女子大生風俗嬢の悲惨な現実――学費の為、“普通の学生”になる為に女子大生たちが選んだのは風俗だった

誰もが貧困に喘ぐこの時代。花の女子大生も裸で稼がなくては学ぶこともできなくなってしまった。人知れず散りゆく夜の花に、救いの手は差し伸べられるのだろうか? (取材・文/ノンフィクションライター 中村淳彦)

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性風俗に、現役女子大生たちが続々と足を踏み入れている。彼女たちは、年齢にすると18~22歳。女性として最も旬な時期であり、風俗業者が最も欲しい年代だ。最高学府で勉強する女子大生は知的で育ちが良く、男たちにとっては永遠の高嶺の花である。1980年代半ば、『オールナイトフジ』(フジテレビほか)の女子大生集団“オールナイターズ”が人気となり、空前の女子大生ブームが起こった。そして、ビデオデッキの普及と共にアダルトビデオが膨張した1986年に、ホラ貝を吹きながらデビューした黒木香は、横浜国立大学の現役女子大生だったことで一躍有名に。このように、就職や結婚を控えた将来有望な現役女子大生たちが、リスクが高い裸の世界に足を踏み入れることはとても稀だった為、長年、“女子大生風俗嬢”は男のファンタジーとして消費されてきた筈だった。あれから30年――。現在の女子大生たちは平成5~8年生まれ。女子高生が制服や下着を売ったブルセラブーム、そしてオウム真理教が地下鉄サリン事件を起こした時代に生まれている。日本がアメリカ型の新自由主義に本格的に舵を切った時代に育ち、リストラや非正規低賃金労働が吹き荒れていた。彼女たちは、国民総中流と呼ばれた平穏な時代を知らない。「女子大生? うちにもいるし、どの店にもいるよ。今はどんなに偏差値の高い大学の学生でも、一定数は風俗で働いている」。そう語るのは、東京都内で20店舗以上のデリヘルを運営する山崎氏(仮名)だ。「女子大生風俗嬢は昔から少なからずいたけど、特に増えたのは平成20年の世界不況以降。あの時期を境に風俗のお客さんが激減して、経営が本当に厳しくなった反面、求人サイトから働きたいって女の子は沢山来るようになったけど、明らかな供給過多になった時期だった。そうなると店側が女の子を選ぶ立場になって、約半数の希望者は断っているよ。だからこそ、付加価値のある有名大学の女子大生が採用され易い。でもね、そんなに稼げていないのが現実。風俗嬢の収入は15年前の半分くらいだし、今、風俗で働いてる女子大生たちは、昔みたいに遊ぶ為じゃなくて、学校を卒業する為にカラダを売っているんだ」。大学・短大・高専を中途退学した人の中退理由(文部科学省調べ)の1位は“経済的理由”だ。また、『東京私大教連』の発表に依れば、自宅外学生の1日あたりの生活費は897円と、調査開始以降、初めて900円を割った。1990年には2500円に届く勢いだったが、6割以上の下落。大学生の経済的な窮状が明らかになった。更に、家庭の世帯収入も下落している。2000年には627.6万円だった平均世帯収入は、2014年には529万円。平均所得以下の世帯は61.2%に達して、最早、日本の家庭の過半数以上は子供を大学に行かせる経済力が無い。それなのに、大学進学率は上昇を続けている。金が無いのに、金を使うことで生まれる歪み――。その歪みを埋める為に、女子大生たちは続々と風俗嬢になっているのだ。

