渦中の『アリさんマーク引越社』副社長も猛反論! “ゼブラ化”する新型ブラック企業が増殖中!

過酷な労働を強いる“わかり易い”ブラック企業は、ここ数年のバッシングと共に減少傾向にある。一方で深刻化するのが、ホワイトとブラック的要素が混在する“ゼブラ企業”だ。表向きは働き易い労働環境を演出しながらも、業績維持に過酷なノルマを強いるブラック部署が存在。見え難くなるつつある新型ブラック企業とは一体何か――。 (取材・文/フリージャーナリスト 秋山謙一郎・ルポライター 奥窪優木・フリーライター 高島昌俊・宮下浩純・山田ジン)

20160211 01
2015年で4回目を迎えた『ブラック企業大賞』。ノミネートされた6社の事案を見れば劣悪な労働環境というイメージを受けるが、企業にも言い分はある筈だ。そこで、各企業担当者に話を聞いた。先ずは、授業以外の業務に賃金が払われない“コマ給”問題が浮上した『㈱明光ネットワークジャパン(明光義塾)』の関係者が、絶対匿名を条件に重い口を開いた。「入って2ヵ月のアルバイトに引っ掻き回された感はあります。こんな主張を到底することはない筈。ブラック企業に名前が挙がってしまったことは残念ですが、指摘事項について、改善すべき点があれば改善するのは当然です」。続いて、明光義塾と共にノミネートされた『ABCマート』はどうか。同社は月97~112時間の残業をさせたとして、労働基準法違反として2015年7月に書類送検された企業だ。担当者を直撃したところ、「現段階ではコメントは差し控える」という回答に終始。だが、関係者の1人がその内幕を語ってくれた。「(組合屋に)やられたという感覚はありますよ。うちにだって、極一般的な福利厚生はきちんとある。ただ、今は書類送検されて間もなく、時期が悪い。言いたいことは山ほどあるが、今は何も言えないよ」。同大賞にノミネートされただけで企業イメージは大きく損なわれる為、言い分はあっても口数は少ない。“ブラック企業”という言葉は、それほどの衝撃を企業に与えるのだ。

2015年もブラック企業大賞が発表され、テレビCM等でお馴染みの有名企業も名を連ねた。過酷な労働環境が問題視される中で生まれた“ブラック企業”なる造語が市民権を獲得して久しいが、「(受賞企業のような)わかり易いブラック企業は最早少ない」と提言するのは、産業医の大室正志氏だ。これまで延べ40社以上の企業の過重労働面談を担当してきた大室氏は、「1つの企業にホワイト/ブラック的要素が混在し、斑のようにゼブラ化した日本企業が蔓延している」と言う。「経営のスピード化・業務の細分化に伴い、職種やポジションに依って仕事量が激変する時代になったことが1つの要因として挙げられます。ブラック企業でも管理部門はホワイトな労働環境だったり、ホワイト企業でも現場の最前線はブラックだったりする。どんな企業にも必ずグラデーションが存在し、7割のホワイトな部分が残り3割のブラックな労働環境を隠し、表向きホワイト企業となっているケースもあります」。残業代の支給・育体制度等、福利厚生が整ったホワイト企業を維持しようとした結果、業績を維持する為のブラック部署が存在。また、幹部候補生の新卒採用をホワイト待遇する為に、中途採用をブラック待遇するケースもある。「経営の多角化や新規参入に依って、突発的に激務になる“ゲリラブラック”も散見されます。ゼブラ化するブラック企業の問題は、多くの社員に自覚が無いこと。40歳を過ぎて体に不調が出て、初めて気付く人も少なくありません」(大室氏)。こうした企業のゼブラ化が増殖した背景について「労働法制上、当然の帰結です」と語るのは、人事コンサルタントの城繁幸氏だ。「日本の労働法制は、36協定然り、明治時代の工場生産のように『1時間働けば、必ずこれだけの成果が出る』という単純な方程式の上に成り立っています。しかし、業務が複雑化し、労働時間と成果が比例しなくなった現代において、その方程式を満たすには、どこかの部署に必ず皺寄せが来る。その上、終身雇用の為に生産性の落ちた社員を養わねばならず、優秀な社員ほど負担が増す構造になっているのです。この矛盾に対抗する為の労働者の武器は“労働力の流動性”、つまり転職ですが、専門性が高くて狭い業界では難しい。逆に、転職し易い飲食や小売り等は声を上げ易く、これが業界のブラック的なイメージを形成している側面もあります」。つまり、声が上がらないだけで、ブラック色の強いゼブラ化した企業は各業界に蔓延しているのだ。「特に、転職が困難になる30代後半から40代のプレイイングマネージャーは、ゼブラ化した企業の中でも最もブラックな労働環境に置かれる確率が高くなります。今後は少子高齢化の中で人材が不足していけば、企業内の白黒の濃淡は、よりくっきりと浮かび上がっていくでしょう」(城氏)。“ブラック企業”という造語が独り歩きしているが、真に問題視すべきは、こうした見え難いゼブラ化した企業だ。既に悲鳴を上げている現場のリアルを追った。




