MJ1200人アンケート、マック離れ深刻6割――鶏肉問題、カフェへの流出…カサノバ社長“苦戦”

日本マクドナルドの社長兼最高経営責任者(CEO)にサラ・カサノバ氏(49)が就いて1年あまり。既存店売上高が前年実績を上回ったのは今年1月だけ。仕入れ先だった中国の食肉加工会社が使用期限切れの鶏肉を使用していた問題だけではない。価格・サービスに対する顧客満足度が低下していることも見逃せない。日経MJは約1200人の消費者アンケートを実施、“マック離れ”の深層を探った。

9月中旬の平日午後、マクドナルド渋谷東映プラザ店(東京・渋谷)は会社員や学生らでにぎわっていた。100席を超える座席はほぼ埋まり、カウンターに行列ができることもあった。ただ、利用者に声をかけると、7月下旬に発覚した鶏肉問題が消費行動に影響していた。女子大学生(19)は『マックシェイク』を買った。「鶏肉問題があってからチキンは食べない。シェイクならいいかな」と話した。女性パート従業員(23)も「“チキンマックナゲット”は食べないようにしている。今日は“てりやきマックバーガー”を注文した」。彼女は2週間に1回程度のペースで利用してきたが、鶏肉問題以降、足が遠のいたという。






日経MJは9~11日、調査会社のMS&コンサルティング(東京・中央)の協力を得て、10歳代~60歳代の男女1274人を対象にアンケートを実施。1年前と比べたマクドナルドの利用回数を尋ねると、「やや減った」「減った」「利用しなくなった」が合計59.1%に達した。利用回数が減った理由(複数回答)は、「食材の安全性に不安がある」が55.2%で1位。仕入れ先だった中国の食肉加工会社が使用期限切れ鶏肉を使っていたことで、マクドナルドの鶏肉商品は安全かどうか心配する消費者は少なくない。店頭でも「チキンはもう買わない」(女性パート従業員=45)といった意見が相次いだ。マクドナルドは中国製の鶏肉商品をすべてタイ製に切り替えたり、原材料の最終加工国を公開したりして、不安解消に努めている。これらの取り組みを「安心できる」と答えた消費者は27.0%と、「まだ不安」の65.2%を大きく下回り、収束はまだ見えない。

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利用回数が減った理由の2位は「価格が高い」で32.4%。年代別でみると、大学生や若手会社員が多い20歳代が39.4%にのぼる。男子大学生(21)は「最近のマックのハンバーガーは高い。(フライドポテトとドリンクの)セットで500円くらいなら買いたいんだけれど」と語り、100円台のマックシェイクを買っていった。マクドナルドは値下げキャンペーンを減らしている。単品商品で8回あった2013年に対し、2014年は9月まで3回と少ない。「短期的に売り上げは伸びるかもしれないが、長期的な成長にはつながらない」(カサノバ氏)ためだ。4月にアボカドを使ったハンバーガーなど、セット価格が699円と比較的高めの期間限定品を次々と販売していることも影響したようだ。マクドナルドはお得感を意味する『バリューフォーマネー』と『コンビニエンス』を掲げる。「安く時間をつぶせるから入った」(男性会社員=44)というような、“(マック)でも・しか”ニーズをしっかりつかむ努力が欠かせない。

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マクドナルドの利用客はどこへ去ったのか。アンケート(複数回答)によると、カフェが32.5%と最も多く、コンビニエンスストア(29.3%)、他のハンバーガー店(24.8%)と続く。5位までが2割を超えており、受け皿は分散していることが分かった。アンケートでは商品とサービス・設備の両面で足りない(あればいい)ものも聞いた(複数回答)。すると、サービス・設備は「ゆったりしたテーブルやイス」が33.9%でトップだった。次いで「静かさ」が28.8%、「清潔さ」が27.6%で拮抗。東京都内の繁華街にある店を訪れた男子高校生(16)は「きれいな店もあるけれど、ここは床にゴミが落ちて汚い」と憤っていた。消費者は「狭い・うるさい・汚い」の改善を求めている。今も売り上げ好調が続くスターバックスコーヒージャパンなどカフェチェーンはこうした滞在重視の客をつかんでいる。マック離れがさらにカフェブームを持続させる格好になっている。

