ソフトで作曲、授業に浸透中…高校、必修化をきっかけに――楽器苦手でも簡単…感覚的な操作、表現力育む

音楽の授業に歌声合成・編集ソフトを活用する試みが全国の高校で始まっている。楽器の演奏や楽譜をつくることが苦手でも、ソフトの手助けで作曲や編曲に気軽に挑戦できる。2013年度から高校の音楽で作曲などが必修になったことが普及のきっかけ。誰でも容易に扱える新たな音楽教材として教育現場の注目度は高い。

1日午前、藤村女子高校(東京都武蔵野市)で、1年生の音楽の授業が始まった。生徒約35人がタブレット(多機能携帯端末)を前に席に着く。課題はヤマハの歌声合成・編集ソフト『ボーカロイド』を使った歌の作詞作曲だ。端末画面の左端に表示されたピアノの鍵盤を見ながら、選んだ音階に乗せる歌詞を1文字ずつ右側の空欄に入力する。入力欄の幅を左右に伸縮させて、文字ごとの音の長さを変える。同校1年の向田貴美子さん(16)が入力を終え、再生ボタンを押した。「泣いたり笑ったり いろんな時を過ごしたね」。端末から卒業をテーマにした曲が流れた。「複雑に揺れる気持ちを高音と低音を組み合わせて表現できた。いろいろなメロディーを試しながら簡単に曲が作れる」と満足そうに話した。同校は2013年度から1年生の授業に導入している。担当の砂山瑞穂教諭(26)は「部活動や恋愛など思い思いのテーマを決め、個性的な曲を仕上げる生徒たちに驚かされた」という。




2・3年生の編曲の学習に活用しているのは、愛媛県立東温高校(東温市)。まず、端末に課題曲の歌詞とメロディーを入力する。次にギターやドラムなどの音を作成し同時再生させれば、楽器の演奏とともに流れる歌声の完成だ。永井明彦教諭(46)は「音楽の三要素“メロディー”“ハーモニー”“リズム”を自分でつくることで、曲の構造を理解させるのが狙い」と話す。和歌山県の新宮市立光洋中学校では、ソフトで作った歌声を手本に合唱を練習する。音楽教育の専門家で組織する日本音楽教育学会は今年10月、東京・渋谷で開いた大会で“ボーカロイドの可能性”をテーマに、作曲家らによるパネルディスカッションも実施した。

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各地の学校現場などに浸透する歌声合成・編集ソフト。2013年度に実施された学習指導要領が、高校音楽での作曲・編曲を“創造性が育まれる重要な学習”と位置づけ、必修テーマとしたことで導入が進んだ。総務省の社会生活基本調査によると、15~19歳のうち、楽器の演奏に親しんでいるのは23.7%。愛媛大の井上洋一准教授(音楽デザイン)は「専門的な演奏技術を身につけていなくても、歌声合成・編集ソフトなら感覚的な操作で作曲の喜びを味わえる」と、ソフトを通じた音楽の鑑賞力や表現力の育成に期待を寄せる。日本音楽教育学会のパネルディスカッションを企画した信州大の斉藤忠彦教授(音楽教育学)は「曲作り体験をきっかけに、楽譜の読み方やつくり方を教えたり、自分たちで完成させた曲を合唱させたりするなど、ソフトを活用した音楽教育は今後、一段と発展していくのではないか」と指摘している。

■若者人気、導入後押し “ボカロ曲”ネットに投稿し共有
歌声合成・編集ソフトの中で代表的な存在が、2003年にヤマハが開発した『ボーカロイド』。実在する歌手や声優の声を録音し、データとして蓄積し、パソコンやタブレットなどで歌詞・音程・リズムを入力することで歌声が合成される。若者らの間では、ボーカロイドでつくった歌や曲を動画共有サイトに投稿することが盛んだ。“ボカロ曲”と呼ばれ、再生回数が数百万回に上るケースもある。エクシングの通信カラオケ『JOYSOUND』の集計では、2014年1~11月、10代がカラオケで歌った上位20位のうち11曲を“ボカロ曲”が占めている。若者の人気も背景に、教育現場での活用が進むボーカロイド。ヤマハには「授業で使いたいとの相談が増えている」(担当者)という。同社は大学や専門学校に使い方を指導する講師を派遣しているが、派遣先を高校にまで広げるかどうか検討しているという。


キャプチャ  2014年12月19日付夕刊掲載


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