軽減税率導入で明らかになった新聞業界の腐り切った体質――瀕死の新聞業界を“買収”した政府が狙う言論統制の未来

食品を対象とした軽減税率について賛否が騒がれる今、その裏で密かに決められた“新聞の軽減税率適用”。背後には、大マスコミの掌握を目論む政府と、魂を売り渡しても生き残りたい新聞業界の思惑が透けて見えるのだった――。 (フリーライター 星野陽平)

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来年4月に実施される消費税率10%への引き上げと同時に導入される軽減税率について大きな論争が巻き起こったのは、ご存知の通り。自民党案では当初、生鮮食品のみに8%の軽減税率を適用することが検討されていたが、連立与党を組む公明党の主張に依り、加工食品を含めた食品全般に広げることが決まった。外食は適用外となるが線引きは曖昧で、今後も議論を呼ぶだろう。また、減税額は約1兆円と見積もられているが、財源探しは未だ難航している。一方、殆ど何の議論も無く決まった感もあるのが、新聞への軽減税率の適用だ。新聞業界は以前から、「新聞への課税強化は民主主義と文化の発展を阻害する」と主張し、消費税の軽減税率の適用を求めており、それが実った格好だが、本当に妥当な判断だったのだろうか。「民主主義がどうのこうの」というと尤もらしい意見のようにも聞こえるが、とんでもない話である。軽減税率の対象となるのが決まったのは“定期購読で週2回以上発行される新聞”に限られ、コンビニや駅売りの新聞は適用外。スポーツ新聞や夕刊紙を宅配で購読する人は殆どいないから、実質的に軽減税率は適用されないことになる。また、書籍や雑誌も新聞と同様、活字文化の担い手だが、昨年末に菅義偉官房長官は「出版業界が有害図書の線引きを自主的に決めた上で、議員立法で対象に加えるべきだ」という見解を示している。となれば、大マスコミが報道しない真実の究明をモットーとする本誌も、ほんのちょっとだけグラビアページを掲載しているという理由で“有害図書”というレッテルを貼られ、軽減税率の対象外となるではないか。では何故、新聞だけが特別扱いされるのか。それは、新聞に政治力があるからだ。テレビやインターネットニュースも新聞と並んで強い影響力があるが、民放地上波の場合、視聴者から料金を徴収していないので消費税は関係ないし、インターネットニュースも基本的には無料だ。一方、新聞の場合は近年、発行部数が急減しており、経営的に苦しい。『日本新聞協会』の調べに依れば、新聞の発行部数は2010年に4932万部だったが、昨年には4424万部と、5年で10%以上も減少している。消費税率アップで購読料が上昇すれば、新聞離れは益々加速するだろう。だが、部数が落ち込んだといっても新聞にはまだまだ影響力はある。新聞記事はインターネットニュースでも閲覧でき、信頼性が高いことから、インターネット上の至るところで引用される他、テレビ民放各局も新聞の系列下にある。政権から見れば、新聞という急所を突くことでメディア全体の論調を抑えることができるのだ。実際、新聞への軽減税率の適用の反対論は、新聞は勿論のこと、テレビやインターネットでも殆ど出なかった。それは、新聞がメディア界において“腐っても鯛”であることの証明だ。新聞への軽減税率導入で減る国の税収は200億円程度だと言われるが、この程度で新聞を“買収”できるならば、政府にとって見れば安いものだろう。