20160211 02
■ホワイト企業内のブラック職場
残業時間が少ない“ホワイト職業”の代表格と言えば公務員だろう。北関東の某市役所に勤める辻岡謙二さん(仮名・40歳)もそう思い、公務員になった。だが、実際は「8割方はホワイトだが、残り2割はブラック」と疲れた様子で内情を明かす。「市役所に入庁して土木課や都市整備課を担当しましたが、17時15分には終業。片付かない仕事は翌日に回せばよかったので、残業の概念自体がありませんでした」。しかし、財政課に配属されると状況が一変。因みに、取材前日も庁舎に泊まり込み、徹夜で補正予算の取り決めに追われていたとか。「基本的に年中忙しいですが、毎年3~5月と8~11月は予算の割り当てや決算の集計作業があり、残業が月100時間を超えます」。労働基準法で定める1ヵ月の時間外労働の上限45時間は優に超える。徹夜や連日の深夜残業に、家電量販店から転職した後輩社員も「ブラック認定を受けた元職場より残業が多い」とボヤくほどだ。「うちの市役所には約60の部署がありますが、中でも財政課を筆頭に、 生活保護を扱う生活福祉課、それと国民健康保険課は“役場の3大ブラック部署”と呼ばれ、誰も行きたがりません」。公務員の場合、残業は自己申告制でタイムカードも無い。民間以上にサービス残業の温床になっている。「10月は130時間残業しましたが、申告したのは10時間。財政課では『いくら残業しても申告の上限は10時間まで』という暗黙のルールが存在する為、泣く泣くタダ働きをせざるを得ない。建前上、うちの市役所では残業が殆ど存在せず、上限以上の残業を申告したくても上司は判を押してくれません。今の年収630万円に占める残業代の割合は精々20万円程度。血尿が出るほど残業して少ない手当では、モチベーションも上がりませんよ」

