【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(50) 日本人は知らない、暴走トランプ“マフィア式喧嘩術”の恐るべき秘密

今月1日のアイオワ州を皮切りに、11月のアメリカ大統領選挙に向けた民主・共和両党の候補者選びが始まりました。この初戦では惜敗したものの、昨年以来、誰よりも話題を集めてきたのが、共和党候補の“不動産王”ドナルド・トランプです。何故、あんな汚い暴言を吐きまくる老人が人気を維持できるのか。その理由について、日本でも“アメリカ通”とされる人々が様々な説明をしてきましたが、そのどれもが「芯を食っていない」ように感じます。それどころか、実はアメリカのメディアでさえもトランプの本当の強さを理解できていないようなんです。昨年6月の出馬表明以来、トランプは多くのメディア(特にリベラル系メディア)を挑発してきました。その罵詈雑言たるや、大阪市の橋下徹前市長の比ではない。その煽りに、超一流メディアの『ニューヨークタイムズ』や『ワシントンポスト』がまんまと乗ってしまったんです。彼らは只管トランプの失言を引用し、「馬鹿」と言わんばかりに真正面から扱き下ろすだけ。言葉狩りのような低レベルな批判に終始してしまいました。あれでは、トランプのお得意の「メディアは馬鹿で嘘ばかり」という陰謀論交じりの主張が更に支持されるだけです。それに、トランプの演説映像を見ると、実際には「そこまで酷くない」ことも多々あります。例えば、メキシコ移民を「レイプ犯だ」と決め付けたとされる暴言。発言の前後をチェックすると、そこまで断定的ではなく、ニュアンスとしては「ま、メキシコ移民の中にはレイプ犯もいるよな。なぁ?」という感じ。勿論、差別的な発言ではありますが、“レイシスト”と呼べるかどうかギリギリのラインで踏み止まっている――。少なくとも、彼の支持者にとっては“アリ”。ただ、好き勝手に暴言を吐いているのではなく、聴衆の本音を揺さぶる言葉を選んだ上での“煽り”なのです。そして、ここは日本の人が中々理解し辛いところですが、アメリカの庶民はスーパーリッチが大好きです。マフィア的なものへの憧れもある。ギャングスター系のラッパーが白いリムジンに女性を侍らせるようなミュージックビデオがよくありますが、あのイメージ。まさに、トランプは“ど真ん中”です。

実は、こうした彼のスタイルの“元ネタ”と言える人物がいます。名前はロイ・コーン。アメリカを反共産主義運動“マッカーシズム”が覆った1950年代に、苛烈な“赤狩り”の先頭に立った悪名高き辣腕検察官です。コーンは自身がユダヤ系でありながら、リベラルな志向を持つユダヤ人を徹底的に糾弾。また、多くの証人や被告人に対して「同性愛の秘密をソビエト連邦に握られてスパイになった」という嫌疑をかけ、公職から追放しました(後に、彼自身が同性愛者であったことが発覚したのですが)。頭が切れ、目的の為には手段を選ばず、敵対する相手を叩きのめすタイプです。その後は弁護士に転身し、ニクソン元大統領やレーガン元大統領の非公式顧問として暗躍したコーンが、トランプと深く関わるようになったのは1973年。アメリカ政府司法省が、黒人の入居を不当に拒否したトランプの不動産会社を告発した際、招聘された弁護士がコーンだったのです。この時、コーンは何と「嫌疑が不当だ」としてアメリカ政府を逆提訴し、1億ドルを要求。凄まじい“逆ギレ戦法”で示談に持ち込み、トランプ陣営は事実上、勝利しました。以来、この最凶コンビはマフィアが跋扈するニューヨークの不動産開発でも大いに活躍(コーンはマフィアファミリーの顧問弁護士でもありました)。その日々の中でトランプは、「叩かれたら10倍叩き返す」という“マフィア弁護士”コーンの喧嘩術を学んだのでしょう。また、コーンは極右団体『ジョン・バーチ協会』のメンバーでもありました。反共産主義・反公民権運動・反民主党の為ならどんな陰謀論も信じるような組織で、結成メンバーの1人に実業家のフレッド・コークがいます。“コーク”という名前でピンと来た人は、かなりイケてます。そう、近年勢いを増す右派運動『ティーパーティー』に資金を提供しているコーク兄弟の父親が、そのフレッド・コークなんです。つまり、ティーパーティーの源流はジョン・バーチ協会にあり、その一員だったマフィア弁護士がトランプの“師匠”だったということです。




もう1人、トランプ現象を語る上で重要な人物が、先月にトランプ支持を表明した元アラスカ州知事のサラ・ペイリンです。2008年の大統領選で共和党の副大統領候補だったことを覚えている方も多いでしょう。ペイリンは、“エバンジェリカル”と呼ばれるキリスト教右派から絶大な人気がある。潔癖・真面目を是とするキリスト教右派にとって、お下品なトランプは本来なら支持すべき人物ではないのですが、そのトランプにペイリンが“お墨付き”を与えたのは何故か。それは、トランプがマッカーシズムの時代から連綿と続く“白人右派”の本流だからでしょう。白人が汗を流して働いたカネが税金として吸い上げられ、怠け者の非白人にばら撒かれる。白人が長年築いてきた雇用が、アメリカの外に流れていく。このディストピア的な強迫観念は、トランプの演説に乗って白人有権者に広がっています。グローバリズムに依って白人たちの“特権”が次々と取り上げられていく恐怖・絶望・怒り…。トランプは、適度な陰謀論を塗してそれを刺激している訳です。深刻なのは、こうしたトレンドが今回の選挙で終わる訳ではないということ。グローバリズムが止まらない以上、中産階級以下の白人の没落も止まることはないからです。トランプの演説は同じことの繰り返しで、中身も無い――。それは事実ですが、そういう批判だけでは彼の“マジック”が多くの人の心を掴む理由は見えてこない。仮に、トランプが今回の大統領選で敗れても、2年後の中間選挙の頃には白人の不満は今より更に溜まっている筈。その時、どんな“爆発”が起きるのか…。トランプは、遂にアメリカの“パンドラの箱”を開けてしまったのかもしれません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2016年2月22日号掲載


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テーマ : 国際政治
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