抑々、食品全般への軽減税率の適用が決まったのは、公明党が強硬に主張したことが大きいが、自民党が公明党案を了承したのは、それ以前に安倍政権の念願だった安保法制の成立に、公明党が渋々協力したことが挙げられる。公明党の支持母体である『創価学会』は元来、平和主義を掲げており、「安保法制は池田大作先生の教えに反する」と公然と反対論が巻き起こったが、公明党がそれを宥め賺して安保法制の成立に協力し、貸しを作ったからこそ、自民党は軽減税率について公明党案を丸呑みしたのだった。また、公明党は自民党に新聞を軽減税率の対象にするよう執拗に求めてきたが、その理由は公明党の支持母体である創価学会の機関紙『聖教新聞』を守る狙いがあったと考えられる。聖教新聞の発行部数は公称で550万部。これが事実ならば、912万部発行の『読売新聞』、679万部発行の『朝日新聞』に次ぐ影響力があることになる。しかし、実際は一般の国民への影響力は皆無であり、単なる創価学会広報誌に過ぎない。とは言え、聖教新聞は創価学会にとって布教活動の中核であると同時に、資金源でもあり、極めて重要な存在であることは間違いない。更に、軽減税率の適用は“週2回以上発行の新聞”に限られる為、日刊紙の聖教新聞はセーフで、週刊の日本共産党機関紙『しんぶん赤旗日曜版』はアウトとなる(日曜版の発行部数は日刊紙の5倍以上)。公明党と日本共産党は貧困層という支持母体が重なる為、長らく中傷合戦を繰り返してきた犬猿の仲で、1980年には日本共産党の宮本顕治委員長の自宅を創価学会員が盗聴していたことが発覚し、大スキャンダルになったこともある。公明党・創価学会としては、“仏敵”である共産党を懲らしめ、自分たちの勢力を維持することに成功できたと言えそうだ。因みに、公明党は書籍への軽減税率導入にも熱心だが、その理由は創価学会が『人間革命』等の書籍を“布教ツール”としているからだろう。大新聞にしても、事情は聖教新聞と同様だ。抑々、新聞が“民主主義と文化の発展”に寄与しているという考え方が間違いの元である。朝日新聞が慰安婦問題で大誤報をしたことでもわかるように、時に新聞は反社会的な存在ともなるのである。特に今回、新聞への軽減税率の適用で大燥ぎしている読売新聞について検証してみよう。




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新聞への軽減税率の適用についてインターネット上で話題となったのが、昨年12月20日の読売に掲載された社説だ。読売社説は、自民・公明両党が新聞を軽減税率の対象にすることで一致したことについて、民主党幹事長の枝野幸男が「新聞に軽減税率を適用する一方で、例えば水道料金や電気料金に適用しない。全く支離滅裂である。生活に欠かせないなら、水道や電気はどうなるんだと。新聞よりも、水道や電気のほうが生活必需品だと思います」と指摘したことに噛み付き、「民主主義や活字文化を支える重要な公共財である新聞や出版物に対する理解を欠いていると言わざるを得ない」と主張。読売に依れば、新聞は水道や電気以上の公共財ということらしいが、民主主義というのは、水道や電気が使えて、一応は生きられる状態になった上での話ではないか。もっと言えば、今やインターネットならタダで読める新聞にカネを出して購読できるのは、寧ろ富裕層である。『2015読売新聞媒体資料』に依ると、読売読者の世帯年収は500万円以上が55.7%を占め、1000万円以上も14.9%いる。この社説についてインターネット上では、「政府は新聞を買収することに成功した」「新聞が賄賂を受け取ったようなもの」と次々と嘲笑の声が浴びせられた。「軽減税率を新聞に適用すべし」との論調は新聞各紙に見られたものだが、とりわけ強硬だったのが読売だ。同月13日の読売社説でも、「新聞と出版物は、民主主義の発展や活字文化の振興に貢献してきた。単なる消費財でなく、豊かな国民生活を維持するのに欠かせない公共財と言える。こうした社会的役割を踏まえ、日本でも、新聞と出版物に軽減税率を適用すべきである」と壊れたレコードのように只管繰り返していた。では何故、読売は新聞への軽減税率の適用を声高に主張し続けるのか。それは、読売が主筆の“ナベツネ”こと渡邉恒雄を筆頭に、安倍政権とのパイプが太いからだろう。これを理解する為には、国会で安保法制と軽減税率の審議が粗セットで登場していることを理解しなくてはならない。