一方、“ホワイト企業”化で企業イメージをアップさせようとした結果、一部のブラック部署を生んでしまうケースもある。建井博樹さん(仮名・40歳)が勤める大手通信メーカーのグループ企業は、4年前に社長提案で“残業削減運動”を実施。その結果、社員1人当たりの残業は月20時間に減少。昨春からは、これをバージョンアップさせた“残業ゼロ運動”がスタートした。業務の効率化等を図り、残業は平均10時間まで減り、ホワイト企業化したかに思えるが、「私が在籍するシステム管理課だけは蚊帳の外」と語る。「保守点検等、メンテナンス業務を担当する社内で唯一の24時間体制の部署で、会社はうちの課だけスルー。業務には専門技術を要する人員が必要なことから、慢性的な人材不足が続き、システム管理課だけは入社後3年の離職率が3割以上。残業無しでは、部署として業務が遂行できない状態です」。2~3時間の残業なら未だマシなほうで、日勤+夜勤の24時間勤務も月に数回あり、1ヵ月の時間外労働は80時間に及ぶこともある。「総務部は、こちらの事情に理解を示そうとはせず、それどころか『残業を減らせ』の一方的なメールを送ってくる。私は部署の係長なんですが、査定は『労務条件が守られていない』とマイナス評価で、残業の少ない同期と年収が粗同じ650万円というのも納得できません。こっちは『ブラック過ぎて辞めたい』と口にする部下を必死に説得し、ストレスも疲労も溜まる一方なのに…。今や、睡眠導入剤無しでは寝ることもままなりませんよ」。残業時間を少なく申告しなければならない雰囲気も社内に蔓延。定時の終業時間で帰る他部署の社員を見ながら残業する建井さんの部下の中には、“鬱病予備軍”と言っても過言ではない人たちが多数存在しているという。

また、真田信二さん(仮名・39歳)が勤務する高齢者向けの住宅リフォームや食事配達を扱う福祉系企業は、男性社員を対象に最大3ヵ月の育休が取れるように育児休暇制度を拡充。対象社員の7割が利用する等、福利厚生が浸透した優良企業なのだが、「営業所長が超の付くほどのブラック上司で、育休申請が却下された」と嘆く。「兎に角、理不尽。手こそ出しませんが、営業ノルマ未到達の部下に対する恫喝・罵倒が酷い。提出する報告書や見積書のミスにも過剰なまでに反応し、これまで泣かされた社員は1人や2人ではありません。社員の育休取得にも反対の立場で、女性社員ですら中々認めようとしませんでした」。営業所長は人間性に問題があるものの、営業成績が極めて優秀な為に会社は黙認。だが、彼の部下が定着する筈もなく、過去3年間に営業所のスタッフは、契約社員を入れると8人が辞めていった。「私は、社内で自分しか持っていない“福祉住環境コーディネーター1級”の資格を所有しており、これを生かしてリフォーム担当の営業マンとして仕事していました。けど、上司は私が難関資格を持っていることが気に入らず、終業時間直前に『明日の会議の資料を作れ』と命じて、深夜まで残業をさせられたことが何度もありました」。そして、「営業車が足りないから」とマイカーで外回り中に接触事故を起こした真田さんに対し、「会社の車ではないから補償できない」と書類に判を押すことを拒否。仕方なく、30万円の修理費を自己負担したこともあるそうだ。「年収680万円のうち、殆どがブラック上司手当だと割り切って働いています。そう考えなければやっていられませんよ」。ホワイト企業と呼ばれる会社は、一部の犠牲の上に成り立っているのかもしれない。

■社員の意見を吸い上げた制度改革でブラック企業に? 『資生堂』社員に聞いてみた
安倍首相が掲げる“女性が活躍できる社会の実現”の先駆け的存在だった資生堂。育休や短時間勤務制度が整ったホワイト企業だったのにも拘らず、時短勤務の美容部員に1日18人の接客という通常時間勤務者と同じノルマを課していたことが発覚。その為、「ブラック企業だ」というバッシングを受けている。美容部員の池田幸子さん(仮名・29歳)が現場の声を代弁する。「産休明けの部員の中に『子育て中だからと気を使われて、やる気が削がれる』という声があったので、会社は改革しただけ。なのに、一部の人が騒ぎ立てて、いい迷惑ですよ。現場スタッフとしては、『育休明けに職場へ戻った以上、1人のスタッフとしてしっかり働いてほしい』という声が殆ど。そうしないと、通常勤務の美容部員に負担がいく訳ですから。それが嫌なら辞めればいいのに」。思惑の違いすら世間に拡散され、騒動になる。何とも世知辛い話だ。

