2040年の労働力不足、救世主はロボット――農家の仕事は戦略立案が主、人の能力を覚醒させるロボ

人口減少が続く中、「経済成長を維持するには移民政策が欠かせない」との声が高まっている。ただ、ヨーロッパの現状を見る限り、その導入には十分な国民的議論が不可欠なのは明らかだ。そんな中、「慌てて移民に頼る必要はない」と主張する人々がいる。全国のロボット専門家だ。「次世代ロボットが普及すれば、人口減少は乗り切れる」と断言する彼ら。果たして本当なのか。人口減対策に“移民よりロボット”を選んだ際の、2040年の日本をシミュレーションする。 (西雄大・宗像誠之)

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ドイツ西部の街・ケルン。昨年12月31日夜、新年を祝おうと中央駅や大聖堂に集まっていた市民に暴徒が襲いかかった。多くの女性が性的暴行を受け、一部報道に依ると被害届は500件超。容疑者の大半は、中東やアフリカからの難民だった。昨年だけで100万人以上の難民を迎え入れたドイツだが、暴動以降、世論は一変。メルケル首相率いる連立政権の支持率は過去最低水準に下落した。1960年代から先進諸国の人口減対策の切り札と位置付けられてきた移民政策。労働力不足の解消や国内市場の拡大等、その有効性は多くの専門家が指摘している。が、ドイツに限らず逸早く移民政策を導入してきたヨーロッパの現状を見る限り、その導入には十分な国民的議論と社会的な合意形成が不可欠なのは明らかだ。1月28日、安倍首相が参院本会議で「全く考えていない」と発言したように、今のところ、日本は移民政策に明確な方向性を打ち出していない。ただ、人口減少が加速する中、移民対策をどうしていくのか、具体的議論を始めねばならない時期は着実に近付いている。治安悪化や社会的コスト増大のリスクを承知で移民を受け入れ、経済水準を維持していくか。それとも、移民政策を見送り、“沈み行く国”になるか。何れを選んでも道は険しい。そんな中、この難題に第3の解決策を提示する人々がいる。全国のロボット専門家たちだ。「ロボット技術は想像を超える速度で進化を遂げ始めており、関連ベンチャーが一気に育ちつつある。このままテクノロジーが発達すれば、凡そ四半世紀後の2040年には、第1次から第3次まで多くの産業の人手不足を、ロボットで補える可能性が高い」。ロボット業界に詳しい『トーマツベンチャーサポート』の瀬川友史氏は、こう話す。2016年現在、製造ライン等を除けば、「社会で活躍している」と言えるのは掃除機ロボットや調理ロボット程度。残り24年間で、移民の代わりを担うまで進化できるものなのか。そこで、本誌は全国の自動化専門家を取材し、人口減対策に“移民よりロボット”を選んだ際の、2040年の日本をシミュレーションした。試算に当たっては、人口減に伴う“国内市場の縮小”は輸出でカバーすると仮定。国際社会における道義的責任としての移民受け入れ議論は、一旦脇に置くこととする。先ず、各産業で働くロボットの現状と今後の進化を見る前に、2040年にどの産業でどの程度、人が足りなくなるのかを確認する。自治体の数が半減するとの予測もある2040年(日本創成会議の人口減少問題検討分科会)。当然、労働力も大きく減る。『国立社会保障・人口問題研究所』に依れば、総人口は現状の1億2660万人から1億728万人に、生産年齢人口は7682万人から5787万人になる。その時点で現在の生産能力を維持しようとした場合、各産業で足りなくなる人手数を一覧にしたのが右表だ(試算はトーマツベンチャーサポート)。全産業で586万人、必要就業者の約11%分が不足する。ただ、トーマツベンチャーサポートの瀬川氏は、「11%程度ならロボットに依る代替で何とかなる」と指摘する。

【試算1】第1次産業…農機の自動運転が完成、不足20万人は十分カバー
トラクターや田植え機は自動運転で稼働し、複数台が連携して作業する。マルチコプターに備え付けたカメラが空中から土壌の状態を確認し、肥料の成分と量を決める。田畑に人の姿は一切無い──。2040年には、こんな田園風景が当たり前になるかもしれない。現時点で既に人が足りない第1次産業。農業では、2040年には20万人分の労働力不足が見込まれている。昨年の農業就業人口の平均年齢は66.3歳。今後も高齢化は避けられず、自動化を進めるにしても、“ロボットがカバーしなければならない作業範囲”は年々広がっていく。しかし、『クボタ』の専務執行役員で研究開発本部長の飯田聡氏は「問題は無い」と話す。飯田氏に依れば、2040年には農機が完全自動化し、農家の主な仕事は販売戦略の立案や情報分析になる。そうなれば、農業専用ロボ等を開発するまでもなく、人手不足も高齢化も乗り越えられるという。2014年には、ICT(情報通信技術)を活用した農業支援システム『クボタスマートアグリシステム(KSAS)』を開発。農作業の完全自動化へ向け、布石を打ち始めた。人が全く土弄りをしなくなる訳ではない。新たな栽培方法や品種改良の研究の為、一部、人の手に依る栽培は続ける。「24年後では流石に、農機自身が農作業の改善点等を見つけ、修正するまでには至らない」(北海道大学農学部の野口伸教授)からだ。それでも、「大幅な自動化で農業に必要な労働力は確実に減る」と関係者は口を揃える。「課題は寧ろ法整備。だが、四半世紀もあれば、農機が農村を自律的に動き回れる環境が整う筈」(飯田本部長)。少なくとも農業については、自動化さえ順調に進めば、大量の移民の手を借りる必然性はなくなると言ってよさそうだ。




