【丸分かり・激震中国】(01) 失速する経済に資源暴落…世界に広がる負の連鎖

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“中国ショック”が世界のマネーを揺るがし、負の連鎖を巻き起こしている。中国の代表的な株価指数である上海総合指数は1月21日、中国ショックと呼ばれた昨年8月の安値2927ポイントを下回り、2880ポイントと2014年12月以来、1年ぶりの安値を付けた(図1)。釣られるように、日本やアメリカの株価も急落。同日の日経平均株価の終値は1万6017円となり、日銀が追加緩和をした2014年10月以来、約1年3ヵ月ぶりの安値になった。ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均の終値も、1月5日に約4ヵ月半ぶりに1万6000ドルを割り込んだ後も下げが止まらず、20日には1万5767ドルに落ち込んだ。外国為替市場でも、リスク回避の為の円買いが進み、20日に約1年ぶりとなる1ドル=115円台に上昇。世界経済危機の様相を示している。金融市場の動揺は、中国の景気悪化・原油暴落・アメリカ利上げの3つが共鳴し合うように引き起こしている。原油暴落は、中国の需要の減少の影響も大きい。つまり、中国が危機の震源地と言える。この事態に、株式等といったリスクの高い資産から投資資金を引き揚げ、安全な資産に逃避させる“リスクオフ”が起きている。『武者リサーチ』の武者陵司代表は、「中国から1兆ドル(約117兆円)の資金流出が起きており、手を打たなければ中国発の世界経済危機が起きる」と警鐘を鳴らす。

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中国の国内総生産(GDP)は、10年前に世界の約5%だったのが、現在は約15%に拡大。輸出と輸入を合わせた貿易総額は、2013年にアメリカを抜いて世界一になった。ところが、昨年の中国の貿易総額は前年比8%減の3兆9586億ドル(約463兆円)。特に、輸入は14%も減った。こうした“巨象”中国の失速が、世界に大きな打撃を与えている。原油・鉄・非鉄等の価格は暴落。イギリス・オランダの石油大手『ロイヤル・ダッチ・シェル』は1万人の一時帰休(レイオフ)を計画し、アメリカの鉄鋼大手『USスチール』の株価は、2008年の高値196ドルから、昨年1月15日に6ドル台へ下落した。「破綻してもおかしくない」(株式アナリスト)と囁かれる。鉄鋼大手『アルセロール・ミタル』や、鉄鉱石の生産量が世界1位のブラジルの『ヴァーレ』等も株価が大幅に下がった。『JFEスチール』の柿木厚司社長は、「中国の鉄鋼の過剰生産は当分、解消されないだろう。日本の鉄鋼メーカーは10年近くかかった」と話す。鉱山・建設機械・海運等の業界も打撃を受けている。『東京商工リサーチ』に依ると、昨年の中国関連の倒産は76件(負債総額は2346億円)で、2014年の1.6倍(同11.5倍)に上った。最大の倒産は、負債総額1196億円を抱えた『第一中央汽船』。鉄鉱石や石炭を運ぶ船の需要減少と、海運市況の悪化が響いた。中国商務省が1月20日に発表した昨年の日本の中国向け投資は、前年より25.2%も減少し、32億1000万ドル(約3800億円)となった。ピークだった2012年の半分以下だ。中国に進出した日本企業からは、現地の工場を閉鎖したり、減産する等といった生産体制を見直す動きが出ている。『パナソニック』は昨年1月、1987年に開始した中国でのテレビ生産から撤退。同年8月には、パソコンやスマートフォン向けのリチウムイオン電池工場を閉鎖した。また、『ダイキン工業』は現地企業に委託していたエアコン65万台のうち15万台を国内生産に切り替えた。最近は上海等で出店しているある大手百貨店が、昨秋以降の売上高の大幅減を受け、中国から撤退するとの見方も浮上している。




