【誰がテレビを殺すのか】(07) Hulu・Amazon・dTV…配信戦国時代の真の勝者は?

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2015年10月中旬、東京や大阪にある一般家庭を、シリコンバレーにある『NETFLIX』の幹部を含む外国人スタッフたちが訪問していた。「スマートフォンで見る場合はどこで見ますか? 字幕と吹き替え、どう使い分けているのですか?」。スタッフたちが事細かに質問しいたのは、NETFLIXのサービスがどのように利用されているのかという視聴実態だった。時価総額452億ドル(約5兆4000億円)と、世界最大の定額動画配信サービスのNETFLIXだが、その強みは大きく分けて2つある。1つは、前項にも詳述したクリエイター重視のコンテンツ力。もう1つは、徹底したデータ収集・分析力だ。前者が“文系力”、後者が“理系力”とも言える。NETFLIXは6900万人の会員の視聴データを、インターネットを通じて常に分析している。何を、いつ見たのか、最後まで見たか、どんなジャンルか、どこで停止したか、どんな機器で見ているのか、続編を続けて見たか――。「全部は言えませんが、皆さんが想像できるようなデータは全て収集・分析していますよ」と大崎貴之副社長は胸を張る。しかも、作品には膨大な数のタグが埋め込まれており、好きな役者・監督・場面・カテゴリーも単なるホラーやコメディ等という単純な分類だけでなく、ホラー要素のあるコメディなのか、ファミリー向けなのか等、細かく分析されている。これに依り、ユーザーがログインすると、個別の嗜好に合わせた作品が登場し、次々と作品がリコメンド(お薦め)される。この分析を研ぎ澄ませた結果、アメリカでは膨大な作品数があるにも拘らず、75%がお薦め作品から選ばれるほどなのだ。「視聴者が態々検索しなくていいように、先に見たい作品を提示できるシステムを作り上げています」とトッド・イェリン副社長は話す。冒頭の家庭訪問は、インターネット上で採取できないデータにまで踏み込んでいるということだ。「日本人は、字幕と吹き替えで完全に分かれている。字幕で見る人も、家事をしている時は吹き替えに変えたり、使い分けていることがわかった。各国よりも、深夜のモバイルでの視聴が多いのも特徴。要は、貴方たちは働き過ぎなんですよ(笑)」(イェリン氏)。こうしたリサーチを基に、今後は日本仕様の機能等を随時追加していく予定だという。アメリカでの成功事例をそのまま押し付けるのではなく、日本市場に合わせて適合させていく戦略だ。とは言え、「視聴者を引き付ける“鍵”は、やはりコンテンツ」(大崎氏)なのは間違いない。その1つの武器がオリジナル作品だ。NETFLIXは、ここでもデータをフル活用している。

2013年に約1億ドル(約120億円)もの制作費を投じ、人気を博したドラマ『ハウス・オブ・カード』。実は、企画に当たってNETFLIXは視聴者データを詳細に分析し、ケヴィン・スペイシー主演でデヴィッド・フィンチャー監督という組み合わせを“最適解”として導き出し、アメリカの賞を総なめにした。このように、データ分析とコンテンツ制作の好循環を生み出し、サービス強化を図るのがNETFLIXの最大の強みだ。日本でも、コンテンツ拡充と同時に、年末にかけて新たな作品が発表される見込みだ。9月のネットフリックス上陸に依り、動画配信市場は一気に乱戦模様だ。現状、日本での会員数とノウハウは、数年前から事業展開してきた国内サービスに一日の長がある。最古参のサービスが、『NTTドコモ』が『エイベックス』と運営する『dTV』だ。2009年に携帯電話向けに開始されたサービスは、月額500円の低価格が魅力で、会員数は約500万人に上る。「これまで、動画配信は世間に浸透していなかった。我々には今、圧倒的な会員数がいる。NETFLIXはライバルというより、市場の認知度が上がるという意味で歓迎している」と『エイベックスデジタル』の村本理恵子常務は話す。とは言え、NETFLIX上陸に備え、今年初めから布石は打っていた。人気漫画『進撃の巨人』の映画化と同時に、同じ制作陣に依る番外編を制作したり、リコメンド機能等のITシステムを大幅に強化したりしたのだ。エイベックスの強みを生かした音楽ライブ配信等も、他社には無い特徴だ。ドコモと共同運営のサービスだが、既に他の通信キャリアにも対応しており、会員獲得のペースは上がっているという。もう1つの国内サービスが『Hulu』だ。元々はアメリカ発のサービスだったのを、日本事業を日本テレビが買収した。日本テレビに依る買収時の2014年4月には61万人だった会員数は、2015年3月には100万人にまで伸びている。Huluの運営会社である『HJホールディングス』の船越雅史社長は、「うちの最大の強みはコンテンツ所有者であること。ITよりもコンテンツ好きな人間が運営する高級百貨店を目指す」と話す。日本テレビに依る買収前は海外ドラマ好きに人気だったが、現在は日本テレビの番組を中心としたコンテンツが強みになり始めた。テレビ放送との相乗効果が発揮される場面も出てきたという。「例えば、テレビで毎週放映中のドラマはHuluでの視聴数も多いが、最終回だけは地上波で見る人も多く、放送に戻ってくる等の効果もある」(船越氏)。これまで3社のサービスを見てきたが、「実は本命かもしれない」(テレビ局幹部)と業界内で囁かれているのが、『Amazon』に依る『Amazonプライムビデオ』だ。