安保法制が国会で成立したのは昨年9月。同月27日の国会閉会を跨いで、消費税の軽減税率を巡って自民・公明両党で新聞を軽減税率の対象とすることが決まったのが12月のことだった。これは、「安保法制の成立で協力すれば、新聞への軽減税率適用を考えてもいい」というメッセージを安倍政権が新聞業界に発していたと見ることもできる。朝日は安保法制に批判的な立場だったが、その先に新聞への軽減税率導入の議論が待っているとなると、「安倍政権と決定的に対立することは避けたい」という心理が働く。保守系の読売は、当然のことながら安保法制に賛成の立場であり、影響力も大きい。この点で読売は、安倍政権に対して貸しを作っていた。今回の新聞への軽減税率の導入は、読売が一貫して安倍政権を支持し、安保法制が成立したことに対する“ご褒美”だったとも言えそうだ。戦後の日本政治を引っ張ってきたのは、基本的には保守の自民党である。新聞業界の意向を政治に伝える場合、朝日のような左翼では話にならない。そこはやはり、保守の読売の出番であろう。読売の主筆であるナベツネと言えば、自民党を中心とする保守系議員に大きな影響力を持つフィクサーである。2007年に自民党と民主党の“大連立構想”が持ち上がったことがあったが、この時、黒幕だったのが元首相の中曽根康弘とナベツネだった。そうした政治力があるからこそ、ナベツネは“新聞業界のドン”になったのである。1996年に国会で“著作物の再販売価格維持制度(新聞社や出版社が小売店等に小売価格を指示してこれを維持させていること)”が議論された際、ナベツネが新聞業界を代表して参考人として委員会に出席したことがある。その時、ナベツネは「新聞には文化的な価値や公共性があり、安売り競争が解禁されると、弱い所が潰れてしまう」と主張していた。これは、新聞への軽減税率の導入の議論と同様に、新聞業界の利益代弁者としての立場だった。だが、ナベツネに自分のところの新聞を“公共財”だの“民主主義”だのと言う資格はあるのだろうか? 元読売巨人軍取締役球団代表の清武英利に依れば、ナベツネは自らについて「俺は最後の独裁者だ」と語ったとされる。メディア業界で“独裁者”を自認するのはナベツネだけである。こんな人物が主筆を務める読売に民主主義がある筈がない。

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また、ナベツネの前の独裁者だった正力松太郎は、CIAの手先として、原子力の“平和利用”プロパガンダを読売の紙面で展開し、地震国の日本を原発だらけにし、その挙げ句に東日本大震災で原発事故を起こし、日本をパニックに陥れた人物である。公開されているアメリカ政府の公式文書に依れば、CIAは正力を“PODAM”という暗号で呼び、徹底的にマークしていたことが判明している。正力は東京帝国大学(現在の東京大学)を卒業し、警察官僚となり、戦前は共産主義者の取り締まりで名を上げ、政界の大物からの資金援助を受け、当時、僅か5万部に低迷していた読売を買収し、大新聞に成長させた。この手腕に目をつけたアメリカは、正力に資金提供し、読売の紙面を使って親米・反共のプロパガンダを流していた。特に、日本へのテレビ放送と原発の導入については、正力とCIAの利害が一致し、協力し合っていたという。つまり、読売は“社会の木鐸”どころか“外国のスパイ新聞”なのである。新聞への軽減税率の適用についての問題は、今回だけで終わるものではない。国の借金の総額は1000兆円を超えており、財政破綻のリスクが年々高まっている。それを回避する為には、将来的に消費税率を翌32%まで上げなければならないという研究がある。勿論、消費税率は一気に上げるのではなく、時々思い出したように上がるものだ。その度に、新聞の軽減税率について議論がなされるだろう。その間、政権は新聞業界に様々なプレッシャーをかけ、世論をコントロールしようとしてくるに違いない。新聞への軽減税率の適用は、政府に依るメディア支配の入り口だ。今後、言論の自由は益々制限され、政府主導の暗黒社会が到来するだろう。たかが2%、然れど2%なのである。 《敬称略》


キャプチャ  2016年3月号掲載
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