               ◇

20160211 06
■ブラック企業内のホワイト社員
①残業代が支給されない過酷な労働環境でも成績次第で年収1000万円  不動産営業・椎名純一さん(仮名・35歳)
歩合制で残業代はゼロ、休日出勤は当たり前――。過酷な労働環境からブラック企業というイメージの強い不動産営業。その中でも、業界内で“ブラック”として有名なA社に勤務する椎名純一さんは、「人に依ってはホワイトな部分もあるんですよ」と主張する。「営業マンですから結果が全て。その為、勤務時間はあって無いようなものです。平日は早朝から深夜まで働き、休日出動しても手当も残業代も出ません。平社員の給料は17万円+歩合給。1年と経たずに、8割の人間が会社を去っていきます」。昔ながらの営業スタイルを貫き、新人社員はオフィス街に立って道行く人と名刺交換し、手に入れた名刺に片っ端から電話営業をかけるとか。それでも売り上げが立たない社員に対し、「こういうヤツは会社のゴミです」と上司の罵声が社内に響くのは屡々だという。更に、社内には年間の個人成績が一目でわかるよう、全社員の売り上げを棒グラフ化。成績上位者が明確な一方で、売り上げの悪い社員は晒し者にして奮起を促すゴリゴリの営業会社だ。ここまで聞いた限り、ホワイトな部分は見当たらないのだが…。「確かに環境は劣悪ですが、成績次第では高給を手にすることもできます。基本給こそ雀の涙ですが、 社員は売り上げに応じて“フレッシュ”“ジュニア”“シニア”とランク分けされ、歩合率も15%・20%・30%と定められています。私は現在、シニアにまでランクアップしたので、仲介手数料(物件価格の3%)の30%が歩合で付く。先月は5000万円の物件を2件成約したので、90万円の歩合給が付きました。業績が一向に上がらず、基本給だけでずっと働いている社員にとってはブラック企業かもしれませんが、結果にコミットしてくれる我が社は、私にとってはホワイトですよ」。転職6年目の今年は年収1000万円が見えてきたという椎名さん。カネを稼ぎたい社員にとっては、ブラック企業もホワイトな側面を持つということか。

②部下に朝活&残業を指示、自身は定時で帰宅してホワイト社員の地位へ  広告代理店・大場正隆さん(仮名・48歳)
「早めに出世できて本当によかった。あの環境で働くことを考えるとゾッとしますよ」。白い歯を見せてそう語るのは、広告代理店で局長を務める大場正隆さんだ。“あの環境”とは、部長以下の社員が働く環境を指している。大場さんは、過酷な現場時代をこう振り返る。「部長時代は残業は当たり前で、プレゼン資料を作る為に深夜まで職場に残ることも珍しくはありませんでした。雑務も接待も多く、息抜きする時間すら無かった。『絶対に上に行ってやろう』と死に物狂いで働いたのを覚えています」。現在の局長クラスにまで出世すれば残業は皆無。定時退社が日常になる。そして、ゾッとするもう1つの要因が、大場さん自身が取り組んだ新たな試みだ。「出世した私の最初の仕事は、人件費の大幅削減。『社員をクビにせず』というのが至上命題でした。そこで目を付けたのが朝活。ブームに便乗した残業代のカットを思いついたんです。新しく部署を新設するに当たり、実験的にその部署限定で朝活を実施させてみることにしました。部長に指名したのは36歳の若手の有望社員。勿論、事業を任せられるだけの実力者ですが、年齢的に見たら異例の抜擢。『社内に新しい風を吹かせてほしい』と説いて、スタッフも若手で固め、新たな取り組みの1つとして朝活を実践するよう促しました。朝に仕事をさせることで、残業代をカットしようと考えたんです」。大場さんの思惑はピタリとハマり、会社の期待に応えようとする新部長の舵取りで朝活にシフト。残業代に対する不満はあるだろうが、新たな組織のきっかけになろうと社員たちは奮闘を続けているのだという。「私の時代も激務でしたが、残業代はしっかり貰うことができていた。大変な気持ちがわかる分、残業代をカットしているのは申し訳ない気持ちもあります。ただ、こればかりは社の方針なので何とも言えません。この劣悪な環境で働かされる前に出世できて本当によかった。来年度からは、全部署で朝活を導入予定です」。人件費削減の可能性が見えたことで、大場さんの評価は右肩上がり。年末のボーナス査定が待ち遠しいのだとか。現在は朝活する社員を横目に、定時出社の定時退社。年収は1500万円を超えている。