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このサービスは、Amazonのインターネット通販で“お急ぎ便”等の特典がある“プライム会員”(会費年額3900円)であれば、動画が粗見放題になるものだ。Amazonは、国内のサイト訪問者数が月間4800万人を超えており、潜在顧客数は巨大な上、数字は公表されていないものの、プライム会員もかなりの数になる。定額配信サービスでは、顧客にクレジットカード等の登録をさせる課金のハードルが一番高い為、NETFLIXは『ソフトバンク』、dTVはドコモを通じて店頭での販促を進めている。だが、Amazonの場合は、多くの会員がそのハードルを既にクリアしていることになる。左うちわで待っていても顧客が転がり込んできそうなものだが、Amazon自身は積極的にサービスを拡充し、攻勢をかけている。膨大な通販のデータ分析から、「現状での理想の割合は、海外コンテンツ3割に対して国内コンテンツが7割」(デジタル映像事業本部のジェームス・ファレル部長)として国内コンテンツを一気に拡充。しかも、若者向けのコンテンツだけでなく、昭和のヤクザ映画までラインアップは幅広い。更には、NETFLIX等と同様、オリジナル作品にも力を入れる。Amazonの場合、DVDやグッズも販売できる為、「コンテンツだけでなく、グッズ等も含めた話し合いを各社と進めている」(ファレル氏)という。グッズ等で副収入を得たいテレビ局にとっても魅力的だ。業界関係者に依ると、AmazonはNETFLIXのような超大作というより、気軽に視聴できる作品をクリエーターや制作会社と進めているようだ。「今は、オリジナル作品と過去の作品の拡充のバランスを考えている」とファレル氏の鼻息は荒い。このように、各社の活発な動きは暫く続きそうだ。とは言え、これまで有料のケーブルテレビを視聴していたアメリカとは違い、無料のテレビが中心だった日本国内の視聴者が「お金を払ってまでコンテンツを見るのか?」という課題は、常に付き纏う。特に、日本でも既に『YouTube』等の無料動画配信が浸透している。テレビ放送を含めた動画市場は、一面では暇潰しの“時間の取り合い”になっており、有料配信は苦戦も予想される。だが、嘗ては人々が食い入るように見詰めたテレビから魅力が消え去った今、クリエイター側が挑戦できる場として有料配信に懸ける思いは強い。業界誌『メディアボーダー』の境治氏は、「よく、『日本人は映像にお金を払わない』と言うが、それは誤解。TSUTAYA等のレンタル店は1000万単位の会員がいる」と指摘し、先ずはレンタル市場が配信にシフトする可能性を示唆する。そして、市場が拡大するかどうかは、コンテンツを提供するテレビを含めた業界全体の取り組みに懸かっている。

■大量の視聴データを徹底分析で更にオリジナル作品を投入  NETFLIX副社長 トッド・イェリン氏
日本でサービスを開始しましたが、我々は最初から完璧であろうとは少しも思っていません。少しずつ日本の視聴者に合った仕様に改良できればいいと思っています。NETFLIXの技術面での特徴は、先ずコンテンツを発見し易いようにしていることです。数チャンネルだったテレビから、一気に何千ものタイトルから選択することになった場合に、如何に視聴者に簡単に選んでもらえるかが大事です。其々の視聴者向けにオススメする“パーソナライゼーション”は、コンテンツの充実と同じくらい重要視している分野です。その為、あらゆるデータの解析を行います。もう1つは、コンテンツを選んだ時に「お待ち下さい」というクルクル回る、あのサインを出さないことに拘っています。2.5秒毎にインターネットの通信を最適化します。今や、地上波やケーブルテレビよりも高いクオリティーを自負しています。世界のデータを分析していて興味深いのは、国籍・年齢・性別といった従来重要視されていた要素が、実はそんなに大きくないということです。それより、「何を見ているか」のほうが国籍・年齢に関係なく、共通性があることがわかってきました。とは言え、コンピューターのアルゴリズムが物語を書ける訳ではありません。ですので、 我々はクリエイターの自由度を何よりも重視しています。日本で始まったオリジナル作品も第一歩です。今後は作品数を倍々に増やしていくと同時に、更なるオリジナル作品を配信していきます。


キャプチャ  2015年11月14日号掲載
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