「フィクサー、ヤクザ、興行…私が見た芸能界の闇」――タレント・なべおさみインタビュー

今や暴露話で持っているテレビだが、その昔、昭和の芸能界にはくっきりと“光と影”が存在したという。それは「“ハレ”と“ケ”という言葉で説明がつく」と話すのは、元祖マルチタレントのなべおさみ(76)だ。平成の今より遥かに闇が多かった昭和の芸能界。その裏では何が起きていたのか――。 (聞き手/フリーライター やまだおうむ)

20160214 01

よく、「芸能界には“闇”がある」というけど、「“闇”って何だろう?」って考えた時、「芸能界独特の掟のことじゃないか?」って思うんですね。それは、一般社会の掟よりもはっきりしています。勿論、全部不文律。業界内の悪口を言ったり、借りたカネを返さない奴は仕事を干される。絶対に上へは上がれない。別の話になるけど、昔、ある人から「東北地方の神社でアイドルがお祈りするシーンを撮りたいので、スムーズに撮影ができるようにお願いしてもらうことはできませんか?」と頼んできたことがあったんです。「何だよ、俺はヤクザの出先機関じゃないだろう」と(笑)。そう思いつつも、「(一帯を仕切るその筋の)プロダクションにお酒を2~3本届けさせて」とアドバイスしましたね。勿論、プロダクション側は「そんなのいいですよ」と言う。でも、それは言葉だけ。まあ、そんな世界なんですよ。嘗て昭和の時代、永田貞雄という興行師がいましてね。戦前の芸能界を牛耳っていたのは大手映画会社でしたが、大手が歯牙にもかけなかった浪曲師たちを次々と大スターに育て上げていった。戦後になってからは、山口組3代目の田岡一雄さんに興行の世界を教えたりもした。そして、“出城”として『日新プロ』というプロダクションを作り、『日本プロレス興行』も設立して、興行界を席巻していった。軍司貞則さんの『ナベプロ帝国の興亡』(文春文庫)にも書いてあるけど、1960年代に芸能界で一大帝国を築いた『渡辺プロダクション』では、この日新プロにヤクザと興行界の間に立つ役割を任せていたんです。ヤクザを判っていなければ地方興行は打てませんから、社長の渡辺晋さんは永田さんの力を借りた。永田さんは普さんを、「興行ってのは99%ヤッちゃんだろ? 巧くやるには、向こうも儲けさせてやんなきゃおかしいだろ?」と教育してくれたんです。いい加減な興行に対して真っ先に怒るのはヤッちゃんです。だって、女房を観に行かせて「パパ、あれ何? 客を馬鹿にするのもいい加減にしてよ」って言われたら、「そんなに酷ぇのか? それじゃ観てみるか」となるし、実際に酷けりゃ「ゴルアァッ!」ってなるでしょ? だから、現場もシビアだった。日新プロの社員は、小道具1つにも目を配っていました。水原弘のボーヤ(付き人)をやっていた頃、僕なんかも随分と怒られましたよ。




今は「芸能界はヤクザと付き合っちゃいけない」っていう風になっちゃったけど、興行打っているヤッちゃんは決して脅して券を売っている訳じゃない。「ねぇ、今度は誰を呼んでくれるの?」って地元の人たちから言われている訳。だから、昔は暮れになると地方のヤクザが浅草や銀座に一杯来ていましたよ。「一声掛けたら頼むよね」って芸能人のところに来た。持ちつ持たれつの関係です。そうした中で、「芸能人は矜持をきちっとしてなきゃいけないな」って俺は若い頃から思ってました。先ず、ヤクザからものを頼まれたら良し悪しを考えて行動すること。逆に、絶対にものは頼まないこと。以前、あるプロゴルファーが女のことでヤクザと揉めたことがあったんです。その時、彼はトップダウンで済まそうとして相手の親分筋に仲裁を頼んじゃった。そのヤクザから、「なべちゃん、俺は鉾を収めても下の奴らが何するか判らないよ」って言われましたよ。俺は彼に言って、直接謝らせました。非を認めて謝っている奴に対して、ヤクザは簡単には殴ったりカネを要求したりできません。ヤクザとして安目を売っちゃいますからね。ただ、みっちり説教はされます。随分と話が広がっちゃったけど、一言で言うと、俺たち芸能人って“ハレ(非日常)”の世界の住人なんです。でも、そんな芸能人にも“ケ(日常)”の時間はある訳です。今のお客さんって、そうした“ケ”の時間を見たがるように思う。例えば、身内が死んで泣いてるような姿をね。芸能人も、積極的にそれを見せようとする。ここが、昭和と平成の芸能人の違いです。女房の死すら笑い話にしてしまうのが昭和のエンターテイナーでした。俺が勝新太郎さんの部屋子をやっていた時、勝さんが詐欺に遭って家を取られちゃった。その後、あの人は終生マンション住まいだった。「博打も酒もやらなきゃ何軒でも家が買えた」って言っていたよ。でも、これっぽっちも愚痴は出なかった。それどころか、騙された話を面白可笑しく聞かせてくれた。勝さんにとっては、修羅場すらもハレの世界の一環なんです。結局、芸能界っていうのは闇があるからいい。虚々実々が混濁しちゃって、「何が本当なの?」って世界がエンターテインメントの真髄ですから。その意味である種、化け物屋敷に似ている。お化け屋敷を煌々と照らしたら面白くないでしょ? 闇があればあるほど芸能界も潤う訳です。


キャプチャ  2016年2月号掲載
昭和の怪物 裏も表も芸能界 [ なべおさみ ]

昭和の怪物 裏も表も芸能界 [ なべおさみ ]
価格:1,836円(税込、送料込)

やくざと芸能界 [ なべおさみ ]

やくざと芸能界 [ なべおさみ ]
価格:734円(税込、送料込)



スポンサーサイト

テーマ : 芸能界のニュース
ジャンル : アイドル・芸能

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR