【ソニー・熱狂なき復活】(04) 過去最高の売れ行き…『プレイステーション(PS)4』を待ち受ける試練

低迷するAV機器やスマートフォンとは対照的に、飛ぶ鳥を落とす勢いで急拡大しているのが、平井一夫社長の出身母体でもあるゲーム事業だ。2013年11月に発売した『プレイステーション(PS)4』は、掘え置き型ゲーム機で過去最大のヒットとなったPS2を上回るスピードで売れている。昨年11月には累計販売台数3000万台を突破。アメリカの調査会社『VGチャート』に依れば、昨年12月時点でのPS4の累計販売台数は3500万台を超えた。競合する『Xbox One』(『Microsoft』)の約1900万台、『Wii U』(『任天堂』)の約1200万台と比べても、PS4は頭一つ抜けている。日本ではスマートフォン向けゲームの台頭で家庭用ゲーム市場は縮小しているが、北米やヨーロッパでは家庭用ゲーム市場も拡大しており(右下図)、PS4は出荷台数の9割を海外が占めている。AV機器を含めた『ソニー』が持つラインナップの中で、世界で戦うことができている数少ない製品だ。

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PS4が爆発的にヒットした理由は大きく2つある。1つは価格だ。PS4の発売時は399ドル。同時期に売り出したXbox Oneは499ドルで、大きな差があった。しかも、性能はPS4のほうが高いとされ、消費者が飛び付いた。発売から半年後、マイクロソフトは399ドルの廉価版を投入したが、差を詰めることができていない。それを尻目に、PS4は昨年の年末商戦前に349ドルに値下げし、独走態勢を築いている。もう1つはPS3の反省だ。PS3は人間の頭脳に当たるCPUに、『IBM』『東芝』と共同開発した超高性能の『Cell(セル)』を採用。当時はスーパーコンピュータ並みの性能という触れ込みだったが、ソフトメーカーからは「ソフトの開発がし難い」と不評だった。ソニーはPS3の開発に巨額の資金を投じた。その結果、PS3では大きな逆ザヤ(販売価格を原価が上回る)が発生し、2007年3月期には約2300億円の赤字を計上する等、苦い経験がある。そこでPS4では、パソコンに使われている『Intel』の『x86アーキテクチャ』を採用した。単純に言えば、「PS4はゲーム機の見た目をしたパソコンになった」ということだ。パソコンのソフトと同じような手法で開発できる為、手間や費用が抑えられ、小さなソフトメーカーでも参入し易くなった。これが、ハードの普及に不可欠なソフトの供給に繋がっている。またPS4には、PS3に比べて汎用性の高い部品を使っており、ハードの開発・製造にかかる投資も抑えられている。ソニーはゲーム事業を、半導体・映画・音楽と並ぶ、今後の成長を牽引する分野と位置付ける。「ゲーム事業の利益は一般的に、ハードが発売されて3年目からが最も出る。来期以降、本格的な収穫期を迎える」と、『バークレイズ証券』の伊藤和典アナリストは話す。ゲーム機はAV機器やスマホ等に比べて競合する企業が少なく、ビジネスの先行きも読み易い。




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ゲーム事業の営業利益の推移を見ると、最も稼いだのは初代PSが全盛期だった1999年3月期の1365億円。PS2全盛期の2003年3月期でも1127億円だ。PS4はPS2を上回るスピードで普及しており、今年3月期の見通しは約800億円に上る。逆に言えば、利益の伸びしろはそれほど残されていないと言える。今後ピークアウトせず、尚も拡大を続けていく為には、更なる付加価値が必要になる。その意味で大きな鍵を握るのが、今年の上半期に発売を予定している『PSVR』だ。「今までにない体験をお届けできる自信がある」。ゲーム事業を展開する子会社『ソニーコンピュータエンタテイメント(SCE)』のアンドリュー・ハウス社長はそう話す。PSVRは、頭部に装着してリアルな3D映像を視聴できるヘッドセットシステムで、VRとは“バーチャルリアリティー(仮想現実)”のこと。PS4と接続すれば自分自身が映像の中に入り込み、現実に体験しているような感覚でプレーできるのが特徴だ。欧米では、プレーヤーが主人公になりきって銃撃戦を繰り広げる“FPS(ファーストパーソンシューティング)”と呼ばれるジャンルが人気になっている。これはVRとの親和性が高く、PSVRにとってはヒットが見込める素地がある。「VRの用途はスポーツ観戦やコンサート等の鑑賞、バーチャル観光、医療や教育等、ゲームに限定されない。2020年には1兆円を超える市場になる」と『野村証券』の岡崎優アナリストは予測しており、潜在的な需要は幅広い。「ソニーの持つコンテンツは勿論、デジタルカメラやビデオ等と連携したビジネスの展開も考えられる」(ゲームジャーナリストの新清士氏)。期待が高まる反面、普及に向けたネックも少なからずある。「PSVRは、実際に装着して体験しないとその凄さがわからない」(SCEの盛田厚取締役)という点だ。「家電量販店やアミューズメント施設等に協力をお願いして、積極的にユーザーとの接点を作っていきたい」(同)。現時点では価格も明らかにされていない。VRを巡っては、『Facebook』傘下の『オキュラス』がPC用の『オキュラスリフト』の予約受け付けを今年1月に開始。その価格は599ドルで、消費者から「高過ぎる」と失望の声が上がった。PSVRも価格戦略を間違うと、一部のゲームマニアにしか普及しない結果になりかねない。更に、“酔い”の問題もある。個人差はあるが、激しい画面の動きや明滅に依って乗り物酔いのような状態になることがある。その為、業界内には「3Dテレビの二の舞いになる」との声が少なくない。『カプコン』の辻本春弘社長は、「初めから全部VRを使うのではなく、部分的に使うようなゲームが最初はいいと思っている。消費者が慣れるのに時間も必要」と話す。今年は、任天堂が新しいゲーム機の発表を予定している。ソニーにとってはライバルに圧倒的な差を付け、PS4をより盤石な状態にしておきたいところだ。PSVRは、PS4の普及を更に加速する起爆剤となるのか。価格の発表に注目が集まる。


キャプチャ  2016年1月30日号掲載


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