【政治の現場・エネルギー戦略】(04) 中東不安、ロシアに熱視線

20160219 05
先月3日、首相官邸に緊張が走った。サウジアラビアがイランとの国交断絶を発表したのだ。菅官房長官が5日の年頭記者会見で最初に言及したのも、この問題だった。「日本は、中東地域の安定を最も重視している。我が国の原油の多くがこの地域に依存しており、平和と安定を強く呼びかけたい」。原油の輸入全体の約8割を中東に頼っている日本にとって、両国の対立は他人事ではない。シェールガスオイルの増産で、中東産原油を必要としなくなったアメリカの関与が弱まったことも、中東の不安定化に拍車をかけている。イスラム過激派組織『ISIS』(別名:イスラム国)に依るテロも拡散し、中東情勢は予断を許さない。資源の調達先を多様化し、リスクの分散を進めることが“エネルギー安全保障”の鉄則だ。中東依存からの脱却に向けて司能性を秘めているのが、ロシアである。「日本には『まかぬ種は生えぬ』という諺がある。将来、大きな経済効果を得る為には、ロシアとの共同プロジェクトを今直ぐに始めな ければならない」。昨年11月6日、ロシアの石油最大手『ロスネフチ』のセチン社長が来日し、東京都内で開かれた日露のエネルギー協力に関する会議に出席した。プーチン大統領の最側近の1人であるセチン氏は、日本企業関係者に東シベリアの油田開発等への協力を呼びかけた。ロシアに眠るエネルギーは、日本にとって魅力的だ。不安定な中東情勢に左右されず、輸送日数が中東から10分の1程度の2~3日で済むというメリットもある。実際、日本が輸入するロシア産原油や天然ガスの割合は年々伸び、其々全体の9~10%程度を占めている。

ロシアも、日本の投資に期待している。主力の西シベリアの原油生産量が減退し、手つかずだった東シベリアの開発が急務となっている。だが、ロスネフチ等のロシア企業は、ウクライナ問題を受けた経済制裁で欧米市場での資金調達を封じられている。「ロシアは、日本のカネと技術を切望している」(日露関係筋)という訳だ。『石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)』の本村真澄主席研究員は、「日露はエネルギー分野で利害が一致している。ウィン・ウィン(共存共栄)の関係だ」と指摘する。だが、協力が順調に進んでいるとは言えない。要因の1つが原油安だ。供給過剰を背景に原油価格は下落が続いており、1年前の半値に近い1バレル=20~30ドル台で推移している。商社筋は、「これだけ安いと採算が取れない。損失を出してまで投資はできない」と打ち明ける。日本企業も参画し、ウラジオストクで進んでいた液化天然ガス(LNG)施設の建設構想も立ち往生したままだ。汚職の横行等、ロシアでのビジネスに付き纏う負のイメージも、企業に進出を躊躇わせている。安倍首相は第1次内閣時代を含め、プーチン大統領と12回の首脳会議を重ね、蜜月関係を築いてきた。「日露の協力を前に進める絶好のタイミング」との声は少なくない。




■震災後、海外依存更に拡大
原子力を含む日本のエネルギー自給率は、2014年(速報値)は6%に過ぎない。東日本大震災前の2010年は19.9%だったが、その水準には戻っておらず、資源の殆どを海外に頼る状況が続く。1970年代の石油ショックの教訓を踏まえ、日本は中国やインドネシアからの原油輸入を増やし、一時は中東依存度が7割以下になった。しかし、中国等が経済成長に伴って国内消費に回す量を増やしたことから、1990年以降、中東依存度が再び高まった。震災後は、液化天然ガスの需要が高まっている。輸入先は東南アジア・中東・アフリカ等、比較的分散化が実現している。アメリカ・カナダ・メキシコからのシェールガスの輸入も見込まれている。


≡読売新聞 2016年2月7日付掲載≡


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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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