【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(55) 世界を“アングル化”するドナルド・トランプの戦術は“リアルWWE”だ!

2007年4月、超人気プロレス団体『WWE』の巨大イベントに現れたドナルド・トランプは、会場に何万ドルという現金をばら撒きました。“大富豪キャラ”のパフォーマンスに、ファンは狂喜乱舞します。トランプを敵視するWWEのビンス・マクマホンCEOは怒り狂い、互いの頭髪をかけた“億万長者対決”を要求しますが、代理レスラー同士の戦いはトランプ側が勝利。CEOはリングの真ん中でスキンヘッドにされ、ファンの興奮は絶頂へ…。この時のみならず、トランプは過去、WWEに度々登場しています。しかも、“悪のオーナー”マクマホンを苦しめる“善玉”として。善玉とは言え、ファンの留飲を下げる為にかなり荒々しいこともやるのですが、その狡猾さも多くのファンを熱狂させてきました。そして今、その世界観がアメリカ大統領選にトレースされています。共和党候補者選びでトップを走るトランプに依れば、オバマ大統領もメディアも、更には共和党主流派でさえも、全てが“強いアメリカ”の敵。自分だけが、そんな全方位の敵と戦い続ける“勇気あるならず者”――。

トランプが提示するパラノイア的な世界観に引き込まれる支持層は、WWEの“大味且つ劇的な世界観”を好む層とかなりの部分で一致している。トランプは、この層に訴えかけるのが実に巧いのです。2月末、CNNのインタビューで、白人至上主義団体『クー・クラックス・クラン(KKK)』の元最高幹部に依る支持について問われたトランプ。この時、敢えて明確に「拒否する」と即答しなかった辺りも実に“プロレス的”でした。普通の候補者なら、こんな有難くない支持は即刻、拒否するでしょう。しかしトランプは、「そんな知らん奴のことは答えようがない」とすっとぼけた(勿論、本当は知らない訳がないのに)。敢えて“タメ”を作り、そこにライバル候補やメディアの批判を集中させるよう仕向けたのです。狙い通りに周囲が騒ぎ立てると、トランプはすかさずツイッターで、2日前の自身の記者会見動画を紹介(CNNのインタビューと違って、その会見では元KKK幹部の支持を明確に拒否していた)。「この時の発言通りに支持を拒否する」とコメントしました。「騒いだ奴らは本当に馬鹿だな。そんな小さなことばかり気にしているから駄目なんだよ」と言わんばかりの、トランプ流の強烈な皮肉でした。




敢えて不謹慎な言動を取り、批判を集めておいてから、大どんでん返しで相手を愚弄する。これで、(少なくともトランプの支持層には)「全ては彼の掌の上で踊っている…」という印象が強まります。また、彼はこの件で、保守層の支持を掘り起こすことにも成功しました。KKKを表立って支持することはなくても、その主張のうちソフトな面に内心、同調する白人はそれなりに多い。「支持を拒否する」と即答しなかったことで、こうした層に「トランプはわかっている」と思わせる効果はあった筈です(勿論、これは“人種差別主義者”と呼ばれるリスクも伴いますが)。まるでスターレスラーのような反射神経と“アングル作り”の巧さに、人々は魅了されているのです。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2016年3月28日号掲載


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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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