職員を洗脳して上層部は大儲け! 究極のブラックイベント『介護甲子園』の実態

洗脳された職員たちが一堂に会する行事『介護甲子園』。新興宗教宛らの危ないイベントが毎年開催される理由とは? 超絶ブラックな介護業界の裏側と、それを牛耳る上層部の思惑を完全暴露する! (取材・文/ノンフィクションライター 中村淳彦)

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2015年11月22日、『第5回介護甲子園』に行ってきた。入場料は5000円と高額である。2週間前にパシフィコ横浜で開催された『居酒屋甲子園』にも足を運んだが、若い居酒屋関係者たちで活気があった。一方、介護甲子園の会場となった日比谷公会堂の周辺は、人は疎らで寂しげだった。介護業界がブラックであるという認識は一般的なものとなり、今や圧倒的な不人気職である。誰も好き好んで“低賃金・重労働・ブラック塗れ”な職場に就きたいとは思わないだろう。ところが、「介護業界で働く人が最高に輝ける場所を提供する」という目的で2011年に開催された介護甲子園の参加事業所は、年々増えているのだという。2014年1月14日に放送された『クローズアップ現代』(NHK総合テレビ)の『あふれる“ポエム”!? ~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~』に依って、姉妹イベントである居酒屋甲子園が“ブラック企業の温床”“やりがい搾取”“若者搾取”と大きな批判を浴びた。だが、そんなバッシングもどこ吹く風。介護甲子園の公式サイトには、「介護に就く人がこの仕事の尊さや誇りを再確認して、自分の夢や目標を持って仕事できたらいいのではないか。【中略】夢を語るステージを“介護甲子園”で提供したい! その夢を、応援する仲間たちと語りあいたい!」とお綺麗な言葉が並んでいる。2015年4月、介護事業は平均2.27%、小規模デイに至っては最大9.8%という厳し過ぎる介護報酬減が実行された。そこで業界上層部は、「賃金ではなく“夢”や“やりがい”をアピールして、賃金を下げながらもっと働かせよう」という思惑の下、介護甲子園を開催させたのだ。

当日は介護甲子園の決勝大会である。地方予選を勝ち抜いて決勝に残った5施設が、日比谷公会堂の壇上で観客を前に夢・感謝・やりがい・独自の取り組み等を叫ぶ。同業の来場者たちは壇上で叫ぶ介護職たちの夢を応援して、感動をシェアして自己啓発する。そして、日々の介護業務のモチベーションを上昇させる。介護甲子園に依って自己啓発され、一生懸命働く介護職が増え、日本中で介護を人気職にして人材を獲得していく――。それが業界上層部が描くシナリオである。しかし、社会人として壇上で業務に関する夢を叫ぶなんて恥ずかしいし、単なるバカだ。常識的に、これ以上格好悪いことはない。イメージアップで人材確保したいならば、低賃金や重労働やブラック労働を止めればいいのだが、どんどんおかしな方向に傾いている。日比谷公会堂に集まる関係者たちは、本当に壇上で夢を叫ぶことが人材確保に繋がると信じ込んでいた。最早カルトである。そして、入場前から気持ち悪い風景があった。日比谷公会堂入り口に、高級スーツを着熟す2人の男性が作り笑いを浮かべて、観客を1人ひとり迎えている。介護甲子園を主催する『日本介護協会』の左敬真理事長と斉藤正行副理事長である。2人は兎に角、華やかな笑顔を張り付け、「いらっしゃいませ」と挨拶し、同じような富裕層みたいな人物がやって来ると念入りにハグをしたりしている。まるで成金政治家のパーティーだ。筆者はすり抜けるように会場入りして、2階に上がった。開始時間ギリギリに入場したにも拘らず、2階は閑散として、来客は殆どいなかった。観客は精々1000人程度だろうか。介護職に就く人たちはブラックな経営者たちに搾取され、基本的に低賃金&長時間労働に甘んじている。介護は非正規雇用が蔓延するブラックな産業であり、貧困ギリギリのような職員も多く、到底5000円の入場料など払えない。更に、2階から見ても少ない観客の中で目立つのは、華やかで富裕な左理事長と斉藤副理事長ばかり。主旨の“介護職たちに輝ける場所を提供”どころか、自分たちばかりが輝いているのだった。彼ら介護業界の上層部が甲子園を派手に開催する目的は、既にNHKが報道に依ってやりがい搾取の問題を提起しているように、出場者・来場者・全国の介護職への洗脳とマインドコントロールである。多くの介護経営者たちは“ブラックモンスター”渡邉美樹氏の成功の影響を受けて、理念経営を事業所に取り入れている。日々、介護事業所で行う理念の叩き込みをイベント化し、1人でも多くの介護職を洗脳しようというマネジメントなのだ。更に、介護職たちへの洗脳だけでは飽き足らず、「自分が目立ちたい」という上層部たちの本音は、会場にいるだけで見え隠れする。現在、超不人気職である介護に従事するような介護職たちの多くは、純粋で単純で性善説が強く、世の中を斜めに眺める力が無い。しかも、多くはブラック労働をさせられているので、自分で考える時間すら無い。そのような劣悪な環境で働く施設の人たちは、業界上層部たちが使う“夢”という言葉を信じ込む傾向にあり、年々洗脳は過激化している。




