【中国とどう付き合うか】(03) 日本企業が嵌まる“チャイナハラスメント”の罠

20160319 04
中国に進出した日本の企業は2万3000社に上るが、何れも無意識のうちにチャイナハラスメントの罠に厳まっている。中国に進出しようと候補地に行けば、地方政府の役人の歓迎を受け、時には市長自ら歓迎宴を催してくれる。彼らは自分の出世と“カネ”の為に実績作りをしているのだが、お上や権威に弱く、人を疑うことを知らないお人好しの日本人は、「市長が自ら出てきてくれた」と感激してしまう。工業用地の使用権の購入価格に、彼らの取り分(事実上の賄賂)がたっぷり含まれていることを知らず、言い値で取得してしまう。合弁会社の一定額以上の機械設備を購入するには、インチキな入札が義務付けられている。「入札なら公平だ」と信じ込み、中国側のボスや関係者のポケットに入る“カネ”を毟り取られる。地場メーカーに部品を納入すると、代金不払いが少なからず発生する。企業に不利益を齎すこれらの行為も立派なハラスメントで、彼らが手にした泡銭は家族の“爆買い”に使われ、日本に爪の拓ほどが還元される。扨て、このような裏の顔を持ち、拝金主義が蔓延している中国に進出した日本企業は、果たして儲かっているのだろうか? ある酒造会社の総経理(現地社長)は、「我が社は利益が殆ど出ていないので、配当ができない。ライセンス契約を締結しておらず、技術料が貰えない。酒の原料は中国の米を使うので、日本から購入するものは無い」と嘆く。この会社は中国に所得税を納め、中国に雇用を創出し、中国(共産党)に奉仕して慈善事業を行っているのと同じで、現地ではこれと似た声は非常に多い。日本企業の中国での直接投資収益率は、以前の6%台から近年かなり改善され、10%程度になった。それでも、中国に迎合せず、現地責任者が権限を持ち、最終的な結果で評価される欧米企業の中国での収益率は18%というデータなので、如何に日本企業の収益率が低いかがわかる。

世界に冠たる日本の自動車産業は、進出時に車体とエンジンを別々の合弁会社で生産させられたことや、エンジンの遠距離移送を強いられた等の不利な扱いを受けた為、殊に中国では欧米メーカーの後塵を拝していて、その市場占拠率は大きく水を開けられている。2013年の実績では、日本の自動車メーカーを束にしても『フォルクスワーゲン』や『GM』1社のそれにも及ばない。中国に進出した日本の自動車部品メーカーは当てが外れて四苦八苦で、新たな販売先として現地企業に販売すれば、代金不払いまで起きている。部品メーカー等の中小零細企業は、工場を畳んで帰国するしかない。何故、日本企業は苦戦しているのか? 日本側にある原因として、

①日本の経済界のリーダーの多くが、戦前の日本の行為の負い目等から、無理筋の要求に譲歩する流れを作った。
②経営者やビジネスマンが、中国や中国人の特殊性をあまりにも知らな過ぎた。
③出世をかけ、利益に貪欲な中国人ビジネスマンに比べ、日本人の交渉力が見劣りする。

等。中国側に帰するものは、

①愛国教育に名を借りた反日教育を始めとする対日敵視政策。
②「日本企業は何をされても中国から出て行かない」「何の抵抗もしない与し易い相手」という風潮を背景にしたハラスメント。
③労働者の権利意識の高まりと人件費の高騰。

等が挙げられる。『抗日戦争勝利70周年』の軍事パレードのように、一党独裁を維持する為、事ある毎に日本を敵視する政策は、日本が何の抵抗も示さない限り永遠に続く。2015年、安倍首相が戦後70年談話で「次の世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」と発言したように、経済界でも従来の物言わぬ態度を改め、行動を起こす時だ。それは、中国ビジネスの見直しである。抑々、日本への敵視政策を強化する政経一体の共産中国に、自由で健全な市場を求めるのは非常識である。近年、中国から撤退する日本企業が増加するのに伴い、生産量が下がることを恐れる地方政府は、簡単に撤退を認めないので、全てを捨てて逃げ帰ってきたというトラブルが出始めている。それは恰も70年前、帰国したくとも叶わず、多くの悲劇を招いた満蒙開拓団や残留孤児の悲劇を思い出させる。




日本企業の撤退に係わる採め事が発生している時こそ、対中ビジネスを見直す良い機会である。見直しで留意すべきは、契約満了で企業を終了させる時を除き、企業の延長や終了は認可機関の承認が必要で、日本側には決定権が無いことである。満了に依る終了でも、認可機関が必要と判断すれば清算業務に干渉してくることもある。このことは、進出企業の“生殺与奪の権”は中国側が握っていることを意味する。欧米企業はそれを前提に投資や配当をするが、日本企業は事の重大さに気付いていない。今後は、中国が必要とする企業のみが延長を認められる。自動車産業で見ると、中国政府は勝手に法律を変えて、渋る日本企業に欧米企業と同様の研究開発センターを作らせた。そして合弁会社には、ここで開発した車しか生産販売を認めていない。中国の次の一手は、この車を輸出し、先進国の仲間入りをすることで、その為に「輸出に協力する合弁企業のみ延長を認める」と踏み絵を迫ってくる。中国から自動車の輸出が始まれば、日本の自動車会社の強力なライバルとなり、日本の経済は大打撃を受ける。中国は外国企業が出て行った後も、そこの工場で生産を続ける。ノウハウが詰まった工場をそっくり戴くのだから、逆に追い出しが目的のこともある。イギリスから近代的な貿易都市の香港をそっくりそのまま返還させた事例とダブる。ともあれ、こうした狡猾な中国とビジネスする為のノウハウは、拙著『チャイナハラスメント 中国にむしられる日本企業』で詳述した。中国進出は、絶対安易に考えてはいけない。


松原邦久(まつばら・くにひさ) 元『スズキ』北京事務所首席代表。1943年、静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、1967年に『鈴木自動車工業』(現在の『スズキ』)に入社。中国部部長・『重慶長安鈴木汽車有限公司』総経理・北京事務所首席代表を歴任。2004年に中国政府より“国家友誼奨”を授与される。著書に『チャイナハラスメント 中国にむしられる日本企業』(新潮新書)。


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