「大学2年生になってから、直ぐに風俗を始めました」。そう語るのは、明治学院大学4年生の山田史織さん(仮名・22)だ。悲痛な表情どころか、微笑みながら言う。童顔の山田さんは、誰も風俗嬢とは思わない清楚な風貌で、既に幾つかの志望企業に内定を貰っている。地元は東京郊外、父親53歳・母親50歳で、1人っ子の核家族。中学2年生の時、父親は17年間勤めた会社をリストラされた。製造業に派遣を認める派遣法改正の影響だった。父親は何年就職活動しても正社員としての再就職は叶わず、非正規職を転々とする。「父は再就職できませんでした。家にいるようになってアルコール依存になって、偶に仕事に出ても生活費を入れなくなって…。家族の生活は看護師資格を持つ母親が支えていましたが、介護施設のパートだったので、月収は精々18万円くらい。とても私立大学に娘を通わせるお金は家にはありませんでした」。彼女の出身高校は、地元では有名な進学校だった。「大学に進学しない」という選択はあり得ない環境で、学費が高めの明治学院大学に推薦で合格。「本当に学費に困っていた状況だったんだけど、最初の入学費用は祖父母が出してくれてホッとしました。でも、祖父母が援助してくれたのは入学資金まで。『学生生活の4年間は、毎月の奨学金とアルバイトで何とかする』という計算でした」。高校の薦めもあって、彼女は『日本学生支援機構』から第2種奨学金を毎月10万円借りた。4年間で元金は480万円。“奨学金”と名付けられているが、返済義務のある有利子の借金だ。「父親は無職のままだったので、入学後の授業料は全部奨学金。授業料は高くて前期50万円・後期50万円で、年間100万円強かかります。実家通学でも、本当にみっちりアルバイトしないとお金が足りません」。入学して直ぐ、自宅近くの飲食店でアルバイトを始めた。時給900円。授業が終わった後、18時から3~4時間働いたという。「授業を優先すると長時間働けないし、アルバイトで稼げるのは精々毎月3万円で、途方に暮れました。風俗で働くきっかけは、大学2年生になる直前の春休みに掲示板にあった私費留学のポスター。私費で30万円必要だったけど、どうしても行きたくて、『もう風俗店で働くしかない』と瞬間的に思ったんです。心からお金が欲しかったので、その日の内に渋谷のデリヘルに応募しました」。渋谷を選んだのは、大学の同級生にバレたくなかったから。明治学院大学は富裕層の子弟が多く、惨めな姿を見られたくなかったのだ。面接をして直ぐに採用され、その日の内に裸になって店員から性的サービスの講習を受け、翌日から出勤。見ず知らずの3人の中年男性を相手して、3万6000円の日当を貰ったという。「初日は『こんなにお金が貰えるの!?』って驚きました。風俗を始めるまでの男性経験は1人だけ。でも、仕事は直ぐに慣れました。3万円は留学の貯金に回して、残りの数千円を自分が遊ぶお金という感じでやり繰りしていたら、お金がどんどん貯まって、1ヵ月くらいで目標金額の30万円は超えました。でも、全然辞める気が起きなかったんです。大学の友達とご飯を食べに行くとか、普通の学生生活を送ることができて凄く助かって。それもあって、未だ続けています。来年からは奨学金の返済があるから、就職しても辞めません」。4月に就職してからも、土日に出勤して480万円+利子の奨学金返済に備えるという。山田さんは、「風俗って仕事があって本当によかった…」と笑顔で語った。




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現役女子大生の風俗嬢を取材すると、必ず出てくる言葉が「奨学金」と「学費が高い」である。2004年に『日本育英会』が廃止されて、独立行政法人『日本学生支援機構』が誕生した。実は、この政府が関わる法人こそが、女子大生たちがカラダを売るようになった元凶なのだ。日本学生支援機構の奨学金制度の目的は、高等教育予算の削減だ。文部科学省や財務省が深く関わる国の政策である。日本育英会は、国の高等教育予算から奨学金の原資を調達して無利子で学生たちに学費を貸し出していたが、日本学生支援機構は資金を財政投融資や民間から調達し、奨学金制度を金融事業として展開している。財政投融資や民間の資金は、必ず回収して利益を出さなければならないカネ。更に、上限3%の年利が上乗せされ、奨学金とは名ばかりで利益を上げる金融ビジネスとなっている。金融ビジネスなので、未回収の事態は許されない。今年1月3日の『東京新聞』で、「奨学金返還 訴訟が激増、支援機構 回収を強化」という報道があった。日本学生支援機構は、返済できない利用者に対して訴訟を起こしまくり、2004年は58件だった訴訟は、2012年には何と100倍を超えて7000件近くに上った。滞納者に対しては容赦なく取り立てをし、サラ金と同じく容赦なくブラックリストに入れた上に、訴訟を起こして追い詰める。日本学生支援機構と利用者が賃貸借契約をするのは、17~18歳の高校3年生の時。現在の奨学金は、未成年に対して自己破産相当の金貸借契約をして、返済できなかったら法的措置を起こすという常識を逸脱した制度なのだ。