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【試算2】第2次産業…“人+ロボット”の協働で生産性の倍増も
第1次産業に比べ複雑な作業が要求される第2次産業ではどうか。先ず製造業。日本企業の工場はFA(ファクトリーオートメーション)化が進んでおり、今以上の自動化を実現するには、人間同様の思考と動きをするアンドロイドの登場を待つしかなさそうに思える。「流石に、残り24年でそこまで進化するかは未知数。寧ろ第2次産業の自動化は、人をロボットに置き換えるというより、同僚のように作業する“協働ロボット”の導入が基本になると思う」。2007年設立のロボットベンチャー『ライフロボティクス』(東京都江東区)の尹祐根CEO(左上写真)は、こう話す。生産ラインに2人の作業者がいて、1人が検品、1人が梱包をしている場合、梱包をロボットに任せれば単純に生産性は倍になる。課題は2つ。1つは安全性だ。人がロボットと接触し怪我をする事態を防がねばならない。その点、同社は、作業者から60㎝の場所に置いても安全というピッキングロボット『コ・ロボットCORO』を開発済み。ロボットアームの“肘”の構造を工夫し稼働範囲を狭めつつ、「独自のプログラムで、人の直感を裏切らない、意外性の無い動作を実現したことで、協働する人の危険予測を容易にした」(尹CEO)。組み立て等、より複雑な工程をロボットに任せる為の技術開発も進んでいる。先行するロボットベンチャーの1つが、2002年設立の『スキューズ』(京都市)。同社は今、ロボット向けの“指”を開発している。「ロボットが人と同じテンポで組み立てや梱包をするには、どんな工具でも持てる“指”が不可欠。製造ラインを流れてくる部品や製品が変わる度に段取り換えをしていたら話にならない」と清水三希夫社長(中央写真)は話す。例えば、弁当の製造工場では今、総菜やご飯を容器に詰める工程で人手が欠かせない。この為、現在は多くの外国人労働者に依って支えられているのが実情だ。「ロボットの“指”が進化すれば、硬さも大きさも異なる食材を、形を崩さぬまま箱詰めすることが可能になる」と清水社長は考えている。2040年の労働力不足は約97万人と、農業以上の人材難が見込まれている製造業。が、「工場労働者の1人ひとりが“協働ロボ”という部下を持てば影響は最小限になる」というのが、製造業向けロボットベンチャー起業家の共通の意見だ。製造業の約97万人不足をカバーできれば、第2次産業の人口減対策は目途が立つ。製造以外に人手不足が懸念されるのは建設業界だが、不足数は47万人。製造業の凡そ半分だ。トンネルの壁に張り付き、小さな罅を探し出し、人が入れない狭いスペースに進入し異常を点検する──。そんな点検ロボットの開発を提案しているのが、メンテナンス・監視・検査用ロボットのパイオニア『イクシスリサーチ』(神奈川県川崎市)だ。山崎文敬(右上写真)社長は、「建設業において最も危険な業務の1つが点検。それをロボットが担えば、人材難は相当解消する」と話す。建築作業自体をロボットに任せるなら、安全性を巡り反対の声も上がるかもしれない。が、危険な作業をロボットに丸投げすることに文句は出まい。

