【儲かる農業】(05) 韓国産パプリカを国産に転換! 伸びる農産物“5つの条件”

「何を作れば稼げるのか」――。この問いは、農家にとって永遠の課題だ。100%の正解は無いにせよ、一歩進んだプロ農家は今、どんな農産物を“種蒔き”しようとしているのだろうか。

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日本で消費されているパプリカは年間約3万7000トン。その内の9割を韓国産等の輸入に頼っていることはご存知だろうか? この現状に目を付けた『富士電機』『清水建設』『ウシオ電機』等が農業生産法人『北海道サラダパプリカ』を設立し、国産パプリカの需要を拡大しようとしている。直近での為替レートは不安定に推移しているものの、“超円高”に戻ることは考え難い。円安に転じた頃から、低価格で日本に流入していた農産物を国内産に切り替える動きが加速している。漢方薬の原料となる“生薬”もそうだ。医薬用の生薬の約9割を中国からの輸入に依存しており、「中国での人件費の高まりや円安基調に依り、高品質な生薬の安定調達が難しくなった」(関係者)という。その一方で、高齢化進行で漢方薬のニーズは高まっていることから、俄かに“儲かる農産物”として生薬が脚光を浴びているのだ。実際に、大手の『武田薬品工業』や『ツムラ』が、共に北海道で生薬栽培を強化し始めている。「実は、お茶(茶葉)は海外産に勝てるくらいのコスト競争力がある農産物なんですよ」。そう話すのは、『ハラダ製茶農園』(静岡県島田市)の北川清久工場長。“やぶ北ブレンド”で知られる『ハラダ製茶』傘下の農業生産法人で茶葉を生産している。輸出向け茶葉の価格で比較すると、「国産は1kg当たり300円であるのに対して、ライバルの中国産は同500~600円」(同)なのだという。例えば、これまで10人必要だった毎朝の出荷作業を、機械化や工程管理の改善で1人でできるようにする等、労働生産性アップに努めている。しかも、“安かろう悪かろう”ではない。ハラダ製茶農園では、農作業の厳格な工程管理の“お墨付き”である『GAP規格』を取得しており、農薬使用量等のトレーサビリティーの確保も万全だ。輸出先の主要ターゲットはアメリカとヨーロッパに据える。このように、“輸入農産物の国内産への切り替え”や、それとは逆に、『環太平洋経済連携協定(TPP)』を追い風にした“農産物の輸出拡大”の動きが顕著になってきている。

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尤も、あれだけ賛成派・反対派に分かれて大議論となったTPP問題なのだが、担い手農家の反応は極めて冷静だ。“担い手農家アンケート”に依れば、TPPへの参加に賛成しているのは全体の16%に過ぎない。「TPPで作物生産量が増える」と答えた農家も21%に留まった。これは、アンケート対象となった担い手農家に、コメ農家が多く含まれていることも一因だろう。安価な海外産米の流入というマイナスの影響も予想されているからだ。併せて、TPPの影響について「どちらでもない」と回答している農家の比率が高い。「過度に期待することも悲観することもない」というスタンスにも見える。それでは、中長期的な将来を見据えた時、本当に儲かる農産物はどんなものなのだろうか? やはり、プロに聞くのが一番手堅いということで、担い手農家の皆さんに聞いてみた。「将来的に生産したい作物は何ですか?」――。その回答を纏めたものが上図である。見事に、需要の見込める農産物の特徴がくっきりと表れる結果になった。大まかには5つに分類できる。即ち、加工用野菜・生鮮野菜・ニッチ作物・多様な穀物・インバウンドや輸出に強い果物である。中でも、回答数が多かったのは加工用野菜である。これまで、冷凍食品や外食チェーンで使用されてきた加工用野菜(カット野菜を含む)の多くは中国産で占められていた。だが、近年の安全性確保の難しさや価格上昇が理由となり、国産に切り替える事例が増えているのだ。これまで生鮮野菜を出荷してきた農家にとってみれば、加工用にする為のノウハウ・投資ができれば6次産業化が進むし、販路を確保し易い。海外での日本酒や国産ワインの人気を背景に、酒米やワイン用ブドウを挙げた農家も多かった。また、早くに変わり種を栽培することで先行メリットを得ようとする農家もある。ルッコラ等のイタリア野菜がそうだ。因みに、他ならぬコメ農家自身が「コメには将来性が無い」と断言しており(コメ農家のリスクについては下段コラム参照)、果敢に別の農産物栽培を計画している例も多かった。大競争時代を迎えたニッポンの農業。農家にも変革が求められている。




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■“温暖化米”開発ラッシュでコシヒカリ生産農家の危機
1956年に生まれた“コシヒカリ”。人気・生産量共に日本一を誇る王者ブランドだが、近年、その地位を脅かすライバルが台頭している。それが、高温耐性品種と呼ばれる“温暖化対策米”だ。実際に、“きぬむすめ”や“つや姫”といったブランド米は作付面積を急拡大させており、首都圏でも広く認知されるようになってきた。コメの栽培期間のある一定時期に気温が上昇すると、“白未熟粒”という味も外見も悪いコメになってしまう。この被害を回避できるのが高温耐性品種だ。これらに共通しているのは、ピンチに生まれたコメなのに味が良質であること。コメの業界団体が主催する品評会でも高い評価を獲得し始めている。実は、これらの高温耐性品種の間でも熾烈な産地間競争が勃発している。“ふさこがね”(千葉県)や“さがびより”(佐賀県)等のように、品種改良に成功した県が、同県内で栽培して普及させていくのが一般的だ。だが、大躍進している“きぬむすめ”(島根県)や“つや姫”(山形県)は、複数の県とタッグを組んで栽培地域を広げて、ブランド力をアップさせている。コシヒカリを生産する農家たちが、これらの新生ブランドを警戒するのはその為だ。翻って、「コシヒカリでは高温耐性品種を作るのは難しい」(研究者)とされており、早晩、コシヒカリの生産に依存する農家は対応を迫られるだろう。農業の世界でも、商品開発力やマーケティング力が必要な時代になっている。


キャプチャ  2016年2月6日号掲載


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テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

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