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商品では「食材の安全性が高い商品」が52.2%、「安い商品」が44.3%と1・2位となり、利用回数の減少の理由と符合した。もっとも鶏肉問題の発覚を受けて、チキンを扱う競合チェーンも恩恵は受けていない。例えば、『モスバーガー』の8月の既存店売上高は前年同月と変化なし。マクドナルドからの流入があった一方、「中国産の食材を使っているため、敬遠した消費者がいる」(運営会社のモスフードサービス)と、鶏肉問題がマイナスに働いた側面もあるという。安全性などに次いで「ヘルシーな商品」が41.1%。なかでも女性は48.2%と約半数に達した。10~20歳代の若者の旺盛な胃袋の拡大がマックの成長源だった。少子高齢化が進む中、2004~2011年までは『100円マック』『マックカフェ』など新機軸で逆風をしのいできたが、近年は効果が低下。新たなマックの戦略が求められたが、女性やシニアをつかむような進化は見られない。2012年4月開店の原宿表参道店(東京・渋谷)には背もたれのある幅広のイスがあるものの、都心部ではトレーを載せるとパソコンや書類を置くスペースのない狭小テーブルが中心の店が目立つ。急速な変化に対応できていないのは確かだ。

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カサノバ氏が日本マクドナルドの社長兼最高経営責任者(CEO)を、ベネッセホールディングスの会長兼社長に転じた原田泳幸氏(65)から引き継いだのが2013年8月。既存店売上高は今年8月まで7ヵ月連続、客数は同16ヵ月連続で前年実績を下回る。再生を託されたカサノバ氏は目立った成果をあげられずにいる。カサノバ氏は業績改善を目指し、ファミリー層向けの商品開発や宅配サービスの拡充などに取り組んできた。9月上旬に子供向けメニュー『ハッピーセット』のおまけとして人気ゲーム・アニメ『妖怪ウォッチ』のカードをつけたところ、想定を上回る売れ行きでカードが足りなくなった。

ただ、商品そのものはヒットがなかなか生まれない。サッカー・ワールドカップの出場国をイメージした一部商品の販売は予想を下回った。4月に発売したアボカドを使ったハンバーガーは女性を中心に好評で、久々のヒットだったが、在庫を切らしてしまった。そこへ鶏肉問題による顧客離れが起きた。日本マクドナルドホールディングスの2014年12月期の連結業績は、鶏肉問題の影響を見積もれないとして、異例の“未定”とした。カサノバ氏は、鶏肉問題が発覚した直後の7月下旬に開いた2014年1~6月期決算会見から公の場に姿を現していない。おそらく再建への道筋をはっきりと示せないからだろう。原田氏が一線を引いて以来、「顧客や世論とのコミュニケーションが不足するのではないか」という不安が現実的なものになっている。 (黒井将人・中川竹美)

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               ◇

日本マクドナルドは7月下旬に発覚した鶏肉問題や、商品の割高感・魅力不足などを受けて深刻な顧客離れに直面している。品質管理と商品開発の担当者に日経MJの消費者アンケートの結果をどのようにとらえ、これからどう対応するのかを聞いた。

●原材料の情報さらに開示…クオリティ・アシュアランス部部長 大見謝健二氏
――鶏肉問題によって食材の安全性を不安視する消費者が多くいます。
「顧客に心配をかけていることを真摯に受け止め、深くおわびしたい。当社が販売した“チキンマックナゲット”に使用期限切れの鶏肉が混じっていたとは確認されておらず、健康被害の報告もない。消費者により安心してもらえるよう、その根拠をなるべく早く示したい」

