【シャープの選択】(05) 再建の道筋、識者の見方

嘗て“勝ち組”と呼ばれた『シャープ』が、台湾の『鴻海精密工業』の傘下に入ることを決めた。シャープは何故転落したのか。鴻海は政府系ファンドの『産業革新機構』との争奪戦を制したが、再建の課題は何か。3人の識者に聞いた。

■鴻海は“良薬”か  『経営共創基盤』CEO・冨山和彦氏
企業再生の処方箋は、“良薬は口に苦し”が基本だ。革新機構案は、経営陣を退陣させて金融機関に負担を求め、事業を解体して他の企業と再編するとした。官の支援を疑問視する向きもあったが、“ゾンビ企業”の延命とは程遠く、機構案のほうが優れているように思える。鴻海は、経営陣を続投させて事業を一体運営するとしている。実質的に破綻状態に陥った企業の再建には経営陣の退陣が鉄則で、事業の再構築も不可欠だ。疑問を抱かざるを得ない。一方で、鴻海には郭台銘会長という卓越した経営者がいる。企業再生は外科手術のようなもので、“経営者=医師”の能力が勝負だ。受託製造業の雄である鴻海が、最終製品メーカーのシャープを傘下に置く利点は見え難いが、リーダーシップが不可欠な局面だ。結局、“処方箋”なら機構、“医師”なら鴻海に軍配が上がる。企業再生という難事は、この双方が揃わなければ成し遂げられない。一見したところ“甘い薬”に見える鴻海案は、本当に良薬なのか。あるべき“苦い薬”に変貌していくのか。今後の展開を注視したい。 《寄稿》

■技術革新で先導を  立命館アジア太平洋大学教授・中田行彦氏
シャープは、2004年に稼働させた亀山工場(三重県)で液晶パネルからテレビまでを手掛ける“垂直統合”の事業モデルで、大成功を収めた。2009年に稼働させた堺工場で更に発展させようとしたが、この頃には垂直統合モデルは時代遅れになっていた。製品のデジタル化・市場のグローバル化が一気に進み、部品を集めればテレビ等の完成品を容易に作れる“モジュール化”が進んだからだ。中国・韓国勢の安価な製品が普及した。「良い製品を作れば売れる」という技術振興に陥ったシャープは、世界市場で孤立した。これはシャープに限らず、日本の電機産業の問題でもある。日本は長年、企業間で技術を共有して微調整を繰り返し、製品の完成度を高めていく“すり合わせの技術”を得意としてきた。鴻海とシャープのように国境を越えた提携も方法だろうが、中国や韓国勢の真似では復活は叶わない。今後は、ベンチャー企業等の新しい技術を取り込んだ上で、グローバルな規模ですり合わせを進め、技術革新を先導していく必要がある。 (聞き手/杉山正樹)

■欠点、補い合える  早稲田大学ビジネススクール准教授・長内厚氏
技術には2種類ある。ゼロから新しいものを生み出す“創造の技術”と、生産現場で工夫を重ねてコストを下げる“生産の技術”だ。鴻海には前者が無く、シャープには後者が無い。シャープ・鴻海連合は、互いの欠点を補い合えるので評価できる。“創造の技術”は単なる技術ではなく、企業の文化だ。シャープには「面白い商品を作ってやろう」という長年の文化がある。製品を安価に大量生産できる鴻海の生産技術と、シャープの開発力を融合できれば、大きな効果が見込める。今後の焦点は、双方の技術を両立させる経営を鴻海が実現できるかどうかだ。1つの商品が生まれるまでには、膨大な失敗や無駄がある。鴻海がこれを許容できれば、シャープは再び優良企業となる筈だ。革新機構は、シャープの事業を他メーカーと統合する“日の丸連合”を提唱していた。しかし、統合後は工場や人員のリストラが避けられず、社員の離職は大規模な技術流出にも繋がる。鴻海がシャープの事業を切り離さずに“一体運営する”ことは、日本からの技術流出を防ぐ効果もある。 (聞き手/金島弘典) =おわり


≡読売新聞 2016年3月2日付掲載≡


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テーマ : 経済・社会
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