【ソニー・熱狂なき復活】(01) 時価総額・利益で業界トップ…半導体・ゲーム・金融で荒稼ぎ

20160221 08
同じ会社・同じ経営陣で、こうも変わるものなのか。業績不振に苦しんでいた『ソニー』が躍進している。昨年4~9月期の当期純利益は1159億円と、上期としては5年ぶりの黒字化を達成。大手電機メーカー6社の中でもトップに立った。通期の当期純利益は1400億円を計画しており、前期の1259億円の赤字から大幅に改善する見込みだ。「電機業界の負け組」「ソニーはもう終わった会社」――。約1年前、平井一夫社長ら経営陣は厳しい批判に晒されていた。成長の柱に据えていたスマートフォンが売れず、2014年9月に携帯電話事業で1800億円もの減損を発表。併せて、昨年3月期の当期純損益の見通しを下方修正し、1958年の上場以来初めて無配に転落した。リーマンショック以降の2009年3月期から、9年間で累計約1兆円の赤字を積み上げたことになる。そんなどん底から、ソニーは突如として這い上がってきた。今のソニーの実像は、セグメント別の利益で見るとはっきり浮かび上がる(左図)。今期、利益を最も稼ぐのは『ソニー生命保険』を中心とした金融だ(営業利益1750億円)。デバイス(同1210億円)・ゲーム(同800億円)がそれに続く。中でも、デバイスとゲームは成長著しい。『Apple』『サムスン電子』『華為技術』…。世界の名だたるスマホメーカーが挙って採用するソニーのデバイスがある。『CMOSイメージセンサー』だ。“電子の目”とも言われ、スマホのカメラ部分に欠かせない。ソニーは、高感度化・低ノイズ化・小型化等の技術の高さでライバルに先行する。2014年の世界シェアは5割弱。AppleのiPhone等、高価格帯のスマホ向けに限れば6~7割に達すると見られ、ソニーの製品では近年稀に見る圧倒的な優位を築いている。ゲームを牽引するのは『プレイステーション4(PS4)』だ。発売から2年で、全世界での累計実売台数が3000万台を突破した。PS史上最速のペースで売れており、『Microsoft』や『任天堂』のライバル機を凌駕する。ソニーの“逆襲”を早くから予測していたのが株式市場だ。ターニングポイントとなったのは、前述した携帯事業の巨額減損及び無配転落だ。普通に考えれば、無配転落は株主の期待を裏切る行為に他ならない。ところが、投資家はソニーを見捨てるどころか、寧ろ買いに走ったのである。その理由について、『バークレイズ証券』アナリストの伊藤和典氏は、「携帯事業の減損で、収益改善が必要なところには一通り手が付いた。翌期(今年3月期)に利益が出るのは皆がわかっていた」と説明する。株価は爆騰。2兆円台だった時価総額は、一気に5兆円近くまで膨らんだ。リーマンショック後に逸早く業績を立て直した“優等生”である『パナソニック』や『日立製作所』を上回る。株高の余勢を駆って、昨年6月には公募増資と転換社債で最大4400億円の資金調達を発表した。資金は、CMOSイメージセンサーへの投資に振り向けている。

今の利益が、所謂“真水”である点も見逃せない。平井社長就任初年の2013年3月期。ソニーは前期の営業赤字672億円から一転、営業利益2301億円を稼ぎ出した。が、その実態は資産売却に依る収益の押し上げだった。ソニーはアメリカの会計基準を採用しており、日本の会計基準では特別利益として認識されるような一時的な資産売却益も、本業の利益を示す営業利益の中に含める。この期は、出資先で医療情報提供を行う『エムスリー』株の一部譲渡に伴い、売却益と再評価益で1222億円を計上した。ニューヨークにあるアメリカ本社ビルやオフィスビル『ソニーシティ大崎』等の売却等も進め、利益を捻り出したのである。こうした弾が尽きた翌2014年3月期の営業利益は264億円と大幅に減少、再び1283億円という巨額の最終赤字に陥った。それから先は只管リストラ だ。『VAIO』ブランドで一世を風靡したパソコン事業は、2014年に投資ファンドへ売却。10期連続で赤字が続いていたテレビ事業は分社化に踏み切った。採算管理を徹底し、前期に黒字化。スマホも収益悪化を受けて、戦線を縮小した。本社や販社の費用削減等も断行し、前期末の連結従業員数は13.1万人と、直近のピークである2008年3月末から3割近く減少した。こうした施策に依って、AV機器の赤字は前期で止血した。携帯事業の赤字も大幅に縮小している。つまり、今期は実力に依って果たす通期最終黒字なのである。普通の会社なら、話はここで終わる。ところが、ソニーの場合はそうならない。本当に難しい舵取りを迫られるのは、寧ろこれからだ。「確かに、利益は回復していますね…」。複数のOBにソニーの現状についてどう思うかぶっけてみると、皆一様に複雑な表情を浮かべる。何故か。答えは、「利益は出ていても革新的な商品が無い」から。もっと言えば、「製品のラインナップを見ても、消費者に『欲しい』と思わせる製品が無い」(OBの1人)のだ。全盛期のソニーには、『ウォークマン』『ハンディカム』『トリニトロンのカラーテレビ』といった時代を彩る製品があった。しかし、「プレイステーション以来、そういったものは出てきていない」(同)。デバイスやゲーム以外のエレクトロニクス(エレキ)製品を取り巻く状況は非常に厳しい。テレビを始めとして、嘗ての看板商品は軒並み販売台数を減らしている(下段右図)。市場が拡大しているスマホも、Appleやサムスン等に全く太刀打ちできていない。




