【誰がテレビを殺すのか】(08) 放送と同時にオンライン配信…インターネットテレビ化が進む欧米の放送局

20160207 04
「今や、アメリカやイギリスでは多くのテレビ局がインターネット配信を進め、成功し始めている。このシフトは日本でも今後、数年でより進むだろう」――『NETFLIX』のリード・ヘイスティングスCEOは、テレビとインターネットの関係について、こう説明する。今後も共存は暫く続く筈だが、利便性を考えれば、将来的にテレビがインターネット無しで生き残れないのは間違いない。実際、テレビ局に依るオンライン配信では、欧米が日本の遥か先を行っている。有名なのは、イギリスの公共放送局『BBC』に依る配信サービス『iPlayer』だ。2007年に番組見逃しサービスとして開始され、現在は放送と同時の配信は勿論、他局の番組も見られるプラットホームとなった。国内では同時配信以外は無料で、ニュース等の硬派なものだけでなく、ドラマからスポーツまで見られる便利さ。現在は常時2600万人が接続し、名実共に“オンラインテレビ”になりつつある。

日本では、『NHK』がBBCの成功に倣い、2008年から見逃しを含めた配信サービス『NHKオンデマンド』を開始したが、原則、受信料とは別に料金が必要なこともあり、昨年末で漸く無料会員が145万人を突破したところ。同時配信も民放の反発で遅れていたが、2015年10月に漸くPCやスマホでも見られる検証実験が開始された。一方のアメリカでは、テレビとインターネットの境目がより曖昧だ。ケーブルテレビの契約者減少を引き起こしたNETFLIX等のインターネット事業者を、配線を必要なくさせるという意味で“コードカッター”と呼ぶ。そのNETFLIXのライバルとしてよく挙げられるのが、ケーブル局の『HBO』だ。現在、エミー賞等の各賞を総なめにし、世界中で一番人気ともされるドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』等の制作を手掛けている。HBOは2010年に、ケーブル契約世帯向けの定額配信サービス『HBO GO』を開始し、2015年にはテレビ契約とは別の独立したサービス『HBO NOW』まで開始した。まさに、自らが進んで“コードカッター”にもなっているのだ。NETFLIXがインターネット配信からドラマ制作に乗り出し、HBOはドラマ制作から配信へと軸足を移す等、両者の垣根はどんどん低くなっている。この他、スポーツ視聴でもメジャーリーグ野球(MLB)のサイトが、テレビ局を経由せずに直接、視聴者向けにライブ配信のサービスを始める等、サービスの進化は激しくなっている。




■インターネット配信サービス拡大に立ちはだかる“大人の事情”
2015年10月26日、在京民放5局が提携した新たなサービスが幕を開けた。『TVer』は、各局が既に開設している自前の番組配信サイトにおいて無料公開している全ての放送後の番組を一堂に集めた“見逃し番組配信”のポータルサイトだ。だが、ここには毎週月曜日の午後9時から放送されるフジテレビの看板ドラマ枠、通称“月9”の最新作『5→9~私に恋したお坊さん~』は無い。勿論、フジテレビ自前の番組配信サイト『フジテレビオンデマンド(FOD)』における見逃し番組配信サービスで、同年1月に始まった『+7』でも、TVerと同様に『5→9』は未配信だ。『5→9』の直前に放送された月9ドラマ『恋仲』は、きちんと配信されていたにも拘らず、である。視聴率の善し悪しが問題なのではない。フジテレビの亀山千広社長が同年9月の定例会見で、「“恋仲”の1作品で“+7”全体の半数を占めるほど驚異的な再生数」と月9の配信効果を自画自賛していたからだ。実際、インターネット上では「何故、“5→9”が配信されないのか」という視聴者の悲鳴が上がっている。その理由に対するフジテレビの公式回答はこうだ。「配信の有無はその都度、総合的に判断している」――。対して、「フジテレビの総合的な判断に影響を与えたのは、大人の事情だ」と、複数の業界関係者は耳打ちする。キャストの所属事務所に、その答えがあるというのだ。

『恋仲』で主演を務めた福士蒼汰さんの所属事務所は『研音』。一方で『5→9』のほうはというと、“山P”の愛称で知られる山下智久さんが出演している。山Pの所属は言わずもがな、天下の『ジャニーズ事務所』だ。配信会社関係者は次のように口を揃える。「ジャニーズが、日本のインターネット番組配信サービスの普及を遅らせている大本。キムタク(木村拓哉さん)が主演を務めた月9の大ヒットドラマ“ロングバケーション”や“ラブジェネレーション”は勿論、脇役での出演であっても配信は先ず不可能になるから、辛いところ」。元来、ジャニーズ事務所は肖像権に厳しいことで知られ、所属タレントの体の一部が写り込んだ写真であっても、個人・法人を問わずインターネット上での転載を先ず認めないとされる。何故、ジャニーズはタレントのインターネットへの露出に消極的なのか。「理由は、『ファンを一番大事に』というジャニー喜多川社長の信念に尽きる。だが、ジャニー氏は戦略的でもある。今は『インターネットに(そこまでの)魅力が無い』と値踏みをしているのだろうが、最も効果的な“解禁日”も見極めている筈」(配信事業関係者)。片や、フジテレビのプロデューサーからは溜め息が漏れる。「うちには戦略が無い。戦略的な日本テレビはインターネット配信を見越して、敢えてジャニーズを外したドラマを作っていると言われるのに…」。拡大する新たな飯の種の為に“ジャニーズ外し”ができるのか。将又、ジャニーズが戦略転換を図るのを待つのか――。各局は難しい決断を迫られている。


キャプチャ  2015年11月14日号掲載


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