――品質管理体制を強化するため、具体的にどのような対策をとりましたか。
「まず、8月上旬に鶏肉商品を生産するタイの工場と、デザート商品をつくる中国の工場に数日間かけて臨時監査を行った。現地の従業員がルールを理解して作業しているか、異物が入っていないかを検査する金属探知機のような機器が機能しているかなどを確認した」
「さらに9月からは毎月、当社の社員か輸入業者の担当者が両国にある工場を訪ね、衛生管理や温度管理などが徹底されているかを確認する。食の安全・安心の確保は当社にとって最優先事項。これからも真剣に取り組んでいく」

――しかし、アンケート調査では取り組みに対して「まだ不安」という答えが65%に達しました。
「発覚直後は顧客から『これではマクドナルドに行けない』などの厳しい意見を多くもらった。現在はだいぶ減ったとはいえ、(今回の調査で)顧客が依然として不安に思っていることを改めて認識した」
「信頼回復への取り組みは道半ばだ。原材料の最終加工国などの情報をより多く開示していく。短期間で安全・安心のレベルを高めるため、ほかの施策も検討している」


●ヘルシーさにニーズ痛感…メニューマネジメント部上席部長 若菜重昭氏
――「食べたい商品がない」など商品の魅力不足が利用回数の減少理由の上位に入りました。
「厳しい意見に身の引き締まる思いだ。ただ、ヒットした商品もいくつかある。まず、アボカドを使ったハンバーガーは女性に受けた。(スクランブルエッグなどを1枚のプレートに載せた)朝食メニューの“ビッグブレックファスト”は家族連れに週末、よく利用されている」

――現在はどういう商品開発方針で臨んでいますか。
「2014年はこれまでにハンバーガー・ドリンク・デザートなど合わせて52の新商品を売りだした。通年で46だった2013年と比べると多い。当社の顧客層は幅広い。ターゲットを絞らず、いろいろな商品を出そうと心がけてきた。今後も顧客が『もう一度食べたい』と思える商品をつくっていきたい」

――消費者は女性を中心に“ヘルシーな商品”を求めています。
「アボカドはまさに健康に役立つイメージのある食材。そこが女性から支持されたのだろう。今回のアンケート調査の結果を見てもヘルシーな商品にニーズがあると改めて感じた。日本人がヘルシーさを感じる食材は野菜だ。これから考慮していきたい」

――マクドナルドに割高感を覚える消費者がいる一方で、“少し高くても品質が良い商品”への要望もありました。
「旬の食材などを使ったこだわりのある商品づくりに挑戦したい。ただ、マクドナルドは全国に3000店超ある。多くの顧客が食べたいと思える商品にしないといけない。あまり流行の先端をいく食材を使ってしまうと、買ってもらえない可能性もあって難しい」

               ◇

日経MJが実施した消費者アンケートによると、マクドナルドを利用するペースは「2~3ヵ月に1回程度」(30.8%)が最も多かった。これに「1ヵ月に1回程度」(21.7%)、「1ヵ月に2~3回程度」(18.8%)が続いた。男女別にみると男性の方が利用頻度が高く、年齢別では10歳代の15.6%が1週間に1回以上利用している。利用する時間帯は「昼食」が男女とも最多で63.4%だった。続いて「喫茶・休憩」(35.1%)、「間食・夜食」(27.4%)の順だった。喫茶・休憩利用は男性が女性よりも3.9ポイント高く、会社員の平日の外出先や移動先での需要に応えていることが分かる。

今回の鶏肉問題が発覚してからマクドナルドが取り組んだ安全性確保の取り組みについては、「どちらかと言えばまだ不安」「まだ不安」が合計65.2%。「安心できる」「どちらかと言えば安心できる」の合計27.0%を大きく上回った。年齢別では60歳代の69.0%が不安と答えたのに対して、10歳代は「気にしていない」が13.8%あった。マクドナルドは深夜の利用客が減っている地域を対象に24時間営業店を減らしているが、「賛成」は58.2%と「反対」の9.2%を大幅に上回った。消費者が朝型の生活に移行していることがうかがえる。宅配サービスの拡充については、「便利だが自分は必要ない」が64.3%に達した。一方で、「利用したい」という答えも23.1%あり、一定の需要が見込めるようだ。

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キャプチャ  2014年9月22日付掲載
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