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中国経済の実態は、どれくらい悪いのだろうか。中国国家統計局が1月19日に発表した昨年のGDPは、物価変動の影響を除いた実質で前年比6.9%増になった。これは天安門事件の翌年、1990年以来となる低さだ(図2)。経済成長が一段と鈍化した要因の1つは、投資の落ち込みだ。とりわけ、不動産投資の落ち込みは激しい。昨年の不動産開発投資の伸びは僅か1.0%で、2014年の10分の1だ。加えて、主要産業の過剰生産と地方政府の債務拡大が、景気に重く伸し掛かる。中国政府はリーマンショック後、4兆元(約72兆円)もの景気対策を実施。中国内の乱開発や企業の過剰な設備拡張を招いた。インフラや不動産開発の為に資金を借り入れた地方政府は現在、積み上がった債務に喘ぐ。鉄道貨物の輸送量は、前年同月比でマイナスが続く(図6)。昨年12月には、国有企業傘下の造船会社『舟山五洲船舶修造』が破綻。国有企業としては10年ぶりの倒産で、最早、国有と雖も安心できない。『国際通貨基金(IMF)』は1月19日、「今年の中国の成長率が6.3%に縮小する」との予想を発表した。過剰生産を解消する構造改革が進めば、2020年には6%台半ばに持ち直すが、改革しなければ2020年には5%台前半に失速するという。『UBS証券』の予測に依ると、今年の中国の実質GDP成長率が、標準シナリオの6.2%ではなく、最悪シナリオの4.0%の場合、アメリカの成長率は2.3%増、ユーロ圏は1.0%増と伸び悩み、日本は1.3%減とマイナス成長に沈む。今、金融市場が最も注目しているのは人民元の動向だ。人民元は事実上、ドルに連動している為、アメリカの量的緩和終了や利上げ観測に依るドル高に伴って実体経済に比べて割高となり、中国ショックに依る切り下げがあった昨夏までの3年間で、実質実効レートが約3割上昇した(図3)。人民元高に依り輸出が低迷した上に、中国政府が目指す投資主導型から消費主導型経済への移行も上手く進んでいない。追い詰められた中国政府は昨年8月に続き、同年11月から今年1月にかけて、人民元の対ドル基準値を徐々に切り下げた。11月2日の1ドル=6.3154元から1月21日の6.5585元まで、約4%下がった。ところが、小幅の切り下げを繰り返したことが裏目に出た。「今後も人民元安が進むのではないか」との市場の不安を招き、元をドル等の外貨に替える動きが広がり、海外への資金流出が加速した。中国政府にとって、本来は人民元高の方が望ましい。人民元高で輸入が増えれば、国内消費も活性化する為だ。一方で、輸出を刺激するには人民元安に誘導する必要がある。通貨政策は、このジレンマを抱えている。

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急激な人民元安を避ける為、中国政府はドル売り・人民元買いの介入を続けており、外貨準備は大きく減少。昨年12月末の外貨準備高は3兆3303億ドル(約390兆円)で、前月末比で1079億ドル(約12兆7000億円)も減少した(図7)。それでも、人民元は昨夏に比べて7%程度しか下がっておらず、依然として実質実効レートは高い状態。『BNPパリバ証券』チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、「上昇した3割分が下がるまで市場は十分と判断せず、資金流出が続く可能性がある」と見る。若し、人民元が3割下がったらどうなるか。多くの新興国通貨も下がり、相対的に先進国の通貨が高くなる。中でも、円買いが進む可能性が高い。“円・ドル”=“元・ドル”ד円・元”で計算する『SMBC日興証券』チーフエコノミストの牧野潤一氏は、「円に対する人民元の下落率も3割と仮定すると、1ドル=107円になる」と見る。河野氏は、“100円前後”の水準まで進む可能性も指摘する。人民元の大幅切り下げに依り、何が起きるのか。先ず、ドル建て債務を抱える企業の負担が増し、デフォルト(債務不履行)を起こす企業が増えることが予想される。龍谷大学の竹中正治教授は、「国際決済銀行(BIS)のデータとIMFの推計に基づくと、中国の民間非金融部門の外貨建て債務は1兆~2兆ドル(約117兆~234兆円)台に上る」と指摘する。日本への影響も大きい。円に対して人民元安となる為、中国人の日本への“爆買い”は減少するだろう。中国に進出している日本企業は大幅な減益に見舞われ、アベノミクスに依る円安・株高の効果は失われかねない。2017年4月に延期されている10%への消費増税も「再び先送りが必至」(『三菱UFJモルガンスタンレー証券』投資情報部の藤戸則弘部長)。今年9月には『主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議』の中国・杭州での開催が予定されており、3月の『全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)』後には何らかの景気対策を打ち出す可能性がある。昨年12月の『中央経済工作会議』では「積極的な財政政策を更に強める」との方針を打ち出し、金融緩和を続ける姿勢も示唆している。ただ、リーマンショック後に行われた4兆元もの大規模景気対策が、過剰設備や地方政府の債務問題等、現在も引き摺る影響を引き起こした苦い経験がある為、「大規模な財政政策は打ち出し難い」との見方もある。中国の構造改革は待ったなしの状況だ。今回の世界同時株安が負のスパイラルを世界中に広げ、更なる金融危機を招く恐れもある。震源地となった中国に課せられた責任は重い。 (本誌 中川美帆・本誌 松本惇)


キャプチャ  2016年2月2日号掲載


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テーマ : 中国経済
ジャンル : 政治・経済

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