【辺野古中断】(上) 首相判断「急がば回れ」

沖縄県のアメリカ軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡る代執行訴訟は、国が和解案を受け入れることで取り敢えず決着し、工事は中断した。舞台裏を探ると共に、和解が齎す影響を考える。

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国と県の和解から一夜明けた今月5日朝、辺野古沿岸部は静けさに包まれた。これまで、国はボーリング調査を進め、海上保安庁は反対住民の抗議活動を制止してきたが、この日は調査の為の台船にも動きは無かった。移設に反対する市民団体のメンバーは、「抗議の為の船を出したが、海保の動きは穏やかだ。工事が止まったと実感する」と語った。福岡高等裁判所那覇支部が1月29日に提案した和解案は、①知事は埋め立て承認の取り消しを撤回。政府は普天間の代替施設を建設し、供用後30年以内に国に返還するか、軍民共用化を目指してアメリカと交渉②国は代執行訴訟を取り下げ、工事を中止し、県と協議する。新たに提起される訴訟の判決には国も県も従う――という2種類で、①は“根本的な解決案(根本案)”、②は“暫定案”と呼ばれた。政府にとっては、辺野古移設を認めた根本案のほうが都合がいいのは明白で、菅官房長官は根本案を支持。2月5日、国は裁判所に「暫定案は受け入れられない」との立場を伝えた。しかしその後、政府方針は揺らぐ。当初は「代執行訴訟には必ず勝訴できる」との見方が多かったが、一部に敗訴の可能性を指摘する声が出始めた。「いきなり国が代執行をしたことが、強引な手続きと映らないか」という懸念だった。菅氏も悩み始めた。

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最終的な方針転換は、安倍首相が決めた。「敗訴すれば政権へのダメージが大きい」と考えた首相は2月下旬、菅氏に「沖縄が呑まない案では意味が無い。根本案では、辺野古に代替施設ができてもその後、アメリカと返還協議をすることになる。それもまた面倒だ。急がば回れだ」と、暫定案を呑む考えを伝えた。菅氏は少し考え込んだが、「首相が仰るなら…」と応じた。問題は、工事中断をアメリカが納得してくれるかどうかだった。今月に入り、首相は外務省北米局の森健良局長をアメリカに派遣。森氏とアメリカ政府との協議でアメリカ側は懸念を示したが、最終的には受け入れた。国務省のカービー報道官は4日の記者会見で、「日本政府の熟考の末の決断を理解する」と語った。辺野古の代替施設建設の工事は遅れることになったが、政府は、和解条項に新たな訴訟の「判決に従う」との文言が明記されたことを成果として挙げる。「司法の場で、移設容認の判決が出れば、県が従う確約が取れた」(政府筋)との受け止めだ。しかし、事はそう簡単ではない。徹底抗戦の構えを崩さない翁長雄志知事の周辺からは、「反対の手段全てが禁じられた訳ではない」との声が漏れている。翁長氏も周辺に、「私の任期は、安倍首相の任期より長い。政権が代われば、辺野古移設だってどうなるかわからない」と語っている。沖縄の抵抗は見通せない。1996年4月に、日米両政府が普天間返還で合意してから間もなく20年。国と県は、対立と融和を繰り返してきた。今回の国の譲歩が移設工事を前進させることに繋がるのか、又は後退させたのか、“解”は未だ見えない。


≡読売新聞 2016年3月6日付掲載≡


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テーマ : 沖縄米軍基地問題
ジャンル : 政治・経済

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