【絶望の非正規】(12) 労働組合が守るのは正社員だけなのか?

20160203 01
「ベースアップ(ベア)については、正社員を据え置く代わりに非正規の引き上げを求める」――2014年の春闘で、『KDDI』の労働組合は会社側に異例の要求を行った。基本給の昇給額であるベアを「非正規だけ認めろ」というものだ。交渉の結果、非正規の月例賃金は要求通り平均1万2800円引き上げる満額回答を勝ち取った。労働組合といえば“正社員の権利擁護団体”というイメージが強いが、非正規労働者の増加と共にその性格も変わりつつある。KDDI労組の場合は2012年、入社後に自動的に組合員となるユニオンショップ協定を会社側と結んだ。その結果、組合員対象は契約社員を中心とした直接雇用の非正規も含まれるようになった。現在、グループ会社を含めた組合員は約1万3500人で、そのうち約3900人が非正規。家電量販店等で携帯電話の料金プラン等を説明する契約社員らが加入する。女性が多く、平均年齢は30代前半。ただ、同じ組合員といっても、正社員と非正規では待遇が大きく異なる。契約社員の契約期間は3~5年と有期のうえ、賃金面では賞与制度が無い。そこで労組は、非正規はベアを要求し、正社員の賃上げに関してはベアではなく賞与水準を手厚くするという戦術を取った。業績が好調だっただけに、この要求内容が組合員に説明されると、正社員からは「何で非正規だけ?」等と不満の声も上がった。しかし、これをきっかけに契約社員らが置かれている状況への理解が深まった結果、「『非正規は貴重な戦力。待遇をもっと改善しよう』という意見が正社員から増えてきた」(KDDI労組の春川徹事務局長)という。今年の春闘では正社員もベアを要求したが、引き上げ幅は2700円と、非正規の4800円を下回った。

厚生労働省の調査に依ると、労働組合の推定組織率は1980年代前半に30%を割り込んだ後も低下傾向を続けており、2014年には17.5%まで落ち込んだ。そうした中で存在感が増しているのがパートタイム(短時間)労働者だ。パートの労組組合員数は、1995年の18万4000人から、2014年には97万人に増加し、組織率も上昇傾向にある(左図)。1990年代半ばまでは、「短期で入れ替わる人たちという認識で、パートを組織化している組合は少数だった」(『連合』非正規労働センターの村上陽子総合局長)。その後、長引く不況でパートらが低コスト労働力として益々企業の中で戦力化されていくと共に、労組でも非正規の待遇改善は無視できないものになってきた。流通業や外食等、非正規が多い企業等で組織する産業別労働組合や『UAゼンセン』では、組合員151万人のうち5割強をパートが占めている状態だ。労組としても、これだけ非正規の数が増えると、正社員の要求を集めただけでは、同じ職場で働く労働者の総意とは言えなくなっている。ただ、ユニオンショップを採用している労組でも、組合員を正社員に限定している企業は少なくない。労働者の権利擁護を掲げるならば、雇用形態で区別するべきではない筈。抑々、組織率が更に低下を続ければ、存在意義すら危ぶまれる。増え続ける非正規は、今後の労組の在り方にも大きな影響を与えている。 =おわり

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中島順一郎・山本直樹・冨岡耕・又吉龍吾・山田雄大・池上正樹(フリージャーナリスト)が担当しました。

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“貧困の罠”“下流老人”に続き、生活困窮者をテーマにした特集に携わったのは今年で3回目。私自身、就職氷河期最後の世代です。新卒で就職できずにアルバイト暮らしをする友人もいます。今回の取材も非常に身につまされました。ところで、過去2回の特集を読んだ方に感想を聞くと、「読んでいて、どんどん気持ちが暗くなる。希望の持てる話は無いのか?」と言われることがよくあります。が、はっきり言って特効薬はありません。生活困窮の問題は、単純にカネが無いということだけではなく、家族との関係や社会との関わり方等、複雑に絡み合っています。社会全体が先ずは現実を直視すること。そして、“自分事”として解決策を1つひとつ地道に探っていく必要があります。 (本誌 中島順一郎)


キャプチャ  2015年10月17日号掲載


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