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愈々、第5回介護甲子園が始まった。今回出場するのは、『児童デイサービス・たからばこ』(千葉県)・『デイサービスどき二号館』(香川県)・『グループホーム・ルンビニー』(愛媛県)・『弘前ビジネスアカデミー』(青森県)・『サンベストビレッジ浮間公園』(東京都)。今回から高齢者福祉だけではなく、障害児や障害者施設も参加している。『たからばこ』は、真面目そうな施設長の女性が児童との日常を紹介。子供たちが一番楽しみにするクリスマス会の風景を、冴えない職員たちと再現する。小学校低学年の学芸会といった感じだ。『どき二号館』は、職員たちが“夢を持つ”“顧客満足度”と印刷されたヤバいシャツを着て、「利用者ではなく、お客様!」と叫ぶ。施設で話せばいいのに、態々東京に来て壇上で叫ぶ意味がわからない。寸劇では、若い介護職が「新車のベンツを買うのが夢! いつ買えるのでしょうか?」と上司に迫るが、買える訳がない。その若い職員は、どうして転職しないのか。『ルンビニー』は、34人の高齢者を入浴して見送ったことを感動話として叫ぶ。施設で亡くなった高齢者には感謝の気持ちで一杯なのだそう。『弘前ビジネスアカデミー』は障害者就労支援で、障害者に訓練プログラムを課して人手不足の介護施設に送り込むことを提案。自社の介護施設に続々就職させているらしい。障害者就労支援や障害者雇用助成金等、福祉制度をフル活用するエグい取り組みだった。何が感動なのかさっぱりわからない。『サンベストビレッジ』は、暑苦しい男性施設長が“ミュージック&お笑いケア”の素晴らしさを絶叫し、笑顔が絶えない施設であることを必死にアピール。施設内には絆が一杯なんだって。4時間近くも鑑賞して疲れ果てた。取り組みとか内容以前に、壇上で叫んでいる介護職たちはババアと中年童貞みたいな人ばかり。存在自体に夢も希望も無く、中年童貞みたいな人たちの夢を聞かされて誰が共感するのか。挙げ句、2人の介護職のおばさんは、苦労して育てた娘を介護職にしたそうで。貧困の連鎖まで感動話に。筆者は、彼らが語る内容ではなく、身も心も貧しそうな介護職たちそのものに涙腺が刺激されてしまった。介護甲子園にあったのは、高級スーツに身を包むリッチな左理事長や斉藤副理事長と、彼らより年長なのに貧しさ全開で夢を語る介護職たちの姿。蔓延する格差社会の縮図が介護甲子園にはあった。結局、死後の入浴という美談を語りまくり、おばさんたちが醜いダンスを披露した『グループホーム・ルンビニー』が優勝。おばさんたちは、優勝旗を貰って嬉しそうだった。

