【儲かる農業】(01) 独占インタビュー! 小泉進次郎が挑む“農政改革”3つの公約

農業を“儲かる産業”へ変える――。将来の首相候補との呼び声が高い小泉進次郎議員(自民党農林部会長)が立ち上がった。これまで、政府・与党が幾度となくトライしながらも農林族らの抵抗で頓挫してきた“農政改革”に、本気で挑もうとしている。その小泉氏が、大手メディアとしては初めて本誌の単独インタビューに応じた。取材は昨年末と今年1月末の2回。肉声で語られる“小泉流農政改革”の全貌とは何か。3つの公約と共に明らかにする。

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①先ずは政治からチェンジ…補助金漬け農政とは決別する
――昨秋、政府・与党の農政を取り纏める自民党農林部会長に就任しました。農政にどんな課題を感じ、何から着手しているのですか?
「僕が先ず言っておきたいのは、『農業ほど伸びしろのある産業はない』ということ。既に高付加価値化が進む製造業においては、数%生産性を上げるだけでも苦労する。でも、農業では当たり前のことができていないから、やればどんどん生産性が上がる筈。農業の成長産業化――儲かる農業への転換は必ずできます。但し、その為には発想の転換が必要。旧来型の“アグリカルチャー(農業)”と“アグリビジネス(農業生産のみならず、周辺の流通・消費等を含めた農業関連産業)”が互いに相乗効果を発揮できる環境がいるのです。今まではアグリカルチャーがとても強く、おまけ程度にアグリビジネスがあるという状態だった。そして、アグリカルチャーに属する人たちは、『アグリビジネスが文化を破壊する敵だ』と思っている。民間資本が農業分野へ参入することを警戒するのも、同様のアレルギーがあるからです。でも、僕の発想はそうじゃない。歌舞伎を見てほしい。伝統芸能の世界では(人気漫画の)“ONE PIECE”を題材にした歌舞伎公演を行って、新たなファンを開拓している。ビジネスとして成功させることで、真に残すべきカルチャーを守ろうとしています。農業も同じ。カルチャーとビジネスは敵・味方ではない。両方が共存できる新しい農業を確立したい」

――政府・自民党・農業団体が農家に補助金をばら撒き、日本の農業の競争力を低下させてきた事実は否めません。政治から率先して改革するつもりはあるのですか?
「勿論、政治から変えるのです。経済誌のインタビューなので敢えて触れますが、残念ながら“護送船団方式”というものが農業の世界にもある。それを変えなければならない。農業が抱える構造問題を生産者に押し付けることがあってはならない。政治も行政も農業団体も、そして産業界も、脆弱な農業を作ってきた責任があるのです。今秋までに纏める“骨太方針”では、生産者の自助努力では解決できないことに政治が乗り出す覚悟を示します」

――『環太平洋経済連携協定(TPP)』の基本合意後に示されたのは、3000億円規模の補正予算でした。補助金のばら撒きは温存されているのでは?
「農業は経済合理性だけでは成り立たないし、世界でも農業を保護しない国など無い。だが、保護政策ありきの農業ではいけない。補正で予算を積み増ししたものに、畜産クラスター事業がある。この事業の趣旨は地域の収益を上げることにあるが、そうはなっていなかった。ある若手農家に聞いた話です。あまりにも人気のある事業で農家が殺到し、最後に予算が足りなくなって籤引きで決めたというんです。これじゃ駄目だと。投資計画の事業性を評価して採択していない。今回から農業団体を通さずに、採択までのプロセスに都道府県をしっかり絡ませるように運用を変えました。TPPは、終わりではなく始まりです。TPP参加に関心を示す国が増えてきますし、日本とEUの経済連携協定(EPA)等、経済連携は加速するでしょう。その環境下で政治が発信すべきメッセージは、『対策を打つので、変わらないから大丈夫です』ではない。環境は変わります。『変化に対応できる農業の実現に向けて対策を打つので、一緒に頑張りましょう』と言うべきなのです」

――農業自由化の先例である『関税貿易一般協定・多角化貿易交渉(GATTウルグアイラウンド)』交渉以降、農林水産省が投じた予算は補正予算を含め71兆円。莫大な予算が注ぎ込まれたのに、農業の競争力が付いたとは言えません。
「その通りです。結果的に、何が起こったか――。この20年で、農業産出額は11兆円から8兆円に減りました。同様に、農業所得は5兆円から3兆円に減り、農家の高齢化率は3割から6割強にまで高まりました。『71兆円を投じたから、この程度の打撃で済んでいる』と言う人もいますが、僕が納得のいく説明をしてくれた人はいません。農業を変えるのにマジックなんて無い。最近、二宮金次郎のことを勉強しています。薪を背負いながら寸暇を惜しんで学業に勤しむイメージが強いですが、実は、彼は人口減少の時代に村落の再生を手掛けた偉人。学んでいて感じるのは、『農業の世界に明るい希望を見い出すヒントが隠れている筈だ』ということです。今、日本の最大の課題は人口減少です。その答えは誰も見つけていない。僕は、『農業を始めとした1次産業の成長産業化は、東京一極集中を改め、地方に稼げる仕事を生み、地方を元気にする』と思う。『人口減少に歯止めをかける1つの解が農業の復活だ』という思いで、農林部会長を引き受けている。だから、今後は小泉進次郎じゃなくて、小泉金次郎にならなきゃいけない。…この話、オチが中々よくできているでしょう(笑)」