「私は私立の美術大学だから、学費が年間150万円なのでハンパなく高い。それだけじゃなくて、1つの作品を作る為の絵具とかキャンパスだけで5万円くらいかかる。奨学金は月12万円のコースをフルで借りているけど、それだけでは全然足りなくて、大学1年の夏から池袋のデリヘルでバイトしています」。そう語るのは、都内私立美大3年生の石川彩香さん(仮名・21)。1人暮らしの石川さんは、家賃を4万円に抑えてはいるが、年間150万円という学費と、授業が忙しくてバイトもままならない状態から、入学早々に金銭的に追い詰められ、女子大生風俗嬢になるしか選択肢が無かった。「親は普通のサラリーマン。私立高校に通う弟もいるので、『美大進学は絶対に無理』と言われて、『自分で何とかしよう』と思って奨学金を借りたんです。皆も借りているし、最初は何も考えていなかったですね。美大は学費が高いから、大学の同級生とか先輩は皆、借金塗れですよ。そんな状況なのに、『画家になる』なんて夢を追っている人が多い。私は600万円近くの奨学金を借りているけど、ブラックリスト入りとか自己破産とかしたくないので、どう考えても給料の高い会社を探して就職するしかないですね」。大学の高い学費や奨学金制度は、女子大生たちを裸の世界へ送り込むだけでなく、将来も制限する。裸になって稼ぐことを覚悟した石川さんがデリヘルに出勤するのは、平均週2回。大学1年の夏から、月18万円程度を男性への性的サービスの提供で稼いでいる。「最初は少し嫌だったけど、もう何とも思いませんね。それしか手段が無いから仕方がない。エロいオヤジとか直ぐ慣れるし、『客はお金だ』と思って抜いていますよ。隠すのも面倒臭いので、大学でも風俗でバイトしていることは普通に話しています。周りは皆、お金に苦労しているから、そのことに対しては誰も何も言いません」

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彼女のように年間150万円の学費は特別だが、大学の学費高騰は大学生たちに追い打ちをかけている。40年前(1975年)の国立大学入学金は5万円、授業料は3万6000円だった。私立大学も入学金9万5584円、授業料は18万2627円と安価である。そして38年後(2013年)、国立大学は入学金28万2000円・授業料53万5800円、私立大学は入学金26万7608円・授業料85万9367円と、授業料は15倍近い凄まじい急騰をした。日本の高等教育の自己負担額の多さは、先進国ではトップレベル。アメリカは州立大学が多く、福祉が充実しているヨーロッパでは、基本的に大学の学費は無料だ。一方、日本の国立大学の学費は2年毎に改定され、大学生たちが続々と性風俗へと走っているのに、未だ上昇を止める気配は無い。財務省の財務制度等審議会では、更なる国立大学の学費の引き上げを検討している。審議会では、将来的に国立大学の学費を125万9000円まで値上げする驚愕の案も出ているという。「もう疲れました。この生活は限界です」。都内の中堅大学社会福社学部2年生の藤原希美さん(仮名・20)は、青褪めた表情で言う。家庭からの援助は無く、平均より高額な学費と生活費を奨学金と介護施設でのブラックバイトで支えている。藤原さんは週4日のグループホームとお泊りデイサービスの夜勤、そして大学の授業で眠る時間も無く、心身共に疲れ果てていた。取材の前日に介護施設でのブラックバイトを辞めて、デリヘルで働くことを決意。裸になるのは、「眠ることのできる、普通の生活を送りたい」という痛々しい理由だった。藤原さんには、同じ大学に精神保健福祉士を目指す恋人がいる。本気で福祉を志す彼女は、真面目な普通の女の子だ。彼氏の話が出た途端に下を俯き、涙を浮かべ出した。「うーん、風俗するのは本当に仕方ないことなんだけど、彼氏に対しては凄く罪悪感があります。彼は真面目な人で、絶対に私が裏切ることは無いって思っているんですけど、実際は違うんですよね。風俗で働くんですから。本当は裏切りたくないけど、このままの生活は無理。何も考えない。考えたら罪悪感ばかりになっちゃうから…。バレたら殺されるかな」。常にお金に追い詰められ、性風俗で働いて精液塗れになるか、眠ることさえできないブラックバイトで低賃金労働漬け――。大学生たちの貧困は手に負えないことになっている。


キャプチャ  2016年3月号掲載
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