【宮崎哲弥の時々砲弾】 リベラルですが、何か?(中)

民主党の中にも、標準的なマクロ経済政策論を展開できる国会議員はいる。嘗て『デフレ脱却議員連盟』に集った有志者たちだ。2010年3月の発足当時、私はこの新しい動きを歓迎し、できる限り助力した。彼らはアべノミクスよりも強力な金融政策を提言し、財政規律や構造改革に固執する民主党を変えようとしていた。そして今も、アメリカ民主党のバーニー・サンダースやイギリス労働党のジェレミー・コービンのように、リベラル本来の政策を打ち出そうと苦闘している。だが、執行部や幹部クラスに、リベラルには全くそぐわない硬直的な緊縮論者が盤踞していて、経済政策の全面転換を阻むのだ。差し詰め、野田佳彦最高顧問は守旧勢力の代表と言えよう。この首相経験者は尚、消費税増税に拘泥している(朝日新聞・2015年12月26日朝刊)。未だ大衆課税や歳出削減に依って財政の立て直しが可能だと思い込んでいるらしい。飽く迄も緊縮政策にしがみ付く暗愚さには“びっくりぽん”だ。既に屢述してきたことだが、もう一度言っておく。

財政再建に有効な方途は、トマ・ピケティの経済史研究等を踏まえて言えば、①経済成長②イン フレ③所得や資産に対する累進課税の強化④債務再編――である。少なくとも、リベラルが採るべき“経済成長と財政再建の両立を図る”道は、この4つの組み合わせにしかない。また、野田氏は『連合』の春闘決起大会で、「アベノミクスは間違っていた。底上げの経済政策・分配こそが最大の成長戦略だ」とも口走ったらしいが、「一定の成長は財政再建の前提であると同時に、富の再分配の前提でもある」という事実を全く無視した発言だ。例えば、典型的な所得再分配の制度である累進税は、成長に従って税収も増大する。一方、典型的な逆進税である消費税は、好景気下でも税収は伸びない。欧米のリベラルが、最大限の成長と共に累進性の高い税の導入を主張する所以だ。経済成長は決して全ての問題を解決するものではないが、“全てを解決に導く為の必要条件”なのだ。この点、民主党に建言する“押しかけシンクタンク”として、様々な分野の学者・研究者に依って結成された『リベラル懇話会』の見解は真っ当だ。同会の基本合意事項を見ると、劈頭「私たちは低成長をよしとしません」とある。「“厚みのある社会”のためには、健全な経済成長が必要です」とも。実にいい。設立趣意では更に敷衍されている。「健全な経済成長をベースとしながら、経済学者のアマルティア・センが提唱する人びとの“潜在能力”の自由と平等を実現し、“機会の平等vs結果の平等”という硬直した図式を乗り越え、多様かつ他様な人びとの“生き方の幅”を、社会的連帯の維持とともに考察していく――それが私たちの考える“厚みのある社会”“社会的包摂”の基本構想です」




さしもの野田氏も多少成長が気に掛かってきたらしく、先の連合の大会でまたぞろ「安倍政権の3年で実質GDPは、年平均で0.6%。あれだけアベノミクスと宣伝し、異次元の金融緩和まで行って、0.6%だ。民主党政権では年平均で1.7%だった。安倍政権の3倍です」と放言した。これがGDP成長率の完全な読み違えであることは既に論証済み。「リーマンショック後の急激な落ち込みから世界が立ち直るに連れて、日本もある程度復元した」分を己の手柄に繰り入れているだけなのだ。この錯誤は成長率のような変化率ではなく、実質GDPの実額を見れば一目瞭然だ。暦年べースで、民主党時代は2010年が513兆円。2011年は510兆円。2012年は519兆円。アべノミクス時代は2013年と2014年が527兆円。2015年は528兆円だった。これでも、「民主党政権下のほうが成長していた」と強弁するつもりだろうか?


宮崎哲弥(みやざき・てつや) 研究開発コンサルティング会社『アルターブレイン』副代表・京都産業大学客員教授。1962年、福岡県生まれ。慶應義塾大学文学部社会学科卒。総務省『通信・放送の在り方に関する懇談会』構成員や共同通信の論壇時評等を歴任。『憂国の方程式』(PHP研究所)・『1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド』(新潮社)等著書多数。


キャプチャ  2016年3月17日号掲載


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テーマ : 民主党
ジャンル : 政治・経済

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