【日曜に想う】 一宿一飯の日中交流

「日本と中国の政治家には是非、相手の国からやって来る高校生たちのホームステイを引き受けてほしい」――。中国政治の専門家である東京大学教授の高原明生さんは最近、機会ある毎にそう力説している。「物凄く大きな認識ギャップが国民にも政治家にもある。其々、相手国が全て悪いと思っています」。これをどうにかしたい。ギャップを埋めるには、直接の出会いがいい。中でも、ホームステイは決定打ではないかと考えている。実は、若者の交流はかなりの規模で続いている。例えば、第1次安倍政権の時に始めた若者の交流プログラム等で、高校生や大学生ら若者が毎年数百人から数千人、日本に来ている。1週間程度の日程は、観光地を訪れたり学校を見学したり盛り沢山だが、ホームステイはそのハイライト。ホスト家庭にも若者たちにも強い印象を残す。交流の大きな担い手である日中友好会館の報告書に掲載された高校生の感想文からも窺える。「私は家族の一員になったような気がした。別れる時、寒い中ずっと外に立って見送ってくれた」「おじいさんとおばあさんが大変心優しく、私たちのために鍋料理を用意してくれた」。1~2泊だけのふれあいが、最後は涙の別れになることも屡々。アンケート(2014年度)でも、日本の印象が「非常に良くなった」と「ある程度良くなった」という回答を合わせると99%。片言の中国語や日本語、英語での会話にも拘らず、だ。「一宿一飯の恩義とはよく言ったものです」と高原さん。

話を聞きながら思い出したことがある。ロンドンと東京で取材した『生きている図書館』というちょっと変わったイベントだ。この図書館に用意されるのは、普通の本ではなくて生身の人間。外国人・性転換者・元マフィア等、多くの人にとって日頃近付き難かったり、話す機会があまり無かったりする人たちを招いて“本”になってもらう。入館者は、この“本”を30分ほど借り出し、何でも知りたいことを率直に尋ね、対話する。デンマークで始まった試みで、その後、ヨーロッパ各地や日本にも広がっていった。「私たちは偏見やステレオタイプに染まりがち。必要なのは、日常での直接の交流です。それが欠けたままで、民族や文化等についての偏見をどうやって無くせるでしょう」と、発案者でデンマーク人のロニ・アバゲールさんは8年前のインタビューで話していた。未だ日本に実施例の無かった頃で、こんな提案もしてくれた。「日本でも、例えば中国からの移民に“本”になってもらえばいいのでは。誰かを話題にするより、本人と話したほうが理解は深まります」。日中交流での感想文をもう1つ。「日本人だから、中国人だからと考えることも時には必要ですが、相手と良い関係を築きたいと思うのならば、そのような色眼鏡を外して付き合うことが重要」。そうして見ると、「彼らも私たちと殆ど何も変わらないことに気付きました」。こちらは、迎えた日本の高校生の言葉だ。直接の出会いで大事なのは、お互いの違いより共通点に気付く体験のほうかもしれない。




何とか心を通わせようとする両国の若者たち。扨て、政治家は? 高原さんが昨年末、北京での会合でホームステイのアイデアを披露したら、その場にいた2人の中国共産党中央委員から「受け入れましょう」と応じる声が上がった。一方、最近の日本の国会議員20人ほどの集まりでは、その声が無かった。「『無理だ』と拒む人がいた訳ではないけれど」とちょっと残念そう。議員の皆さん、“おもてなしの国”の政治家として一肌脱いでは? (論説主幹 大野博人)


≡朝日新聞 2016年3月27日付掲載≡
無理無理無理 [ ドラマチックアラスカ ]

無理無理無理 [ ドラマチックアラスカ ]
価格:1,000円(税込、送料込)



スポンサーサイト

テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR