【政治の現場・参院選の焦点】(03) 公明推薦、悩む自民県連

20160305 04
「公明党候補への推薦は、現時点で考えられません」――。2月24日午後、自民党本部を訪れた同党福岡県連会長の蔵内勇夫は、幹事長の谷垣禎一と選挙対策委員長の茂木敏充に県連の意思を伝えた。2人は「わかりました」と答えたが、その場は重苦しい雰囲気に包まれた。党本部には他にも埼玉・神奈川・愛知・兵庫の各県連幹部が呼ばれ、29日には兵庫県連が反対の意向を伝えた。5県は何れも、参院選の改選定数が3~4の“複数区”で、自民・公明両党が候補を擁立する。公明党は昨年末以降、この5選挙区で自らの候補への自民党の推薦を求めてきた。参院選での公明党が自民党との競合区で推薦を得たのは、接戦となった2013年の埼玉選挙区の例があるだけ。同年参院選で公明党の選挙区候補は4人だったが、今回は7人に“戦線拡大”。5選挙区では、特に厳しい戦いが予想されている。参院選での過半数維持、更には憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席を見据える自民執行部もこれを容認したが、当の県連は激しく反発した。選挙区で競合する候補を推薦することは「自らの支持層の一部を持って行ってと言うようなもの」(福岡県連幹部)で、自らの当選も覚束無くなる為だ。2月13日、兵庫県高砂市で開かれた新春交歓会。自民党現職の参議院議員・末松信介(60)が会場の公明党市議に向かって、「公明党の先生からは『仲良く戦って』と言われている。戦い方を教えて頂こうと思います」と挨拶すると、会場に乾いた笑いが広がった。

兵庫選拳区(改選定教3)は、今回の参院選から改選定数が1増え、公明党は24年ぶりの候補として弁護士の伊藤孝江(48)を立てた。改選を迎えた末松に加え、民主党は現職の水岡俊一(59)、日本共産党は新人の金田峰生(50)を擁立する。2013年参院選の同選挙区では、自民候補が約86万票を獲得し、民主党(約34万票)・日本共産党(約22万票)に大きく水を開けた。公明党は2014年衆院選の比例選で、兵庫県内から約32万票を得ており、同党は「自民票を1割でも回してもらえば、参院選での当選も見えてくる」と算盤を弾いた。だが、自民県連としても簡単に首を縦に振る訳にはいかない。2013年参院選で自民候補と共に当選したのは、当時の『日本維新の会』の候補で、獲得票は約59万票だった。同会を継いだ『おおさか維新の会』は、2月2日に片山大介(49)の擁立を決めており、兵庫選挙区は屈指の激戦区となる。自民県連幹部は、「一つ間違えれば、末松が当落線上に立つ。党本部はわかっているのか」と苛立ちを露わにする。一方の公明党も、引く気配は無い。2月24日の自民党本部の様子を伝え聞いた公明党幹部は、「それなら、“1人区”での自民候補の推薦はどうなるのかということだ」と語った。野党の候補統一が進む1人区で、自民党にとって公明党の支援は命綱だ。中央幹事会長の漆原良夫は25日の記者会見で、「選挙結果に依って衆参が捻れるようなことがあっては断じてならない」と指摘した。難航する自公両党の選挙協力が、参院選の波乱要因になる可能性もある。 《敬称略》


≡読売新聞 2016年3月1日付掲載≡
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