【私のルールブック】(40) リップクリーム禁止! 芝居は裸で勝負する

たま~にドラマを観ることがある。皮肉った物言いに聴こえるかもしれないが、これでも一応本業は役者なので、中々純粋なお客さんの立場で観ることができないのだ。とは言え、気になるドラマはチェックしておかないと、“今”は感じられないですから。素敵なドラマ、沢山あります。クオリティーは、役者さんも含めて確実に上がっている。でも…ね。どうしても気になることがあるんです。それは、リップクリーム。いつの頃からか、女優さんがテッカテカのリップを塗るようになりました。まぁ、流行りというか、化粧品の進化からの流れと言いますか…。それこそ“今”を取り入れることも重要とするならば、百歩譲って、女優さんならテレビドラマならアリなんでしょう。ただ…男もするってさ。

バラエティーでもあるんです。メイクさんが当たり前のように私の唇にリップクリームを塗ろうとすることが…。最初は親切心からと思い、仕方なく受け入れていました。が、やはり生理的に気持ち悪いし、第三者の立場で映りを想像しても「おかしいだろ」しか残らない。結果、勇気を奮ってお断りをするようにしました。ということは、私の価値観の範疇では、ドラマで男優がリップクリームを塗るなんて死んでも考えられないってことなんです。だって、ドラマは“日常”だから。50代のサラリーマンのおじさんがリップ塗っています? 塗っていたとしても、唇がカッサカサだから、薬用のリップを塗る程度でしょ。しかも、唇の淵に綺麗に沿って塗ってなんかいない。粗、食み出している筈。それならわかるんです。お医者さんがリップ塗っています? 看護師さんが手術中にラメ入りのリップ塗っているの見たことあります? しつこいようですが、芝居は日常を映し出す鏡なんです。鏡に映るものを綺麗に見せたくなる気持ちもわからなくはない。しかし、綺麗にし過ぎるが故に日常感が消えてしまうならば本末転倒。度を超した個人的気遣いは、目の前の人気俳優に媚びた行為以外の何物でもないと、私は言い切りたい。




その昔、山城新伍さんにアドバイスを戴いたことがありました。「最近の役者は直ぐに煙草を吸いたがる。けど、あれはただの“逃げ”だ。芝居で一番難しいのは、手持無沙汰の状態でどこまで間を持たせられるかなんだよ」と…。私、当時からヘビースモーカーでした。でも、山城さんのこの言葉を聴いて、芝居の中で煙草を持つことを極力控えるようになりました。だって、正論と思ったから…。小道具の扱いが巧い役者が評価される時代が、確かにあったように思います。でも、やっぱり究極は“手ぶら”なんです。手ぶらとは? 着飾らない、纏わないということ…。裸は、誰だって恥ずかしい。でも、裸で勝負していかないと、本当の芝居の面白味を感じることはできない。日常を描くことはできないんじゃないかと…。リップクリームって何だ? 突き詰めると、カツラと変わんないだろ。役者がカツラを被るのは時代劇って決まってんだよ。足軽の役を引き受けたんなら、衣装は汚して下さい。汚れた衣装なんだから、メイクさんも今時のファンデーションなんか塗らないで、泥でも塗っておけばいい。それが嫌なら足軽の役なんか引き受けんなと、私は声を大にして言いたいのです!


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2016年2月25日号掲載


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テーマ : 俳優・男優
ジャンル : 映画

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