③残業が当たり前の職場で、総務部はノー残業のオアシス  飲食チェーン・杉下剛さん(仮名・38歳)
『すき家』や『ワタミ』に代表されるように、時間外勤務の長さ等が問題になっている飲食業界。某ファミレスチェーン社員の杉下剛さんも、入社後14年間は店舗勤務で、当時は休日出動を含む時間外勤務が毎月100時間前後。その後、2年間在籍した本社の営業企画部も月に50~80時間の残業があったが、「残業が月5時間程度しかない」という総務部に異動した。「辞令を言い渡された時、心の中でガッツポーズをしました(笑)。うちの会社の総務部は、上層部のホワイト企業を目指す上で『労務を担う総務部の残業が多いのは拙い』との意向で、ホワイト職場になっているんです。店舗勤務なら、今の570万円という年収より20万~30万円は多く貰えたと思いますけど、現場を知っている身としては、たとえ年収が下がっても総務部のほうがいいです」。しかし、現場第一の飲食業界では、“総務部配属”は出世街道を外れたことを意味しているとか。実際、どのような社員が配属されるのだろうか? 「飽く迄もうちの会社の場合ですが、現場を離れたアラフォー世代の社員で、且つ出世コースから外れている連中が来る部署ですね。勿論、稀に幹部候補の社員が異動してくるケースもありますが、そういう社員は私なんかと違って管理職として配属されます」。当初は自由に使える時間が急に増えて戸惑うこともあったそうだが、フットサル等の趣味に費やしたり、友人と飲む等といったプライべートは充実するようになったとか。ところが、居心地がよ過ぎる余り、総務部から異動することを考えると憂鬱な気分になるという。「最も避けたいのは店舗動務。体力的にキツいし、一度、楽を覚えてしまったので再び現場で働けるか不安。現に、それが嫌で総務から離れるタイミングで会社を辞めた社員も、私が知るだけで5人います。私も再来春には異動予定なので、それが今の大きな悩みですね」

■ブラック認定されて労働環境は改善された? 『すき家』社員に聞いてみた
“ワンオペ”という言葉と共に、過酷な労働環境が明るみに出てから早1年。すき家はブラック企業から脱却することができたのか? 東北地方で店長を務める市原純ーさん(仮名・39歳)が証言する。「週1回は必ず休みを取るよう徹底されています。『今日で15連勤だ』なんて嘆いていた頃が懐かしい。労働時間も原則的には週40時間に設定され、深夜帯にしかシフトに入らない専任マネージャーの採用も行っています。昼夜の動務が明確に分かれたことで、働き易い職場にに変化しつつありますね。ただ、過去の印象が強いせいか、応募は限りな<少ないのが現状です」。一度、付いてしまったブラック企業のイメージは、中々払拭できない。また、「ブラックでも稼げるから」と働いていたアルバイトが辞めていくという事情もある。その為、人手不足は解消されておらず、営業時間を短縮する等しているとのことだ。

               ◇

20160211 03
■「全ては従業員を守る為にやったこと」  『引越社』・井ノ口晃平副社長インタビュー
2015年度のブラック企業大賞に彗星の如く現れた『アリさんマークの引越社』でお馴染みの『㈱引越社関東』。“シュレッダー係”というお仕置き係の存在や、労働組合への恫喝動画等がインターネット上に配信され、一気に炎上した。そこで、ブラック企業認定されたことについて、恫喝動画の当事者である井ノ口晃平副社長を直撃した。

