【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(49) トランプ旋風は、“行き過ぎたPC”に対する白人層の反発だ!

アメリカで“ポリティカルコレクトネス”(通称“PC”)が暴走しています。PCとは、1980年代に始まった「差別や偏見を取り除く為に“政治的に正しい用語”を使おう」というムーブメントです。性別・人種・民族・宗教・職業…。様々な場面で明らかな悪意のある言葉や表現を是正する必要性については、多くの人が賛同するでしょう。しかし、最近では社会の現実を無視して“原理原則”だけでPCを過剰に推し進めた結果、却って世の中が混乱しています。特に、大学のキャンパスは今や“ウルトラPC”状態。大学側が学生に対して“Trigger Warning”――つまり、「これからの講義内容に、人に依っては不快に思うかもしれない文言・表現が含まれています」といった事前警告を入れなければいけないケースも多いといいます。しかし、学生側はそれを逆手にとって、「気分が悪いので…」と合法的にサボることもできるとか…。実に本末転倒です。

これは極端な例としても、アメリカでは昨今、公の場で“言ってはいけないこと”や“反論してはいけないこと”が多くなり過ぎた。悪意の感じられないものまで一緒くたに言葉狩りされている印象です。“政治的な正しさ”を誰が判断し、どこに線を引くのか。これは非常に難しい問題です。例えば、究極的に突き詰めれば、「帝国主義の時代に遡って、先進国は世界中で収奪した富を100%元通りに再分配しろ」という主張は“正しい”かもしれない。しかし、そんなことを言っても実現は不可能だし、“収奪された側”の子孫でさえ、多くはそんなラディカルなことは望まないでしょう。アパルトヘイトを終わらせた南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ元大統領(故人)の言葉を借りれば、重要なことは「如何にして真実と和解するか」。歴史的事実を咀嚼しつつ、今の時代に合った現実的な落としどころを見つけるしかないということです。現在、アメリカ大統領選の共和党候補者争いで“旋風”を巻き起こしているドナルド・トランブの躍進も、こうした“行き過ぎたPC”に対する白人層の反発が原動力になっているように感じます。




多様化が進んだ近年のアメリカでは、人種差別的な言動はPC的に“アウト”です。しかし、黒人や他の有色人種に対して、内心では“ある種の優越感”を抱いている白人は、現在でも少なくない。グローバル化の影響で豊かさから見放された一部の白人層が、その根拠の無いプライドの行き場としてトランプを支持している訳です。PCが広まれば広まるほど、逆説的にトランプの差別的発言は「本当のことを言ってくれるのは彼だけだ」と一部の人々に支持され、際立っていくのです。日本の差別構造にも似たところがあります。この国では、昔から“部落差別”や“在日差別”が一種のタブーだった。勿論、差別は是正すべきですが、それがきちんと議論されることはなく、いつしか“臭いものには蓋”で水面下に潜り、あらゆる差別が“無いもの”とされた。その反動として近年、あの醜いヘイトスピーチが表出している――。そう考えると、果たして日本人はトランプ旋風を笑えるのでしょうか?


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2016年2月15日号掲載


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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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