【政治の現場・エネルギー戦略】(03) “石炭”依存、厳しい視線

20160218 01
パリから帰国したばかりの環境省・丸川珠代大臣は、昨年12月18日の衆議院環境委員会で危機感を露わにした。「石炭火力発電は多数の増設計画がある。このままいけば、国の(温室効果ガスの)削減目標の達成が危ぶまれるのではないか」。昨年12月、パリで開かれた『国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)』で、日本は温室効果ガスの排出量を「2030年度までに2013度比で26%削減する」ことを掲げた。ところが国内では、二酸化炭素(CO2)を大量に排出する石炭火力発電所の新増設ラッシュが続く。丸川氏は、石炭火力の利用に積極的な経済産業省を名指しし、「経産省はエネルギー効率という観点から見るが、環境省として言うべきことはしっかり言っていく」と異例の警告まで発した。先進国に排出削減を義務付けた京都議定書が2005年に発効し、石炭火力の新設は途絶えていた。事情が変わったのが、2011年3月の東日本大震災に伴う福島第1原発事故だ。原発の稼働が見通せなくなり、代替電源として石炭火力が再浮上した。2013年度の石炭火力が全電源に占める割合は30%と、震災前の2010年度より5ポイントも増えた。電力小売りの全面自由化を今年4月に控え、安く、安全で、安定的なエネルギー源としても重宝されている。その代償として、日本の温室効果ガス排出量は増え続けている。2013年度の排出量は14億800万トンと、1990年度を10.8%も上回った。京都議定書で約束した「1990年比6%減」(2012年度までの5年間)は、海外から排出枠を購入する帳尻合わせでクリアしたものの、石炭火力への過度な依存には世界から厳しい視線が注がれている。

イギリスは昨年11月、「2025年までに石炭火力を全廃する」と発表した。アメリカのオバマ大統領は、旧式の石炭火力の新設中止を打ち出した。フランスも老朽化施設の閉鎖を進める。昨年10月、COP21の準備会合に参加した国際NGO『E3G』は、先進7ヵ国(G7)の取り組みを比較した報告書で日本を“異端児”と評し、最下位にランク付けした。それでも、日本は「電力の安定供給や電気料金を抑えるべきだ」との考え方から、石炭火力の抑制には及び腰だ。寧ろ、最先端の石炭火力技術を海外に売り込んでいる。「石炭火力発電は地球温暖化の元凶のように言われるが、イノベーション(技術革新)で解決できる」。安倍首相は昨年5月、東京都内での会合で強調した。安価な石炭に頼らざるを得ない途上国に発電効率の高い日本の技術を導入すれば、世界の温暖化対策に貢献できるという訳だ。しかし、『三菱総合研究所』環境・エネルギー研究本部の山口建一郎主席研究員は、「最新式の石炭火力でも、CO2排出量は液化天然ガス(LNG)の粗倍。普及は両刃の剣だ」と指摘する。昨年のG7首脳宣言では、世界全体で「排出量を2050年までに2010年比で7割削減」との目標を掲げた。途上国支援で排出抑制に寄与しつつ、“脱石炭”とどう折り合いをつけていくか。世界の石炭包囲網が狭まる中で、日本は試練を迎えている。




■温室ガス削減、原発が鍵に
日本が掲げる2030年度の温室効果ガスの排出量削減目標は、電源構成の目標となる“エネルギーミックス”に基づく。石炭火力は全体の26%程度で、排出量は2.3億トンと想定する。2013年度実績(2.7億トン)から削減を進める計画だ。しかし、現在の石炭火力の新増設計画が全て実行された場合、環境省は「2.9億トンとなる」と試算する。昨年は、5件の建設計画を「帰認できない」とする環境大臣の意見書を経済産業大臣に提出した。目標実現の鍵を握るのが、CO2を排出しない原発だ。2013年度は1%に留まった。2030年度には20~22%の比率とし、約3割だった震災前に近付ける計画だが、それには着実な再稼働が欠かせない。


≡読売新聞 2016年2月6日付掲載≡


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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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