【辺野古中断】(下) 移設遅れ、安保に影響

20160310 03
国と沖縄県の和解は今月4日昼、首相官邸で開かれたアメリカ軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題に関する関係閣僚会議で、安倍首相が和解案を呑む方針を表明し、異論無く決まった。だが、島尻沖縄相は訝しそうにこう聞いた。「工事を止めるということですか?」。島尻氏には、政府方針の突然の転換が奇異に映った。会議終了後、菅官房長官は島房氏に対し、「首相の決断だ。長い目で見ればマイナスではない」と説いた。島尻氏は、夏の参院選で改選を迎える沖縄選挙区選出議員。菅氏は「選挙戦にも有利に働く」との見方も伝えた。首相が和解に踏み切ったのは、「訴訟で敗れるリスクを避け、参院選や6月の沖縄県議選にも有利になる」との判断からだが、移設工事を担う防衛省には戸惑いや反発が広がっている。「漸く工事が進むと思ったら、梯子を外された。あの時と同じだ」。防衛省幹部は悔しさを滲ませる。“あの時”とは、2004年の小泉内閣のことだ。防衛省(当時は防衛庁)は、辺野古埋め立てに向けてボーリング調査に着手しようとしたが、移設反対派が作業の足場を占拠する等、激しい反対運動を展開。小泉内閣は工事中止を決めた。「無理に調査を進めれば、怪我人等が出て、批判が高まる」との判断があった。安倍内閣は2014年夏にボーリング調査に着手。2004年の教訓を生かし、埋め立て区域を含む海域に臨時の立ち入り禁止水域を設定し、海上保安庁の巡視船等が反対運動を封じ込めようとした。23ヵ所のボーリング調査を終え、残りは1ヵ所というところまで進み、工事中断は決まった。

移設問題は、時の権力者の政局判断に翻弄されてきたとも言える。和解勧告では、県が新たに起こす訴訟の判決が確定するまで工事は中断する。「最高裁判決まで1年前後かかる」(政府関係者)と見られている。日米両政府が合意した、早ければ2022年度という移設完了時期のずれ込みは必至だ。沖縄のアメリカ軍基地は、中国が海洋進出を進める中、尖閣諸島を含む南西諸島の防衛に重要な役割を果たしている。特に、辺野古の代替施設に駐留予定の海兵隊は「大きな抑止力」(防衛省幹部)として期待されている。アメリカ軍にとっても、海兵隊が朝鮮半島から東南アジアまで迅速に展開できるというメリットがある。代替施設には、輸送機『MV22オスプレイ』も配備される。アジア太平洋地域の軍事力を強化する為、アメリカ軍が進めるリバランス(再均衡)政策の一環だ。代替艦設の建設の遅れは、普天間の危険性除去という側面だけでなく、安全保障上もマイナスと言える。オバマ大統領の任期は来年1月まで。今年11月には新大統領が決まる。日本が移設問題で立ち止まったことは、新政権の外交・安全保障政策に影響を与え、普天間問題を漂流させる可能性もある。

               ◇

芳村健次・橋本潤也・松下正和(沖縄担当)が担当しました。


≡読売新聞 2016年3月8日付掲載≡
あと少し、もう少し [ 瀬尾まいこ ]

あと少し、もう少し [ 瀬尾まいこ ]
価格:637円(税込、送料込)



スポンサーサイト

テーマ : 沖縄米軍基地問題
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR