【政治の現場・エネルギー戦略】(01) プルトニウム“2018年問題”

東日本大震災から間もなく5年を迎える。原発の活用は進まず、核燃料サイクルの中枢に位置付けられた高速増殖炉『もんじゅ』(福井県敦賀市)の存続も危ぶまれる。岐路に立つ日本のエネルギー戦略の行方を探る。

20160216 15
先月6日、東京都内のホテルの大宴会場は、原子力関連企業のトップら約900人で溢れ返った。『日本原子力産業協会』が主催する“原子力新年の集い”。挨拶に立った同協会の今井敬会長(『新日鉄住金』名誉会長)は、“2018年問題”に警鐘を鳴らした。「日本には48トンのプルトニウムがあり、世界から色々な目で見られている。2018年にアメリカとの原子力協定が30年ぶりに改定されるが、プルトニウム処理の辻褄が合わないと難しい問題になる」。日本の原子力開発はアメリカの許諾の下に始まった。非核保有国ながら、核兵器にも転用できるプルトニウムを抽出する再処理を例外的に認められているのは、1988年に発効した『日米原子力協定』があるからだ。その協定は、2018年7月に満期を迎える。改定しなければ自動延長されるが、6ヵ月前に通告すれば一方的に破棄することもできるようになる。日本政府には「日米関係を考えれば自動延長でも問題ない」(外務省幹部)との見方もあるが、甘い見通しかもしれない。昨年9月、アメリカの有力研究機関『カーネギー国際平和財団』のジェームズ・アクトン上級研究員は、発表した論文の中で「日本は余剰プルトニウムを持たない約束の履行を制度化すべきだ」と訴えた。協定改定に合わせ、プルトニウム削減の期限を明記したサイドレター(付属文書)を付けるよう提案したのだ。「私の主張は穏健だ。アメリカ議会には協定破棄を主張する強硬論もある」。アクトン氏は、周囲にこう語っている。

日本の原子力政策は、原発の使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを高速増殖炉で再利用する核燃料サイクルを中心に据えてきた。だが、もんじゅの度重なるトラブルでプルトニウムを消費できず、溜まり続けている。日本の保有量約47.8トンは、核兵器約6000発分に相当するという指摘もある。こうした現況に、中韓両国も反発を強めている。「日本が所有するプルトニウムは、大量の核兵器を作るのに十分な量だ。日本の中には核開発を主張する声もある」。昨年10月、国連総会で軍縮を扱う第1委員会で、中国の軍縮大使が日本批判を展開した。韓国は昨年6月、期限切れを迎えた『米韓原子力協定』を新たに締結した。使用済み核燃料を再処理する権利は認められなかったが、再処理の研究に関する規制は一部緩和された。「何故、日本だけが特別なのか?」という韓国側の主張にアメリカが譲歩した結果だった。20年間に亘って殆ど動かなかったもんじゅについて、『原子力規制委員会』は昨年11月、『日本原子力研究開発機構』に代わる運営組織を探すよう、文部科学省の馳浩大臣に異例の勧告を出した。新たな担い手を探すのは容易ではなく、“廃炉”の可能性も囁かれる。廃炉ならアメリカの視線が厳しさを増すのは必至で、安倍政権は危機感を強めている。「もんじゅは大丈夫か? 各省とも連携して、しっかり対応してほしい」。昨年12月14日、安倍首相は首相官邸で会合に参加していた馳大臣を呼び止め、こう念押しした。




■アメリカ、イギリス、ドイツは中止・延期
資源が乏しい日本が1950年代に打ち出したエネルギー政策の柱が“核燃料サイクル”だ。その中核を担う高速増殖炉は、消費した以上の核燃料を生み出せる為、“夢の原子炉”と言われてきた。もんじゅは実用化に向けた“原型炉”だが、トラブル続きで止まったままだ。政府は当面、プルトニウムを普通の原発で燃やす“プルサーマル”に頼らざるを得ない。現在、フランス・ロシア・中国・インドの4ヵ国が高速炉の研究開発を続けるが、アメリカ・イギリス・ドイツ等は中止・延期している。日本政府は2014年4月に閣議決定した『エネルギー基本計画』で、核燃料サイクルの推進を改めて掲げた。日本は“非核三原則”を掲げ、『核拡散防止条約(NPT)』に加盟している。ただ、「核兵器を作ることは無いが、高い技術力とプルトニウムを持つことで、いつでも作れると見せておくだけでも一定の抑止効果はある」(閣僚経験者)と、安全保障上の必要性を指摘する向きもある。


≡読売新聞 2016年2月2日付掲載≡




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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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