【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(52) 若年層に支持されるバーニー・サンダースに“ビーフ”はあるか?

アメリカ大統領選候補者選びの序盤戦は、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース上院議員が大接戦を演じています。現在、74歳のサンダースの政治的立ち位置は、アメリカ社会の中央値から見れば“急進的左派”。そんな候補が大本命のヒラリーに肉迫しているのは、想定外と言ってもいいでしょう。“民主社会主義者”を標榜するサンダースの主張は、極めて革新的です。国民皆保険制度の導入・所得格差是正・TPP反対・海外アウトソーシング反対・公立大学の授業料無料化・より進歩的な税制の実施・二酸化炭素(CO2)排出削減・LGBTの権利拡大…。とても“魅力的”なものばかりです。

サンダースを熱烈に支持するのは、1980年代から2000年代初頭に生まれた“ミレニアル世代”。旧ソビエト連邦や毛沢東時代の中国を知らない彼らは、社会主義に対する考え方が大人世代とは大きく違います。これは、日本の『SEALDs』にも通じる傾向かもしれませんが、かなり強烈な左翼的言説に対しても拒絶反応が無い。寧ろ、現実的に“真ん中稍左付近”を取ろうとしている進歩派に対してさえ、「何を甘っちょろいこと言ってんだ!」「もっとドラスティックに!」と変化を求めてしまう。応援活動も強烈で、例えば“勝手連”の若いサンダース支持者の女性たちは、『Tinder』という出会い系アプリを使って投票を呼びかけている。ニューハンプシャー州予備選の前には、多くの女性が態々有料会員となり、“ニューハンプシャー在住”と嘘の登録をして、州内の“出会いを求める男性”たちにアプローチ。言葉巧みにその気にさせた後、「投票はバーニーにお願い!」とメッセージを送り付けたのです。はっきり言ってスパム同然ですが、この無防備さこそ、彼らが如何に熱に浮かされているかをよく表しています。思い出されるのは、1984年の大統領選の予備選。この時も民主党では、エスタブリッシュメント側の本命だったウォルター・モンデールと伏兵のゲーリー・ハートが激しく争いました。“ニューアイデア”をスローガンに凄まじい勢いで台頭したハートに対し、モンデールは3月のテレビ討論で「ビーフはどこにある?」(Where's The Beef?)と切り込みました。




この言葉は、当時流行していた某ハンバーガーチェーンのCMで、競合チェーンのハンバーガーのビーフが少ないことを揶揄したコピー。つまりモンデールは、一見すると立派なハートのニューアイデアに「中身はあるのか?」と皮肉ったのです。この問いに動揺し、上手く言葉を返せなかったハートはその後、失速してしまいました。若し僕が今20代前半なら、やはりサンダース熱に浮かされていたでしょう。盛り上がっている彼らの無茶な勢いが羨ましくもある。しかし、今の僕から見ると、サンダースの主張に“ビーフ=具体性・実現性”は見当たらない。仮にサンダースが大統領になっても、公約は殆ど実現できないでしょう。尤も、それ以前にサンダースが若し民主党候補になったら、相手がトランブでもクルーズでもルビオでも、共和党候補に勝つことはかなり難しい。美しい理想ばかり掲げる人は、汚い大人に負ける。これが、世界共通の厳しい政治の掟なのです。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2016年3月7日号掲載
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