり意味が無かったけど。それから1ヵ月で今の女房と一緒になりました。俺にとっては、女房が一番心を許せる相手なんです。真面に話ができる人なんて、1人いれば充分しゃないのかな。そんな俺でも、女房と付き合っていた頃、矢鱈とデートに誘われるのには辟易していました。出張から帰ってくると「羽田まで迎えに来る」って言う。そこから態々、俺の家がある所沢まで車を運転して、女房は自分の家に帰っていた。分刻みでスケジュールをぎちぎちに詰め込まれている気がして、面倒だったな。いや、有難いんだけど、俺はゆっくり1人で帰って、翌日朝早くから競艇に行きたいのになって。連絡が直ぐに取れるのってしんどいと思いました。公衆電話から相手の家に電話をして、繋がるかどうかもわからない、デートに遅刻をしたらすれ違って会えないかもしれないというドキドキが懐かしいよね。今の若い人たちは、俺の何十倍もそういうしんどさを味わっていると思う。「草食系だ」とか「全然結婚しない」とか言われているけど、そう毎日毎時間連絡を取り合っていたら、相手に対して必死になれっこないでしょう。ちょっと「いいなあ」と思ったら即、LINE。で、返事が無ければ直ぐ諦める。友だち感覚の付き合いが色んな人と簡単にできるから、好きな人が一杯いる状態で、“この人”と決め切れないんじゃないのかな。選択肢が多過ぎるんだ。テレビ電話だスカイプだって、タダで相手の顔を見れるのもおかしな話。一体、誰が動かしてカネを稼いでいるんだろう。そんなにどうしても話したいなら、直接会えばいいのにね。でも、折角会ってもお互いスマホばっかり気にしてるようじゃ、機械に振り回されているだけってことになっちゃって、何だか気の毒だなって思います。まあ、俺に言われたくないかもしれないけど。


蛭子能収(えびす・よしかず) 漫画家・タレント。1947年、長崎県生まれ。看板屋・ちり紙交換・ダスキンのセールスマン等の職を経て、1973年に『月刊漫画ガロ』で漫画家デビュー。1980年代以降はタレントとしての活動に比重を移し、数多くのテレビ番組に出演している。『ひとりぼっちを笑うな』(角川oneテーマ21)・『蛭子能収のゆるゆる人生相談』(光文社)・『蛭子の論語 自由に生きるためのヒント』(角川新書)等著書多数。


キャプチャ  2015年12月号掲載
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