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②“儲かる農業”実現の為に…農協改革の手綱を緩めない
――最近、全国の有力農場へ足を運ぶ等、精力的に視察されているそうですね。
「そうなんです。特に、若い農家の間で『経営感覚を身に付けなければならない』という危機感が広く浸透していると感じます。僕の地元である神奈川県横須賀市の三浦地域は、キャベツやダイコンの一大産地。そこで農場経営をしている農家さんには、大変感銘を受けました。僕と同世代で、何れ農場の社長になる彼女が言うには、『農業の世界に“定価が無い”ことが経営のリスクになっている。にも拘らず、大半の農家がそのことを疑問にも感じていないのが恐ろしい』と。いくら農産物を栽培しても、その商品の正当な価値を反映した値決めが無かったら、市場価格の乱高下に振り回されます。経営の安定など望めません。そこで、彼女がやっているのが6次産業化(農産物の生産だけでなく、食品加工や流通販売も行うこと)です。野菜を原料とするジャムやピクルスを開発して、農産物に付加価値を付けた。定価販売できるラインナップを持ち、経営体力を強化できたのです。この成功談を別の農家に話すと、『確かに、定価という発想は必要だ』と同調してくれますね」

――経営マインドを持った担い手農家の中には、儲かる農業を実現できている人も多いですね。
「東京都内にある日本農業経営大学校を視察した時です。学生に目標について尋ねたところ、『経済新聞の株価欄の一番上に、自社の社名が掲載されること』と即答した学生がいた。別の1人は、『売上高20億円を達成する』んだと。学生のうちから、こうした具体的な目標を持っている。既に、経営感覚が備わっている訳です。強調したいのは、『農家=弱者ではない』ということ。農家の中には儲かっている人も一杯います。中山間地域でも経営できている農家はいくらでもいる。これまでは、どうしても『農業は弱い立場にあるから守らなければいけない。その為に補助金が必要だ』という発想に陥り易かった。本来は、農政の目標は“日本農業の発展”である筈なのに、補助金や予算を幾ら獲得できたかが基準になった。補助金塗れの農政は、日本の農業の競争力を弱めてしまいました。補助金を使わなくてもやっていける人たちには、経営体力の強化をしてもらわなければいけない。補助金を貰う発想から、融資を受けて、借りたものを返すという流れに転換していきたい」

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――それでは、農政のどこからメスを入れるのですか?
「農業の世界を解剖しなければならない。農業の“見える化”と言ってもいいかもしれない。この世界の流通構造や商習慣はあまりにも不透明で、恐らく全体像を理解している人間は殆どいない。これを明らかにしたい。農産物の品目に依って事情は異なるし、本当に複雑なのです。詳らかにしたいことの1つが、『農業機械・肥料・農薬等、生産資材の価格が何故こんなに高いのか?』ということです。ある農家が、農機メーカーの見積書を送ってきました。同じ品番の機械が、日本の販社から買えば110万円、アメリカの販社から買えば40万円と3倍近い価格差がある。例えば、『アメリカでトヨタ自動車のプリウスを買うと、日本の半額になる』なんてことはあり得ないですよね。これはおかしい。農林部会でも、複数の農家が『農機は高い』と訴えています。別の農機メーカーでも、『アメリカでは3~4割の価格で売られていた』という報告がありました。国内の農機業界は寡占状態で、価格競争がなされていないという問題提起でした。肥料も同じ。日本で使われている肥料は1万6000種類もあります。韓国では100種類も使っていない。日本では『貴方にはオリジナルブレンドが必要です』と言って販売するから、ここまで増えてしまった。でも、本当にそこまで種類を細分化した肥料が必要なのかどうかはわかりません。段ボールもそう。JA経由で買うと高い。JAは、『高いのは、雨に濡れても大丈夫で積み上げられるからだ』と言う。でも、出荷時の1度しか使わないものにそこまでの品質がいるのか? 明らかに過剰品質なのに、その段ボールじゃないとJAが農産物を出荷してくれないから、仕方なく使っているんです。IT業界では“ベンダーロックイン”という言葉があります。あるベンダーの独自仕様のシステムを採用すると、後継システムや周辺製品もその特定ベンダーに依存し、高値でも購入せざるを得なくなる現象のことです。農業の世界でも、これと似たようなことが起こっている。“メーカーロックイン”“農協ロックイン”が罷り通っているのです(※後述コラム参照)。こういうことで不当に農家の手取りが圧迫されているのだとすれば、“儲かる農業”を実現する為に、国がしっかりと環境整備をしなければならない。『こういった現状があるのだ』と世の中に問わなければいけない。お宅でも調べてみて下さい(※本誌では“担い手農家アンケート”を実施し、JAが抱える課題について炙り出した)。農協改革の一環として、農業金融の見直しも必至です。JAグループの農林中央金庫には、90兆円を超える貯金残高があります。資本金は3大メガバンクよりも多い。内部留保は、実に1兆5000億円もある。でも現状は、農林中金の貸出金残高のうち、農業融資は0.1%しかない。ならば、農林中金なんていりません。もっと、日本の農業や農家の発展の為に使えないのか? これはエールのつもりで言っているのです。JAにしても、農業融資の構成比は全体の5%に過ぎない。その理由を質すと、『貸し出す農家がいないからだ』と言う。そんなのおかしい。農業金融を見直して、本当に必要としている農家に資金が届くように整備したい」

