【政治の現場・エネルギー戦略】(02) 苦難の原発、輸出に活路

20160217 02
先月25日夕方。東京都千代田区一番町の駐日イギリス大使館に、日本の原子力関連メーカー約40社の関係者が顔を揃えた。ウェールズで4~6基の原発建設を計画する『日立製作所』が、部品生産等に携わる関連企業を集めた初めての説明会だった。「原発建設で重要なのはチームワークだ。皆さんと一緒にやっていきたい」。イギリス政府関係者の同席の下、日立系列の原子炉メーカー『日立GEニュークリアエナジー』の魚住弘人会長がこう宣言すると、約100人の出席者から拍手が起きた。イギリスは、北海油田の産出減等をきっかけに原発推進に舵を切ったが、外国企業の技術協力無しでは原発を建設できない事情がある。原発1基の建設費は約8000億円。世界市場で日本の受注が進めば、400余りの原発関連企業の商機は広がる。福島第1原発事故後、日本の原子力産業は苦難が続く。国内で新規の原発建設は見込めず、技術力の維持や若いエンジニアへのノウハウの伝承が難しい。メーカーは原発輸出を通じ、海外に活路を見い出している。インフラ(社会基盤)輸出を成長戦略の柱と位置付ける安倍政権も、日本企業に依る原発事業の海外展開を後押ししている。昨年12月、安倍首相はインドのモディ首相との間で『日印原子力協定』の原則合意に漕ぎ着けた。協定が締結されれば、深刻な電力不足を背景に原発増設を計画するインド市場への参入に道筋が付く。トルコ、ベトナム、カザフスタンでも建設を目指し、官民一体で原発輸出を進めている。

ライバルの動きも活発だ。「国産原子炉の輸出は最早、手の届かないものではなくなる」。昨年10月22日、中国政府系の英字新聞『チャイナデイリー』に誇らしげな言葉が躍った。前日に行われた習近平国家主席とイギリスのキャメロン首相との首脳会談で、イギリスの原発に中国製原子炉の導入が決まったことを報じた記事だった。先進国が中国の原発を採用するのは初めてで、日本政府は「中国はイギリスでの実績を足がかりに、アフリカや中東等で輸出攻勢を強めるだろう」(資源エネルギー庁幹部)と警戒する。中国政府が先月27日に発表した原発に関する初の白書には、“原発強国”の実現が明記された。世界60ヵ国に200基の原発を輸出する計画を持つとされる。日本国内には中国の技術力を疑問視する向きもあるが、豊富な資金力と外交力を武器とした受注戦略は脅威だ。インドネシアの高速鉄道の受注競争では、中国に敗れた。昨年11月中旬、中国の原発メーカー『国家電力投資集団』の幹部が突然、東京都内の日立製作所本社に挨拶に訪れた。ライバル社の電撃訪問に、現場では「何が狙いなのか?」と訝る声が上がった。日立関係者は、「原発の輸出経験が乏しい中国が、ノウハウを持つ日本企業に協力を求めてくる可能性もある」と見る。巧みに先進技術を取り込み、世界に攻勢をかける中国勢とのパワーゲームを制するのは、容易ではない。




■新興国で需要急拡大
アジア・中東・アフリカ等で原発の需要が高まっている。『国際原子力機関(IAEA)』は、世界で2030年までに原発の設備容量が最大約70%増えると予想する。年平均で16基ずつ新設される計算だ。原発輸出の際には、核兵器への転用を防ぐ為、原子力協定を結ぶことが国際ルールとなっている。日本は既に、アメリカ、イギリス、カナダ、ベトナム等13ヵ国や『ヨーロッパ原子力共同体』と締結している。2013年には安倍首相に依るトップセールスで、トルコの原発4基を『三菱重工業』等の企業連合が受注することで実質合意した。一方、国内では東日本大震災後、再稼働した原発は川内1・2号機(鹿児島県)と高浜3号機(福井県)の3基に留まっている。


≡読売新聞 2016年2月4日付掲載≡




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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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