【経済の現場2016・マネー迷走】(02) 産油国、資金引き揚げ…投機ファンドが翻弄

20160219 06
年明け以降の市場の動乱が日本を揺さぶっている。株価の急落が投資家の不安心理を増幅する。日経平均株価(225種)の今年の下げ幅は3000円を超えた。東京市場と言いながら、売買の約7割は海外投資家が占め、国際情勢に翻弄される。下げ相場に意外な“主役”がいた。オイルマネーである。今週、東京株は落ち着きを取り戻したかに見えた。しかし、日経平均は17日も一時、400円以上下落し、神経質な展開が続いた。証券会社のコールセンターには、個人投資家からの問い合わせが相次ぎ、オペレーターが対応に追われた。何が起きているのか? 海外の年金基金等を顧客に持つ外資系資産運用会社の幹部が言う。「中長期で保有する我々の顧客は殆ど動いていない。売っているのは、サウジアラビアやクウェート等の政府系ファンドだ」。『アブダビ投資庁』(アラブ首長国連邦)・『サウジアラビア通貨庁』・『クウェート投資庁』…。潤沢な国の石油収入を元手に、世界の市場を潤してきた。しかし、止まらぬ原油安で転機を迎えた。オイルマネーが逆流し始めている。 2008年に1バレル=150ドル近くまで達した原油価格は、今や約5分の1の水準。中東産油国の財政が悪化し、それを穴埋めする為に株式を手放している。世界の金融市場に流れ込むオイルマネーは4兆ドル(約450兆円)以上とされ、日本の国内総生産(GDP)に近い。それが、昨年3月から12月までに1000億ドル(約11兆円)も目減りしたとされる。オイルマネーの存在は意識されても、その実態ははっきりしない。それが不安を高めている。「サウジアラビア系の会社が資金を引き揚げると聞いた。うちもリスクを取りたくない」。日本の証券会社に、こんな相談を持ちかける取引先が増えた。株安の連鎖に歯止めがかからない。16日には、サウジアラビア、ロシア、ベネズエラ、カタールの石油大臣が緊急会合を開き、高水準にある原油の増産凍結に合意した。これでは、原油の供給過剰は変わらない。市場は失望売りに走り、原油価格は直後に30ドルを割り込んだ。先月下旬、スイスで開かれた『世界経済フォーラム』の年次総会(ダボス会議)には、世界の企業経営者や投資家らが集まった。出席者の1人は、海外企業トップの言葉が耳から離れない。「市場は崩壊している」。

年明け以降の株式市場は振れ幅が大きく、“ジェットコースター相場”の様相を呈している。日経平均が500円超下落したのは、今月だけで3日もある。オイルマネーの逆流だけでは説明がつかない。プロが注目するのが、先物取引を中心に短期間で売買を繰り返す『商品投資顧問(CTA)』と呼ばれる海外へッジファンドの存在だ。先物取引は、決められた日に、特定の商品を事前に決めた価格で売買することを約束する。対象は株式・通貨・貴金属・原油等、様々だ。現物の取引とは異なり、一定の証拠金さえ用意すれば先物では“売り”から始めることができる。例えば、ある商品を将来、3000円で売る約束をする。その後、相場が下落して2500円になった時点で買い戻すと、差額の500円が利益になる。下落が予想される局面で先物の“売り”を出せば、下落幅が大きいほど儲けが大きくなる。仕組みを熱知するへッジファンドが大量の売りを仕掛ける。それが相場を揺るがす。『みずほ証券』の三浦豊氏は、「変動が激しい日本の市場環境は、CTAにとって、利益を得る絶好の機会になっている」と話す。実際、値動きが大きいほど先物取引は増える傾向にある。日経平均を対象にした先物商品『日経225先物』の1日平均の売買金額は、昨年10月の約1.6兆円から、先月には約2.7兆円に膨らんだ。




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バブル崩壊後の1990年代以降、日本の株式相場は低迷が続いた。市場としての魅力が薄れ、海外で日本株を専門とするアナリストが減った。それも、株価の荒っぽい値動きを助長している。2012年の第2次安倍政権の誕生後、海外勢が日本市場への投資を増やし、“アベノミクス相場”は株高に沸いた。ところが、海外勢の多くは日本の個別企業の状況には詳しくない。そこで、コンピューターを駆使して、日経平均や東証株価指數(TOPIX)の値動きに連動するように株を売買する動きが強まった。加えて、個人投資家にも同じような流れが広がる。その象徴が、『上場投資信託(ETF)』の人気ぶりだ。投資家から集めたお金を、日経平均に連動するように様々な株に投資して、利益を配分する。個別の株をバラバラに買うより手軽な点が受けている。『野村アセットマネジメント』が扱う商品の売買金額を見ると、昨年には41兆円を超え、2年で5倍以上に急増した。売買代金は、東証に上場する全銘柄の中で連日トップ。『トヨタ自動車』等の主力株を大きく上回る。大手証券の関係者は言う。「個別企業の業績より、為替や原油価格といった外部要因に左右され、日経平均が一方向に進み易くなっている」。今月14日に東京の両国国技館で開かれた個人投資家向けイベント。不安を抱く3000人以上が集まった。「これまでは国内要因で動くことが多かったが、今は世界のどこかで出た悪いニュースが地球を駆け巡る。情報収集が追いつかない。心理的に疲れる」。参加した兵庫県明石市の井上健司さん(46)は、そう漏らした。オイルマネーやへッジファンドの投機的な目が“TOKYO”に向かっている。世界は落ち着きを取り戻すのか。未だ見通せない。


≡読売新聞 2016年2月18日付掲載≡
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