【本当の日韓大問題】(12) “第三国”“新規産業”でタッグ…やっぱり切れない日韓企業

韓国経済が構造不況に陥っている。『サムスン電子』や『現代自動車』の輸出競争力が削がれ、重厚長大産業がジリ貧になっているのだ。その打開策を握っているのは、実は日系企業かもしれない。

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2015年夏、ある日系自動車メーカーのエンジニアが、ソウル近郊にある『サムスン電子』の研究所を訪れていた。セキュリティーチェックの厳しさで知られるこの研究所では、たとえ重要なビジネスパートナーであっても、パソコンやスマートフォンを一時的に没収されるのが常だ。だが、この日は粗ノーチェックで関門を通過できた。VIP待遇で手厚くもてなされたようだ。訪問の名目は、将来のエコカーに関する意見交換である。サムスン電子では、液晶テレビやスマートフォンといった家電市場に次ぐ柱として、車載市場を据えている。その為、日系自動車メーカーの開発情報を喉から手が出るほど欲しいのだ。それだけではない。先方の様子からは、エコカー領域の技術者を探しているらしいことも見て取れたという。サムスン電子と並び、韓国産業界の双璧をなす『現代自動車』。ある社員は、「フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル不正問題が発覚するずっと前から、ベンチマーキングしているのはトヨタ自動車のエコカー戦略。日産自動車でもホンダでも駄目なんだ」と言い切る。「ナンバーワンはトヨタ。我々は2番でもいい――」(同)。これまで、サムスン電子や現代自動車に代表される韓国企業は、日系企業の商品をコピーし、大胆な設備投資と潤沢なマーケティング投資で市場を席巻、シェアを獲得する戦法で成長してきた。究極の“2番手商法”で成功を収めた彼らにとって、社内に足りない技術があれば技術者ごと引き抜いてくるのは常套手段。未だ日系企業を模倣し尽くす手段を止めた訳ではないが、「キャッチアップ商法が天井まで到達してしまった」(『アジア経済研究所』主任調査研究員の安倍誠氏)。ウォン高で輸出競争力を失うと、追撃してきた中国・台湾メーカーにコストで敵わなくなった。日系企業を技術やシェアで追い抜いても、“目標”を失うと忽ち行き詰まった。最早、2番手商法は限界を迎えてしまったのだ。

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目下のところ、韓国経済は構造不況に陥っている。2015年4~6月期における主要企業の決算は散々だった。韓国スタイルが行き詰まったサムスン電子・LG電子・現代自動車等は、揃って大幅減益となった。半導体が復調したサムスン電子は、7~9月期の速報値では増益となったが、懸案のスマートフォン事業の梃子入れは進んでいない。造船・鉄鋼・海運・石油精製といった重厚長大企業はジリ貧の状態だ。造船に至っては、新規受注の激減と海洋プラントというダブルパンチに見舞われており、現代重工業・大宇造船海洋・サムスン重工業の大手3社の営業赤字は4兆5000億ウォン(約5000億円)を超えて、四半期としては過去最悪となった。成長を牽引してきたエレクトロニクスや自動車産業の失速・重厚長大企業の長期低迷・財閥の御家騒動・放漫経営――。ウォン高に転じたタイミングで、韓国企業が抱える問題が一気に吹き出している。破綻懸念のある財閥が続出する中、前政権時代から財閥“一極集中”を進めた韓国政府の経済運営は手詰まりになっている。韓国企業の失速に、日系企業の対応は真っ二つに割れている。全体の傾向としては、日韓の経済関係は希薄化しているが、一度韓国への積極投資を決めた日系企業に関しては、腰を据えてビジネスを展開している。韓国の対内直接投資総額に占める日本の割合は、1985年の70%から近年は10%程度まで落ち込んでいる。同様に、日本の対韓直接投資においても、2012年の45億ドルをピークにして、2014年は16億ドルまで激減し、投資は一服。韓国経済における日本のプレゼンスが低下している。その一方で、韓国企業との関係をより深化させている日系企業も少なくない。例えば、2010年頃からの3回目の韓国投資ブームに進出した素材系企業がそうだ。韓国依存度の高い日系企業を見ると、電気機器・精密機器・機械といったエレクトロニクス系メーカーと化学メーカーが目立つ。韓国地域の売上高を開示している上場企業53社のうち、実に6割弱がこれらの業種で占められている。その殆どが、スマートフォン・薄型テレビ・自動車等といった完成品向けの基幹デバイス・部材のメーカーだ。彼らが、サムスン電子・LG電子・現代自動車の“縁の下の力持ち”となっていることがわかる。




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詰まるところ、韓国経済が再起する為には、財閥の再建、そして日系企業の支援が不可欠になっていくだろう。尤も、一般の韓国民は、富を牛耳っている財閥や日系企業に対して嫌悪感を抱いている。かといって、財閥の経営不振を放置することは、韓国経済全体の信用力を貶めることにもなりかねない。また、素材・生産設備メーカーを中心に、想像以上に日系企業は深く財閥の人的ネットワークに食い込んでいる。そこには、切っても切れない日韓関係が既にある。従来のエレクトロニクスや自動車といった製造業分野における関係強化に加えて、今後、日系企業に商機が生まれそうな領域が“第三国”と“新規産業”である。既に、日本の総合商社主導で第三国における日韓企業の連携は加速している(右表)。抑々、成熟している韓国内需には限界があり、第三国に食い扶持を求めるのは極自然なことだ。韓国企業のコスト競争力と日系企業の信用力を持ち寄り、火力発電所やLNGの案件等、エネルギーやインフラ分野での協業が進んでいる。後者の新規産業での連携は、未だ緒に就いたばかりだ。IT・ロボット・ヘルスケアといった成長分野を想定している。「実は、韓国の中小企業やベンチャーには、韓国財閥ではなく『日系の大手企業と組みたい』と思っている経営者が多い」(『大韓貿易投資振興公社』副館長の大場有博氏)のだという。これには、「韓国の財閥と違って、日本の大企業は技術を根こそぎ盗む等という心配をしなくていい」(前出の安倍氏)という理由がありそうだ。嘗て、こんなことがあった。サムスンやロッテ等の財閥企業が韓国国内で一斉に“ベーカリーチェーン”に参入した際に、「零細パン屋の経営を苦しめる」として韓国中から総スカンを食らったのだ。あるサムスン関係者は、「サムスンでは1000億ウォン(約110億円)がビジネスの最小単位。中々、新規産業が見つからない」と言う。現政権は、財閥企業にベンチャー育成の役割を課してはいるが、彼らにはその素地が無い。韓国の中小企業の組み手として日系企業の存在がクローズアップされるのは、その為だ。実は、日系企業側にも韓国企業と連携を深めたい事情もある。「年間200億~300億ドルの対韓貿易黒字に依る押し上げが無ければ、日本の年平均経済成長率0.69%(2004年からの10年間)は確保できなかった。外貨獲得源としての韓国の存在が軽視され過ぎている」(亜細亜大学アジア研究所の奥田聡教授)という見方もあることを忘れてはならない。八方塞の韓国経済が長いトンネルから抜け出す為には、韓国財閥と日系企業に依存せざるを得ない。これが韓国の生きる道なのだ。


キャプチャ  2015年10月31日号掲載


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テーマ : 日本と韓国
ジャンル : 政治・経済

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