介護甲子園は、『日本介護協会』なる一般社団法人が主催している。名前を連ねる理事たちは、善良な介護関係者ではなく、魑魅魍魎な若手ベンチャー経営者や、超高齢化社会が発するカネの匂いに近付く胡散臭い取り巻きばかり。左敬真理事長は、介護フランチャイズ『いきいきらいふ』の創業者。関口貴巳理事は、埼玉県で介護事業を展開する『ハートグループ』代表の傍ら、『日本介護ネットワーク協会』という介護職をターゲットにした自己啓発団体のトップを務める。飯田元輔理事は、自己啓発セミナー業界で売り出し中のプロデューサーだ。介護甲子園の主催者たちは、介護事業と自己啓発をハイブリッドしたイケイケの若手経営者たちの集まりなのだ。そして、これらの人物を束ね、介護甲子園を仕掛けるのは斉藤正行副理事長である。2015年4月、荒廃する介護業界に更なる楔を打ち込むように、介護報酬の歴史的なマイナス改定が行われた。派手に稼ぐ介護ベンチャーの動きを行政、とりわけ財務省が問題視したことが理由と言われている。特に減額のターゲットとなったのが小規模デイサービスで、零細事業者が最も多い同業態では廃業を選択する業者が続出している。都内で同じ小規模デイサービスを運営する経営者は語る。「小規模デイサービスが10%近い大幅なマイナス改定になった元凶は、業界で派手にフランチャイズシステムを導入した介護ベンチャーの存在です。これらの企業がフランチャイズ・コンサルティング・セミナー商法で荒稼ぎするのを、行政当局が問題視した。その代表格が“茶話本舗”、そして同社の元経営陣で介護甲子園を事実上主催する斉藤正行氏です」。斉藤氏は、立命館大学在学中に自民党・小池百合子衆議院議員の秘書を務め、当時、フランチャイズ事業の雄だった『ベンチャーリンク』(2012年に民事再生法適用申請で事集上倒産)に新卒で入社。その後、全国800店舗のお泊りデイサービス『茶話本舗』を運営する『日本介護福祉グループ』の副社長に就任。“介護の産業化”を掲げて茶話本舗を急拡大させた。2013年に退任後、『日本介護ベンチャー協会』理事長・『日本介護協会』副理事・『日本在宅介護協会』・『お泊りデイサービス協会』副理事長・『リハビリデイサービス協会』理事と、数々の業界団体に名前を連ねる。更に『日本介護ベンチャーコンサルティング』代表・『いきいきらいふ』社外取締役等を加えると、数え切れないほどの肩書を抱えている。

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しかし、斉藤氏が基盤を作り上げた茶話本舗を運営する日本介護福祉グループでは、トラブルが相次いでいる。フランチャイズ形式で素人経営者に続々と介護施設を運営させた結果、茶話本舗では虐待・不正・ブラック労働・火災発生といった問題が続出した。真面な人材の採用が追いつかない状態での過剰出店が原因である。更に『週刊新潮』2014年7月3日号では、「“認知症”老人を縛り付けて猿ぐつわという“茶話本舗”虐待デイサービス」というタイトルで大々的に報道され、千葉県の施設でも5700万円もの返還命令が下る巨額不正受給事件を起こした。介護甲子園で夢を語りながら、介護保険事業という公金を貪っているのだ。2015年4月、斉藤氏が仕掛けたフランチャイズでの介護施設の粗製濫造や様々なトラブルが原因の1つとなって、国は報酬減という兵糧攻めを行い、小規模デイサービス潰しに乗り出した。その思惑通り、小規模デイサービスは経営が成り立たなくなり、続々と閉鎖されている。利用する高齢者や働く職員だけでなく、全国の全ての小規模デイサービスは今や阿鼻叫喚である。埼玉県で介護事業を営む経営者が語る。「介護がフランチャイズ化されて、必要な労働対価が介護職員に配られていない。公金保険料が悪徳介護フランチャイズに流れて、不必要な社会保障費が膨らんでいる。今回の報酬減に依る国の小規模デイサービス潰しは当然の流れだ。悪徳業者に売り上げの一部を流してしまっている介護事業所は、経営がおかしくなる。それが介護職の貧困の原因の1つとなっている。介護職はブラック労働・ダブルワーク・トリプルワークが当たり前で、もう限界になっている。自分たちが多くの介護職を貧困に追い込みながら、よく介護甲子園なんてできると思う。ふざけている」。介護甲子園は業界の発展どころか、美辞麗句に依って介護職たちを薄汚い現実から目を背けさせるという目的があった。参加者たちは夢を絶叫して、洗脳され、介護と自己啓発をハイブリッドした悪徳業者たちに人生そのものを利用さ れる――。そんな恐ろしい実態があるのだ。


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