――今回の騒動は、多方面で大きく報じられました。
「先ず言いたいのは、労基署の調査で違反行為と認められたのは、深夜残業の未払いと労働時間の超過、其々1件ずつだけ。そこは直ちに対応し、改善しました。こうした問題を放置するのが本当のブラック企業だと思うんです。他にも、弊社が車両事故を起こした社員Aに48万円の弁償金を請求し、給料から天引きした等の報道もありましたが、それはその社員が正月明けの1月10日、しかも営業前の出勤中に起こした事故だったから。それも結局は、1円も彼から徴収できていません」

――では、シュレッダー係はどうですか? 1日中、シュレッダーをかけさせ、罪状を書いた指名手配のような張り紙をするのは、行き過ぎた処分だと思いますが…。
「弊社を訴えている社員Aは遅刻癖があり、先ほどの事故もあって、営業からアポイント部へ異動。それでも遅刻を繰り返した。社内の規律を乱さぬ為、頭を冷やす処分としてシュレッダー係を担当させた訳です。抑々、社員Aの主張は一方的過ぎます。妥結案を話し合っているのに『生涯賃金を支払え』とか。そんな法外な要求に応じられる訳がない! そんな中、相手の挑発行為に乗って恫喝動画を撮られてしまい…。まさか、あれほど編集されて配信されるとは思いませんでした」

――御社に厳しいルールや処分が散見されるのは何故ですか?
「半分はお客様の為で、半分は社員をクビにしない為です。引っ越し業という性格上、色々な事情の人間が働いています。正直、高卒者や中卒者が殆どで学歴も高くない。彼らが若し飲酒運転や窃盗をすれば当然、解雇せざるを得なくなり、社員の家族も含めて路頭に迷ってしまう。そうした事態を未然に防ぐ為、社員教育と規律の遵守を徹底している次第です。リーマンショック時も“給料3%減”の同意書を社員全員に配布。皆から同意を得て、1人も解雇することなく乗り越えることができました」

――ブラックな側面が報じられていますが、ホワイトな部分は?
「完全に実力主義なところです。成績は社員ポイントで厳格に査定し、逆に上司を社員が査定する制度もあります。真面目に働いている社員にはやる気の出る労働環境だと思いますよ。配偶者の誕生日には3万円を贈りますし、結婚記念日には有給休暇。また、普段は複数人の社員同士の飲酒は禁止ですが、年に3回、成績優秀支店を表彰する時だけは許可しています。但し、ドライバー全員の車の鍵を預かり、家までの送迎付き。絶対に飲酒運転はさせません!」

――今回、“ブラック企業”と名指しされた率直な感想は?
「何より悔しいのは、ブラック企業と言われることで社員が誇りを持って働けなくなることですね。…もうこれ以上、社員の尊厳を傷付けないでほしいです」