③生産者起点から消費者起点へ…世界で稼ぐ体制を構築する
――小泉議員が取り纏めたTPP対策には、“農政新時代”というタイトルを付けて、文書の1枚目に“国民の皆さんへ”というメッセージを添えました。
「農業は、農家だけの為にあるのではないからです。『国民が農業の価値を理解し、生産者と消費者が支え合う世界にしなければいけない』という思いを込めました。例えば、食の安全への関心が高まる中、食品表示は大きな役割を果たしています。これは私見ですが、『(生鮮食品や漬物等、一部の加工食品に限られてきた)食品の原産地表示については、国産か外国産かを消費者が選べる仕組みへ変えるべきだ』と思っています。外食や食品メーカーには反発もあるでしょう。市況に依って食材の調達先を変える彼らが、原産地を表示するのは大変だという声もある。どうやったら実効性があり、且つ、食の安全を求める声に応えられるか議論していきます。愈々、電力自由化が始まりました。消費者がどこから電力を買うのかを選べる時代です。農産物の流通だって同じです。従来以上に、消費者の選択は洗練されていく。賢い消費者が賢い消費をする訳で、農家はその消費者ニーズを汲み取ることでしか競争力を発揮できない。国内の消費者が、自然と国産のものに手が伸びるような品質と信頼を確立する。そして、日本が誇る最高品質の食品で以て、世界市場で稼げる体制を構築したい。『結局、自分たちのことを一番過小評価しているのは農家の皆さんじゃないか』と思う時がある。でも、世界を見渡しても、農業に従事するのに、こんなに恵まれた環境と、ブランド力ある農産物を生み出せる技術力が揃った国は、日本以外に無いのです。僕が、生産者起点の農政から消費者起点の農政に転換します。農業と言えば小泉進次郎、小泉進次郎と言えば農業――。そう言ってもらえるくらい、腰を据えて農政改革をやり遂げる覚悟です」

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■護送船団方式をぶっ壊せ! 小泉氏に問われる実行力
1月18日、自民党の農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームの会合に参加した農協関係者の表情が青褪める一幕があった。ヒアリングに呼ばれた農家が提出した資料に、(肥料や農薬等の)生産資材の価格について、JAと他の専門店とを比較した表が記載されていたからだ。予て、「JAの生産資材は民間の商店よりも割高」とは言われてきたが、実際の価格差が自民党会合という公の場で明らかにされたインパクトは大きかった。資料に依れば、農薬は最大21%、段ボールは同12%、JAのほうが高かった。資料には、更に衝撃的な数字が並んでいた。ニンジン農家がJAで生産資材を買い、JAを通じて出荷した場合の手取りを試算したもので、10アール当たりの所得は7万670円だった。時給に換算したところ、490円という結果に。最低賃金の全国平均である798円を4割も下回る悲惨な数字である。この試算は、JAが農産物や生産資材の流通を牛耳っており、これを改めない限り、農家の経営が立ち行かなくなることを示している。農家には補助金が給付され、優遇されているイメージがあるが、それは正しいとは言えない。割高な肥料・農薬・農機を押し付けられ、実は手元には雀の涙ほどのカネしか残らないのが現状なのだ。流通構造を支配するJA、そしてJAに群がる肥料・農薬・農機メーカーに搾取されているのだ。いつの時代にも、JA・自民党・農林水産省は“補助金と票田”という絆で結び付いてきた。小泉氏が「護送船団方式を何とかしなければ」と危機感を露わにするのは、その為だ。前述の自民党会合では、JAが農薬の出荷額の6割を握っており、農薬メーカーにとって最大の顧客である為、メーカーがJA以外に卸す際にJAに遠慮して、値下げし辛いといった問題も提起された。小泉氏は、「農業の世界を解剖し、“儲かる農業”の環境整備をする」と覚悟を新たにしている。だが、上記のような歪んだ構造は、JAと民間企業同士の阿吽の呼吸で温存されてきたとも言え、法改正で乗り切れるような単純な話ではない。小泉氏の実行力が問われる局面だ。

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キャプチャ  2016年2月6日号掲載


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テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

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