【政治の現場・エネルギー戦略】(05) “核のゴミ”、漂流続く

20160220 08
本州の最北端、青森県の下北半島。真っ白な雪が一面を覆う太平洋沿いの高台に、巨大な鉄筋コンクリートの建物群が目を引く。六ヶ所村の核燃料サイクル施設内にある再処理工場である。「再び竣工を延期せざるを得ないのは非常に心苦しく、申し訳なく思っている」。運営する『日本原燃』の工藤健二社長は昨年11月、工場の完成を今年3月から2018年に延期すると発表した。23回目の延期。工藤氏は「やるべき改造工事の種類や量が見えてきた。これまで(の延期)とは状況が違う」と強調するが、当初の完成予定だった1997年から既に20年近くが過ぎている。全国の原発から出る使用済み核燃料をこの工場に運び込み、プルトニウムとウランを取り出し、燃料として再利用する――。政府が描く“核燃料サイクル”だ。再処理の過程で出る高レベルの放射性を帯びた廃液が、所謂“核のゴミ”になる。再処理工場の完成が遅れ、日本国内には計約1万7000トンの使用済み核燃料が溜まっている。現在は再処理に向けた“資源”として保管しているが、工場が稼働すれば「愈々、ゴミ問題から目を逸らすことができなくなる」(政府関係者)。“核のゴミ”は極めて強い放射線を出す為、政府は、ガラスと混ぜてステンレスの容器に入れ、地下300mより深い地中に埋める方針だ。だが、地震や火山が多い日本で安定的な処分ができるのか、国民の不安も根強く、未だに最終処分場の建設場所すら決まっていない。

六ヶ所村は、最終処分場が選定されるまでの一時貯蔵を担っている。「国が前面に立って立地を急いでほしい。『期限を延ばしてくれ』なんてことはあってはならない」。処分地選びが一向に前に進まないことに、戸田衛村長は不安げに語った。原燃は、県や村と保管期間 を“30~50年”とする協定を結んでいる。再処理を委託したフランスから高レベル放射性廃棄物が村に搬入された1995年が起点で、残り30年を切っている。一方で、政府が示している最終処分場の建設計画では、候補地の選定後、調査に20年、建設に更に10年かかるとしている。ここへ来て、国も漸く重い腰を上げた。政府は昨年5月、処分場について自治体の応募を待つ“手挙げ方式”から、国主導で処分地を探す方向への転換を決めた。昨年12月に開いた最終処分場の関係閣僚会議では、処分に適した“科学的有望地”を今年中に提示することも確認した。席上、菅官房長官は力を込めた。「最終処分場が必要であることからは逃げることができない。問題を先送りせず、一歩ずつ進めていかなければならない」。最終処分場の立地問題は、核燃料サイクルの大きなアキレス腱となっている。国はそれを知りながら先送りを繰り返し、「トイレなきマンション」(小泉元首相)等と原子力政策全体への不信を招いた。エネルギー戦略の岐路にある今、政治の責任が問われている。




■最終処分場、世界で課題に
“核のゴミ”の処分に頭を悩ませるのは日本だけではない。イギリスでは、立地に関心を示していた自治体が2013年に撤退した。アメリカでも候補地が挙がっていたが、地元の反対を重視して2009年、オバマ政権が凍結を決めた。最も先進的なのはフィンランドだ。昨年11月、最終処分場の建設を世界で初めて許可した。使用済み核燃料の再処理は行わず、南西部・オルキルオトの地下400~450mに埋める。スウェーデンも立地の選定を終え、安全審査が続けられている。日本は、民間の『原子力発電環境整備機構(NUMO)』が2002年から公募を始め、2007年に高知県東洋町が一旦名乗りを上げたが、住民の反対運動で応募を取り下げた。 =おわり

               ◇

寺口亮一・酒井圭吾・田島大志・福田麻衣が担当しました。


≡読売新聞 2016年2月9日付掲載≡


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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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