【ふるさと再訪】福島・いわき(12) おてんとSUN企業組合、有機綿がつなぐ笑顔

12月上旬、いわき市小名浜の畑に東京からバスで来た長靴姿の男女が現れた。東芝グループ従業員のボランティア約60人。『オーガニックコットン(有機綿)』の収穫である。畑はもともと農家が小学校に体験学習で貸していた40aの水田だが、原発事故後は風評被害で米がつくれず、耕作放棄地に。それを小名浜に拠点を置くNPO法人『ザ・ピープル』が借りて圃場に変え、各地のボランティアらとコットンを栽培している。圃場で薄茶色の綿と殻を手で摘み、小屋で綿とゴミを分離する。指導するのはNPO代表の吉田恵美子さん(57)や楢葉町で白鳥を使った有機米栽培を行っていたアドバイザーの松本公一さん(60)・地元農家らだ。「今日の収穫は4.5kg。これが180枚分のTシャツに使われます」。吉田さんの声が響くと拍手が起こった。一部の種付き綿や殻は、広野町のお母さんらの手でコットンベイブ(赤ちゃん人形)や造花などに加工され、販売する。現在いわき市内や広野町など30ヵ所・約3haでコットンを栽培中で、昨年度の収量は種付きで890kg、参加ボランティアは4500人だ。




NPOの原点は15年前に始めた古着リサイクル。震災後は全国から届いた大量の古着を仕分けした。一方、小名浜でボランティアセンター機能を担い、被災者・避難者支援を続けるうち、多くの農地が放棄された現実に驚いた。全国の人脈を通じ、たどり着いたのが“食用でなく繊維になる作物”の栽培。生育も遅い日本在来種の有機栽培だが、「多くの人々が作業に関わり、つながることで3.11の風化が防げる」と吉田さん。「一緒に汗をかくうちに農家がみるみる元気になり、被災者、避難者の笑顔も出てきました」

いわきで始まったユニークな連携が、ザ・ピープルなど3者で作る『いわきおてんとSUN企業組合」。吉田さんが代表で、有機コットン事業を担う。それに自然エネルギー普及を進める島村守彦さん(56)、復興スタディツアーを主宰する湯本温泉の老舗旅館・古滝屋の里見喜生さん(46)が中核だ。事務局長の島村さんは大阪生まれ、兵庫県育ち。大学卒業後、金融系会社で20年ほど働いたが、転勤を続けるうちにいわきに惚れ、ログハウスを建てた。その後、兵庫の実家で阪神大震災に遭う。ガスが止まり、炊事も風呂もままならぬ中、隣から風呂に入る音がする。オール電化住宅だ。「これからは自然エネルギーだ」と確信。早期退職し10年前にいわきに移住、電化リフォーム会社を起業した。人生2度目の被災後、母親と埼玉へ避難したが「いわきナンバー車は放射能で危険と誤解され」、撤去を命じられるなどで帰還。停電が続く被災地区で太陽光パネル設置を始めた。現在、注力するのが『いわきコミュニティ電力』。耕作放棄地などに避難者や地域住民、ボランティアと共に太陽光パネルを取り付け、売電収入を還元する。小中学校での島村さんの『自然エネルギー学校』のニーズも急速に広がった。原発の多い韓国からも招かれ、自然エネルギー講習会も開いた。10月にはフィリピンの貧困地区でコミュニティ電力の技術指導も行った。「フクシマ発の再生可能エネルギーを広めたい」。島村さんが熱く語った。 《編集委員・嶋沢裕志(59)》


キャプチャ  2014年12月20日付夕刊掲載


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