【絶望の非正規】(11) 強まる外国人依存…技能実習制度の矛盾

20160131 11
コストの安い労働力をどう確保するか。企業が食指を伸ばしているのが外国人だ。最近は、海外から来た技能実習生が日本の労働力の担い手となりつつある。技能実習制度は国際貢献の一環として、途上国の若者らに職場で働きながら、一定の技能を身に付けてもらおうというものだ。実習生の数は、リーマンショック後の2009年から東日本大震災があった2011年にかけて減少したが、景気回復と共に増加傾向を続けている(右図)。実習生の国籍は、中国・フィリピン・ベトナム・インドネシアの上位4ヵ国で全体の9割を超えている。2009年までは“研修生”と呼ばれていた。名称変更と共に法的な取り扱いは変わったが、日本社会の中における実態が変わったところは無い。飽く迄も一人前の労働者になる為の“訓練を受けに来た者”であり、労働者ではないと位置付けられているのだ。現在は改善されたが、制度が始まった当初は労働基準法が部分的にしか適用されていなかった。日本人が敬遠しがちな繊維縫製や、水産加工・農業・建設等、低賃金で労働環境のよくない職場で用いられることが多く、ある意味悪名高い制度だった。しかし、近年は新しい傾向が見られるようになった。実習生が衰退産業での労働力の穴埋めだけとは言えなくなってきたからだ。過去10年間の受け入れ先を業種別で見ると、機械・金属が増加し、年に依っては縫製加工等の繊維・衣服を上回っている(同右図)。機械・金属の受け入れ先の多くは自動車関連の輸送用機器製造であり、日本の基幹産業も技能実習生に依存し始めているのである。

但し、技能実習制度は研修生時代から構造的な矛盾を抱えている。先ずは実習生のリクルーティング地だ。実習生の出身地は、何れも急速に経済発展し始めた途上国が中心となる。その為、地元に十分な雇用先ができて賃金の上昇が見られるようになると、それまで集められた労働力が集められなくなる。そうなると実習生の供給源は次々に移動していくが、石油等の資源と同じようにいつか枯渇する。更に、供給地の移動以上の矛盾を抱えている。これまで最大3年を滞在期間とし、原則として再研修を認めていなかった。来日できるのは1回だけなのだ。このようなルールの下で受け入れを進めていくと毎年、受け入れ人数が増えるに従って帰国人数も増加する。この実習生の大量帰国が両刃の剣となる。途上国からすれば、この制度は自国で学ぶ機会のない産業に触れるチャンスを与えられたことになる。1980~1990年代に、日本の造船業は韓国・中国に相次いで抜かれた。この背景には、日本で訓練を受けた大量の元研修生の貢献があることは容易に推察することができる。技能習得という国際貢献は、裏を返せば海外に強力なライバルを作ることにもなるのだ。尤も、近年は瀬戸内の地場産業である造船業等では、帰国した実習生を自社の海外展開の為の人的資源として活用する企業も出てきている。こうした事例が増えるのであれば、単純に技術流出面ばかりを非難することはできない。こうした側面がありながらも、アベノミクスの下で将来的な労働力の減少を見据え、実習生の拡大に舵を切り始めた。既に、建設業と造船業で実習期間を3年から5年に延長する為の法改正が行われ、施行されている。この動きは更に広がりそうで、法務省の第6次出入国管理政策懇談会では、新たに“自動車整備業”“林業”“惣菜製造業”“介護等のサービス業”“店舗運営管理等”で職種の拡充が言及された。最終的に職種の拡大がどこまで進むかは今後の景気動向次第の面もあり、それに依って受け入れ可能職種がどこまで広がるかに依る。




現在、3年まで働けるのは技能実習2号に指定されている71職種130作業に限られる。5年目まで延長される職種は、先ずこの中からとなるので、急激に増やせる訳ではない。尚、滞在期間が3年から5年に延びたからといって、今までの矛盾が消えることは無い。国は実習生を“外国人労働者”と呼ばない上、必ず帰国することを担保に「移民の受け入れではない」としている。しかし、日本人が集まらない職種に実習生を労働力として迎え入れれば、その職場は継続的に実習生を頼りにせざるを得ないだろう。実習生は一定期間しか滞在しないから移民でないかもしれないが、受け入れ先にすれば欠かすことのできない戦力の為、人は入れ代わっても常に一定数は同じ職場で働いている状態になる。労働者でない外国人が絶えず実習している職場が、今後も日本中で拡大していくのだ。更に近年では、実習生が受け入れ先から逃亡し、難民申請する例も数多く見受けられる。こうした事態になるのも、強制的に低賃金の労働市場に張り付けてしまう制度になっているからだ。技能実習生として来日する場合、雇用主と居住場所を決めてビザが発給される為、原則、これらは変えられない。日本人と同等の労働条件とは言え、元々待遇面でも敬遠されがちな不人気職種が多い為、最低賃金水準となっている受け入れ先が少なくない。つまり、来日後は雇用主の変更が許されない仕組みだからこそ、何とか労働力を確保できていると言えるのだ。職業選択の自由さえあれば、獲得できる賃金の上昇は明らかだ。帰国後に有用である技能が身に付く職場でない限り受け入れさせない、或いは仕事の質や量に見合った適正な賃金が支払われるようにしなければ、技能実習制度の抱える矛盾は解消されないのである。


丹野清人(たんの・きよと) 首都大学東京都市教養学部教授。1966年、茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位修得退学。専攻は移民研究・労働社会学。著書に『越境する雇用システムと外国人労働者』(東京大学出版会)等。


キャプチャ  2015年10月17日号掲載


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