【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(48) “ホッテントットヴィーナス”の記事をBBCが報じた意味

イギリスの公共放送局『BBC』が年明け早々、興味深い記事を配信しました。約200年前に26歳でその生涯を閉じたコイコイ人(アフリカ南部に居住する民族)の女性であるサラ・バートマンに関するもので、アメリカのスーパーセレブであるビヨンセが最近、その物語をハリウッドで映画化しようと動いているとも噂されています。1789年に現在の南アフリカに当たる地域で生まれたバートマンは、お尻が異常に肥大した“臀部脂肪蓄積症”という病を患っていました。オランダ人地主の奴隷家政婦として働いていた彼女に目を付けたイギリス陸軍の軍医らは1810年、彼女を“商品”して利用する為にロンドンに連れていきます。彼女はロンドン繁華街の見せ物小屋で、“ホッテントットヴィーナス”の芸名で活動させられました(ホッテントットとはコイコイ人を指す当時のスラングで、差別的なニュアンスを含む)。体に密着した服を着て、巨大なお尻を客に触らせる過激なショーは直ぐに評判となりました。

当時のイギリスでは、奴隷制が廃止されたばかりだったこともあり、奴隷解放論者らは「彼女を祖国に帰らせるべきだ」と抗議しました。しかし、当の彼女自身が「自由意思でやっている」と反論し、興行は続けられることになります(この発言が“言わされたもの”だったのかどうか、今となっては不明です)。その後、別の雇い主に依ってパリに連れていかれた彼女は、より屈辱的なショーを強いられました。また、学者も彼女の“普通ではない肉体”に注目。“生きた標本”として裸にされ、体の隅々まで観察されてしまいます。こうした虐待の末、彼女は26歳の若さで他界。アルコール依存症・肺炎・梅毒等、死因については諸説ありますが、何れにしても非業の死を遂げたと言って間違いはないでしょう。悲劇は死後も続き、彼女の性器や脳はホルマリン漬けにされ、臓器と肉を取り除いた“全身骨格”も保存。しかも、これらの“標本”の一部は、何と1974年まで『パリ人類博物館』で一般公開されていたのです。1994年、南アフリカ初の全人種選挙に依って誕生したネルソン・マンデラ大統領は、フランス政府にバートマンの“遺体”を返還するよう求めます。フランス側は当初、“文化の保存”を理由にこれを拒みましたが、2002年に漸く返還に応じた。死後187年が経過して、彼女はやっと祖国で埋葬されたのです。




そんな彼女の墓に昨年、何者かに依って白いペンキがぶちまかれました。南アでは現在、アフリカ植民地主義の象徴であるイギリス人のセシル・ローズの銅像等の撤去を求める運動が黒人を中心に盛り上がっており、“白ペンキ事件”は、これに対する白人側からの嫌がらせと言われています。植民地支配やアパルトヘイトの“後遺症”は、今も色濃く残っているのです。中東やアフリカの混乱、難民の増加に依って、世界中で排外主義が台頭している昨今。ヨーロッパが200年前の植民地支配を今、改めて見つめ直す必要があるのか――。イギリスの公共放送局が全世界に“ホッテントットヴィーナス”の記事を配信したことには、大きな意味があるように思えてなりません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2016年2月8日号掲載
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