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「我々はマスマーケットでのシェアや規模は追求せず、差別化した製品を生み出していくと選択した」。1月初旬に開かれた毎年恒例のアメリカの家電見本市『CES』。報道関係者向け説明会の壇上に立った平井社長は、こう語気を強めた。今期からスタートした3年間の中期経営方針で平井社長が“成長牽引領域”と位置付けたのは、デバイス・ゲーム&ネットワークサービス・映画・音楽の4つだ。エレキの中核製品は1つも入っていない。成熟した製品であるデジタルカメラやオーディオ等は、大規模な投資を行わず着実な利益向上を目指す“安定収益領域”に割り当てた。スマホやテレビは“事業変動コントロール領域”として投資を減らし、リスク低減と収益性を最優先する。エレキの不振に苦しむソニーにとっては合理的な判断だが、裏を返せば「エレキに見切りを付けた」という見方もできる。実際、ソニー社内で稼げる製品の“選別”は既に始まっている。事業の分社化だ。携帯とゲームは元々別会社だったが、2014年にテレビ、昨年にはビデオとオーディオが切り出された。今年4月には、稼ぎ頭のCMOSも分離する。その狙いは、“結果責任・説明責任の明確化”“持続的な利益創出を念頭に置いた経営”“意思決定の迅速化と事業競争力の強化”の3つだというのが平井社長の言い分だ。要は、責任を明確化して採算管理を徹底するということ。ここで成果を出せない事業は、VAIOのように切り離される可能性がある。ある株式市場関係者は、「平井社長が掲げた4領域で成長を目指す方針は、投資家も支持している」としながら、こうも分析する。「平井社長はエレキにも力を入れているように振る舞っているが、所詮、口煩いOB対策でしょ。『(成熟した分野に)積極的に投資して成長しろ』と言うほうがどうかしている。社長は、口が裂けてもそんなことは言わないだろうが」

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ソニーは、中期経営方針で「2018年3月期に自己資本利益率(ROE)を10%にする」と掲げた。株主の立場から考えると、「テレビ等の儲からないエレキは売却して、ゲームや半導体等といった収益性の高い事業に資金を振り向けるほうが合理的で、企業価値が高まる」(株式市場関係者)ということになる。最も考えられるのが、上場している金融子会社『ソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)』の完全子会社化だ。その場合、ソニーはエンターテインメントと金融に軸足を置いた企業となる。SFHの完全子会社化問題は、以前から囁かれている。ソニーは現在、SFH株を約6割保有し、連結決算では少数株主持ち分利益が純利益から差し引かれる。仮に完全子会社化すれば、利益の流出を防ぐことができるという訳だ。SFHの時価総額は約8000億円(1月21日時点)なので、株式の4割を取得する為に3割のプレミアムを付けたとして、買収額は約4200億円に上る。昨年6月にソニーが4400億円の資金調達を行った際にも、「完全子会社化に動くのではないか」という憶測が流れた。ただ、エレキは祖業。売却を頭で想定できても、実行に移すのは簡単ではない。それだけの度胸と将来の見通しが必要だ。今の経営陣は、もう1つの選択肢であるエレキの収益性改善を掲げている。成熟市場で生き抜くつもりなら、再成長に向けたイノベーションへの本気の取り組みが欠かせない。新規事業創出等といった種を蒔くだけでなく、目利きも重要になる。また、中期経営方針で成長領域に掲げたPS4や映画も決して安泰ではない。業績復活に一応の目途を付けた格好の平井社長は、この春にも退任すると噂される。だが、復活を確かなものにするには、今のソニーには5~10年後に何で稼ぐ企業になるのかというビジョン、そしてそうなる為のロードマップが決定的に欠けている。


キャプチャ  2016年1月30日号掲載


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