【ソニー・熱狂なき復活】(03) 『SONY』の賞味期限…世界で薄れる存在感

20160306 12
今期は3年ぶりに最終黒字に転じる見込みの『ソニー』。だが、本格復活の狼煙が上げられないのはエレクトロニクス部門――特に、消費者向けの製品が悉く競争力を失っているからだ。元気があるのはBtoBのCMOSイメージセンサーぐらいのもの。嘗て、大黒柱だったテレビ事業は苦戦が続く。アメリカでは『サムスン電子』等の韓国同業、中国では地場メーカーに市場を奪われ、世界シェアは10%を割り込んでいる。この勢いでは、今年にも中国『ハイセンス』に3位の座を奪われかねない。テレビは成熟市場であるにも拘らず、競争が激しい。サムスンは2005年から世界首位を維持しているが、単価下落や新興国市場の減速を受け、テレビを柱とする家電部門の収益は急速に悪化している。躍進目覚ましい中国勢も収益は厳しく、勝者無き泥沼市場となっている。ソニーは2014年にテレビ事業を分社化した。現在は“事業変動リスクコントロール領域”として、投資を抑えて利益確保を最優先する方針を掲げ、前期は11期ぶりの黒字化を果たした。だが、更に競争が激化し、採算改善に目途が付かない場合、いつでも事業の売却・撤退ができる態勢を整えているようにも見える。前期約550億円の利益を稼いだカメラ事業も楽観できない。『キヤノン』『ニコン』が寡占していたレンズ交換式カメラで躍進し、ソニーはシェア3位の座を守っている。だが、問題は市場そのものが急速に縮小していること。スマートフォンの普及に依り、レンズ一体型のコンパクトデジタルカメラを購入する人が世界的に減少。2014年までの5年間で、市場の半分強が消失した。

テレビやデジカメ以上に深刻なのがモバイル事業、つまりスマホだ。前出の2製品と違って市場が拡大しているにも拘らず、出荷台数は減少している。前期は減損損失が響き、2000億円を超える巨額赤字を計上。構造改革が続く今期も600億円の赤字となる見通しだ。2012年に就任した平井一夫社長は当初、モバイル事業をCMOSやゲームと並ぶコア事業と定め、積極的に拡大路線を突き進んだ。しかし、Appleやサムスンといった2強の足元にも及ばず、開発費等が膨らみ収益が悪化。2014年秋に方針転換し、戦線縮小を余儀無くされた。同年11月には、十時裕樹氏がスマホ事業を担う子会社『ソニーモバイルコミュニケーションズ』の社長に就任。規模を追わず中高価格帯のモデルに集中し、収益を最優先する戦略に舵を切る。今や、スマホはテレビと並ぶ事業変動リスクコントロール領域の位置付けだ。今期は海外中心に2000人規模のリストラを実施、来期の黒字化を目指す。ただ、「固定費削減より売り上げ縮小のペースが速く、目標としている来年度の黒字化達成には一段のリストラが必要」(『みずほ証券』の中根康夫アナリスト)という指摘があり、予断を許さない。構造改革に目途を付けたとしても、再び成長を目指すのはハードルが高い。世界有数の巨大市場であるアメリカや中国に全く食い込めていないからだ。理由は、スマホ販売の主流である通信会社経由で殆ど売られていないことにある。アメリカでは昨年6月、『ベライゾン』向けに『エクスペリアZ4v』を供給すると発表。橋頭堡を築いたかに見えたが、10月に撤回した。抑々、ソニーが得意とする高付加価値の分野はAppleと完全に競合する。中国は『シャオミ』や『ファーウェイ』のような高品質で低価格の地場メーカーが躍進し、入り込む余地が少ない。現状、勝負できているのは御膝元の日本を中心としたアジア、そしてソニーモバイルの前身である『ソニーエリクソン』(スウェーデンの通信機器会社『エリクソン』との合弁)時代からの地盤があるヨーロッパだ。その日本にも不安材料がある。総務省が昨年12月に公表したスマホの料金負担軽減と、端末販売適正化への取り組み方針だ。これに依って“実質0円”といった端末の値引きが減り、市場が縮む懸念が出てきた。「以前はMNP(番号を変えず通信会社を乗り換えること)でスマホを買うと多額のキャッシュバックがあったが、最近は下火。そこに端末価格の上昇、更に消費増税が重なれば、買い替え周期が更に延びる可能性がある」と、スマホ市場に詳しい『BCN』の森英二アナリストは話す。このままジリ貧に陥れば、追加のリストラが必要になりかねない。まさに、「進むも地獄、引くも地獄」という状況に追い込まれつつある。




電機業界全体を見渡せば、スマホ以外にも伸びている市場はある。カメラ分野では、小型ビデオカメラを開発・販売するアメリカの『ゴープロ』が急成長。『アクションカム』と呼ばれる同社の製品は主に、サーフィンや自転車等のアウトドアスポーツを楽しむ人が身に着け、臨場感ある映像を撮って楽しむ為のものだ。ゴープロの2014年の売上高は約1700億円。過去5年間にソニーのイメージング事業が失った売り上げ規模(約1900億円)に粗匹敵するとは皮肉だ。「我々の技術なら1週間でも作れた製品」(あるソニーの現役エンジニア)と強がるが、今やゴープロがアクションカムの代名詞になっているのが現実だ。ドローンも、従来は軍需と極僅かなホビー用途しかないニッチ領域だったが、日米欧の各国政府に依る規制緩和を受け、民需市場が1兆円超へと倍増する見通し。だが、ここでもソニーの存在感は希薄だ。この市場で圧倒的な存在感を示しているのが、中国のドローンベンチャー『DJI(大疆創新科技)』だ。映画等の撮影用で7割超のシェアを誇る他、飛行精度を左右する基幹部品のフライトコントローラーを同業他社に販売。“ドローン界のインテ ル”となりつつある。このままエレキの縮小が続けば、今のソニーにとって最大の資産であるブランド力が陰り、更に製品が売れないという悪循環に陥ってしまう可能性がある。『SONY』の賞味期限は刻一刻と迫ってきている。


キャプチャ  2016年1月30日号掲載
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