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【試算3】第3次産業…“支援ロボット”投入で人の能力を飛躍的に向上
日本が人口減対策に“移民よりロボット”を選んだ時、最大の難関となるのが第3次産業だ。2040年時点での第1次・第2次産業の労働力不足は其々20万人・144万人。それに対し第3次産業は、卸・小売業の99万人や医療や福祉の74万人を含め、合計の不足人数が422万人に達する。加えて、第3次産業の機械化は社会的なコンセンサス無しには進まない。ロボットが料理を運んでくるレストラン、自動運転の巡回バス、アンドロイドに世話をされる介護施設…。「ATMや自動改札機でさえ、最初は『失礼だ』との非難を浴びた。生活空間での新しい機械化を社会が受け入れるには、相当な時間が必要」。『オムロン』グループのシンクタンク『ヒューマンルネッサンス研究所』の中間真一取締役は、こう指摘する。こうしたことから、北海道大学の野口教授は「サービス分野では先ず、顧客からは見えない部分からロボットが普及していく」と予測する。「飲食店なら、食べ終わった食器を洗い収納する作業はロボットで、調理や接客は人という形になる」と見るのは、厨房機器大手『タニコー』の谷口秀一社長だ。流通業では、倉庫ロボットに依る在庫管理等も普及すると思われる。ただ、そうしたバックヤードの自動化だけでは、422万人もの労働力不足をカバーできるか覚束無い。そこで期待されるのが“支援ロボット”だ。第2次産業の“協働ロボ”のように、人と同じ仕事をする訳ではなく、作業者の業務を徹底的にサポートするというもの。その結果として人の作業能力が飛躍的に向上すれば、必要な人手は減るし、業務の特性上、これまでその仕事に就けなかった人材を活用することも可能になる。わかり易いのがパワードスーツ。「高齢者や女性が、20代の男性と同じ“筋力”を持てば、サービス現場の人材不足は確実に解消する」。装着型のパワーアシストスーツ(左上写真)を開発する2003年設立のロボットベンチャー『アクティブリンク』(奈良市)の藤本弘道社長は、こう強調する。腰の部分に装着し、重いモノの上げ下げをサポートする軽作業用のパワーアシストスーツを商用化している同社。現在、2020年代の実用化を目途に、より強力なパワードスーツを開発中で、装着すれば片手で50~70kgの荷物を上げ下げできるようになるという。医療・福祉業における被介護者の移動補助も早晩、ロボットの活躍の場になりそうだ。FA機器・ロボット・医療用機器の制御システムを手掛ける『マッスル』(大阪市)は、被介護者をベッドから車椅子に乗せかえる介護ロボット『SASUKE』を完成済み。介護士は、介護者の背中にシートを敷き入れるだけでいい。今後は「寝たきり状態でも排泄処理ができるロボットの開発にも力を入れる」(玉井博文社長・右上写真)という。“支援ロボ”が支援できるのは力技だけではない。例えば営業。ロボットを単独で取引先に行かせるのは無理でも、担当者に付き添わせ商談を補助させることは可能だ。「重要事項の説明や商材のプレゼンテーションを代行するのは勿論、前回の商談記録から最適なセールストークを担当者に指南すること等も可能になる」。2014年の設立で、『ソフトバンク』グループの家庭向け人型ロボット『Pepper』向けのアプリを開発した『ロボットスタート』(東京都渋谷区)の中橋義博社長は、こう指摘する。

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「2040年の保育園ではロボットが副担任になる」。こう話すのは、2013年設立のベンチャー『ユニファ』(名古屋市)の土岐泰之社長。「保育士は園児と接する他に、様々な業務を抱えている。登園時の検温や睡眠時間や食事内容の記録等は、ロボットが手掛ける時代が来る」(土岐社長)。昨年には、保育園向けの見守りロボット『MEEBO』を発表した。こうした第3次産業でのロボット活用は、“孤独社会”の解消にもプラスの影響を及ぼす可能性がある。介護施設や公共施設等に配置されたロボットたちは、生身の若者よりずっと“気さく”に高齢者に話しかけるからだ。日常的な挨拶だけではない。会話ロボ『BOCCO』を開発する『ユカイ工学』(東京都新宿区)の青木俊介社長は、ロボットに依る壮大な孤独社会の解消プランを練っている。2040年以降、高齢者となる層の多くは若い頃からSNSを使っており、何れそれは膨大な人生の記録となる。仕事から恋愛・友人関係・病気や事故・親しい人との死別…。ユカイ工学が研究する“孤独解消ロボ”が完成した暁には、そうした人生の重要な出来事をAI(人工知能)がインターネット上から読み取り、それをベースに対象者と思い出話を語り合う。「あいつ、どうなったかな」「案外、若い頃のままなんじゃない?」──。そんなロボットとの会話が、高齢者の孤独をどこまで癒やせるかはわからない。が、ATMや自動改札機を普及させたヒューマンルネッサンス研究所の中間取締役は、こう話す。「新しい仕組みの浸透には時間はかかる。が、本当に必要とされるものなら軈て定着する」。日本国民が人口減対策に“移民よりロボット”を選択した場合、その先には、全く新しい社会が待ち受けているのかもしれない。2040年まで約四半世紀。ロボット技術が進化する為の時間は十分あり、全国の自動化専門家が語る“機械化に依る人口減対策”は、荒唐無稽とは言い切れない。勿論、今回の試算は飽く迄も“生産能力の減少”をロボットで補えるかのみを検証したもの。生産能力を維持したところで人口減少で国内市場が縮小すれば、海外市場の開拓無しには衰退は避けられない。また、専門家が語ったのは四半世紀後の技術。そこに向かう過程では、技術が人口減をカバーできない事態も想定される。更に2040年以降は、人口減が一段と加速する。長期に亘って国力を維持するなら、そこから先もロボット技術が人口減を上回る速度で進化し続けることが不可欠だ。本当に移民政策を見送るなら、国家として国際社会における道義的責任をどうするのかという議論も別に必要になる。それでも、「いざとなればロボットが何とかしてくれる」という事実を、国民1人ひとりが知る意義は大きい。少なくともその結果、移民政策について、より冷静な国民的議論が可能になることは確かだ。


キャプチャ  2016年3月7日号掲載
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