【私のルールブック】(42) “物言うモノ”になるには二周りで結果を出す

プロ野球の『西武ライオンズ』が、昨年のドラフトで10巡目に指名獲得したのは、松本直晃という選手である。ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、経歴が異色の選手として俄かに注目されている。どうやら、介護職員の仕事に就きながら鍛錬を積み、夢を掴んだとか。しかも元は野手で、ピッチャーに転向して9ヵ月余りで投手として指名されたというのだから驚きだ。彼はインタビューで、こう語っていた。「介護をさせて載くお爺ちゃん・お婆ちゃんが言うには、『私たちの時代は戦中・戦後ということもあり、やりたいことがあってもやれる環境ではなかった。だからこそ、君には諦めずに夢を追い続けてほしい』」。そんな言葉が後押しとなり、夢を叶えることができたのだと…。そりゃあ、メディアが放っておく訳がない。球団としても、既に契約金の元は取れていると言っても言い過ぎではないでしょう。

何か、角のある言い回しでしょ。皮肉混じりに聴こえなくもない。いやいや、皮肉なんかじゃないんです。当然のことですが、西武ライオンズさんも松本選手の才能を見極めた上での獲得だったことは間違いない筈。ですが、実際に手に入れるにはお金が掛かる。お金が掛かるということは、最低でもチャラにしないと経営は成り立たない訳です。ただ、チャラというのは松本選手が2桁勝利を挙げる選手に育つことだけとは限りません。だって、日本のプロ野球は企業スポーツですからね。イメージUPで十二分に元が取れるということもあるんです。う~ん、未だ皮肉たっぷりに聴こえちゃうかな。では、私自身に置き換えてみましょう。バラエティー番組を観ていたら、極度の潔癖症の役者がいた。ちょっと面白そうだからウチでも使ってみるか。と、実際使ってみたら、今度は「ブスが嫌い」って言い始めたぞ。あいつ大丈夫か? 危なそうだけど、もう1回だけ使ってみるか――。若しかしたら、私はそんな目線でバラエティー界の方々に見られていたのかもしれない。要するに未知数だけど、“今”は面白そうな“モノ”だった訳です。モノと言うと聞こえは悪いかもしれませんが、起用されるということは1つのパーツになるということであり、商品でありモノな訳です。




ただ、肝心なのはここからで、モノとして重用されるのは精々二周りでしょう。その二周りの間に如何に結果を出すかで、“モノ”から“人”として見てもらえるようになるかが決まる。謂わば“物言うモノ”になれる訳です。是非とも、松本選手には監督やコーチの指導の元、地道に結果を積み重ねながら、“人”として、“物言うモノ”として息の長い選手生活を送って載きたいと、切に願うのです。それができて、初めて恩返ししたことになるのではないかと…。でもね、“人”であることを押し殺して“モノ”に徹する生き方も、それはそれでプロフェッショナルだと思うのです。だって、全ての人間が物言うモノになっちゃったら大変だから。そんな人ばっかりになっちゃったら会社回んなくなっちゃうから。モノに徹することで、家族を守っている方々を誰が責められるのか? 大袈裟ではなく、日本を下支えして下さっているのはそういった方々だと、私は確信しています。さあ、貴方は物言うモノになりますか? それとも、モノに徹しますか?


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2016年3月10日号掲載


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