               ◇

20160211 04
■新型ブラック企業でホワイト側に回る為の立ち回り方とは?
“新型ブラック企業”が従来のブラック企業の定義と異なる点は、ホワイトな部分があるということ。ならば、どんな企業でもホワイト側に回りさえすれば勝ち組になれるのか? 前出の城氏に聞くと、次のような回答が返ってきた。「実力があるならば、裁量権のある外資に転職したり、社内ベンチャーを立ち上げて自らホワイト部署を作る等、手はあります。ですが、それができる人は一握り。今後、頭打ちの内需産業を中心にブラック度が増すであろうゼブラ企業において、ホワイトな労働環境を確保することは至難の業です。そこで、1つの戦略として浮上するのが、出世欲を捨て、自ら窓際へ赴くという行為です。但し、リストラされてしまっては本末転倒なので、『如何に嫌われずに閑職に辿り着くか?』になります。そこで、最も効果的な戦術が、間の抜けた“ゆとりキャラ”の確立。『こいつはしょうがない』と周囲に半ば呆れられながらも納得させてしまうのです。今更キャラの路線を変更できない人は、家族の病気等といったそれらしい理由を作り、野心の無さをアピールすることが功を奏するかもしれません」。更に、こうして辿り着いた“ホワイトな窓際”を満喫するには「“複業”がお勧め」とは、キャリアコンサルタントの楠木新氏だ。「出世の見込みは無いのですから、会社に勤めながら、仕事の延長線上や趣味を生かしてもう1つのお仕事を目指せばいい。それが“複業”です。月に数千円でも稼げる、将来生業になり得るやりがいある複業があれば、『時間ができてラッキー』とポジティブに捉えられます。同時に、会社の仕事も調子が良くなる。上司からのプレッシャーが強くなれば、『頭張ります』と先ずファイティングポーズだけは取る。どの程度やり過こせばいいかは、もう1つ取り組むことがあれば自ずと見えてきます」。不景気の時代では、現実的な戦略は、これが精一杯。にも拘らず、収入も環境もホワイトでありたいなら「自分の相場を見つめ直すべき」と城氏は付け加える。「ありもしないホワイト企業やホワイト部署を想像し、比較するから、『自分はブラックだ』と感じてしまう。そうではなく、できるだけ自分を客観視し、労働市場における自分の相場を直視すれば、ブラックどころか相場以上にホワイトな職場だったりするものです。よく、ホワイトとして羨望されるバブル期にしても、仕事の絶対量は今より確実に多かった。ですが、自分の相場以上に稼げたからホワイトだと感じられた訳です。つまり、ブラックやホワイトという色分けは相対的なものでしかなく、自分に履かせていた下駄を脱ぐだけで、ブラックがグレーに、グレーがホワイトくらいには変わるものです」(城氏)。“幸せの白い鳥”を追い求めれば、永遠に闇の中を彷徨うだけだ。

20160211 05
■世界では稀有? 外国人が見た日本のブラックな労働環境
「何故、日本人は、これほど辛い職場で我慢して働き続けるのか?」。東京在住の中国人留学生の女性は、日本のブラック企業問題にそんな率直な感想を漏らす。中国のあるコンサルティング機関が行った2014年度の調査に依れば、大学新卒者の半年間の離職率は23%。中国では「転職してより良い待遇を求めるのは当たり前」(前出の留学生)の為、過労死してまで働く日本のホワイトカラーは理解できないという。ブラック企業は日本固有の問題なのか? そこで、各国のホワイトカラー労働者に聞いてみた。アメリカ出身の男性は、「日本のようなブラック企業があったら入ってみたいね。アメリカなら、裁判で懲罰的な額の損害賠償金を手に入れるチャンスだよ」と揶揄する。更に、フランスのメーカー勤務の男性は、「我が国でブラック企業とは、年間30日以上の有給休暇の無い企業のことだ」と“エスプリ”を利かせる。だが欧米社会では、安価な労働力である外国人労働者たちに条件の悪い仕事を押し付けているという指摘もあることも、また事実だ。一方、韓国の大手電機メーカーの社員は、「韓国に比べたら、未だ日本はマシ」と話す。韓国では、日本と同様の客種ハラスメントや長時間労働を強いるものに加え、社員の経済的負担も多いという。「仕事終わりに毎日、上司と食事しなければいけないことに耐えられず、今の会社に転職したんですが、買ったばかりのiPhone6Sを自社製品に買い替えるよう命令された。勿論、自前で社員割引も無い。また、国内出張は交通費も食事代も出ず、営業職の社員は出張貧乏に陥っていますね」。韓国は兎も角、母国よりも悲惨な日本の労働環境で働こうという外国人は少なそうだ。


キャプチャ  2015年12月8日号掲載
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テーマ : ブラック企業
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