【ソニー・熱狂なき復活】(06) 低下するシェア…稼ぎ頭の映画に漂う不安

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エレクトロニクスの凋落に注目が集まり、相対的によく見られがちなエンタテインメント事業。だが、決して安泰ではない。ここでは、『ソニー』が成長分野に掲げている映画の動向を見てみよう。アメリカの調査会社『レントラック』の推定に依ると、世界の市場規模は2015年に380億ドルで、ここ数年は右肩上がりだ(右図)。内訳は、最大市場のアメリカが110億ドル、中国が68億ドルと続く。アメリカの劇場興行収入における『ソニーピクチャーズエンタテインメント』のシェアは、2012年以降低下。昨年はハリウッドの大手映画会社6社の中で5番目と、元気が無い。世界シェアは不明だが、アメリカでのシェアの低さが、世界でもヒット作があまり無いことを如実に表している。

苦戦の原因は、売り上げの柱となる人気シリーズの少なさだ。各映画会社は年間に10~20本以上を劇場公開する。基本的なラインナップ戦略は、売り上げの柱となる人気シリーズを毎年公開しつつ、シリーズ化を視野に入れた大作(アクションが中心)を巨額の制作費をかけて作り、比較的予算の低い中規模・小規模の作品(感動ドラマ・ラブストーリー・サスペンス等)で1年間を埋めていく。劇場興行収入が大きければ、その後のブルーレイ・DVD販売・テレビ放映権の売り上げも比例して大きくなる傾向にあり、各社は劇場での大ヒットが見込める作品の制作に力を入れる。ソニーの作品で2010年以降、アメリカで興行収入2億ドルを超えたのは、『007』と『アメイジング・スパイダーマン』の2シリーズのみ。それに続く新しいシリーズ作は出ていない。片や昨年、ラインナップ戦略が最も成功したのが『ユニバーサル』だ。昨年のシェアは21.3%でトップ。カーアクション映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』(全米年間興行収入ランキング5位)とCGアニメ『ミニオンズ』(同6位)という人気シリーズ2つが期待通りに大ヒットし、シリーズ化を視野に入れて14年ぶりに復活させた恐竜映画『ジュラシック・ワールド』(同2位)も大ヒット。3本柱で躍進した。現状では、007とスパイダーマン頼みになっているソニー。ところが、この2作品にも不安が漂っている。007シリーズは『イオンプロダクションズ』が制作し、ソニーが『カジノ・ロワイヤル』(2006年)から配給してきたが、昨年公開された『スペクター』で契約が満了した。現在はソニーをはじめ、『20世紀フォックス』や『ワーナーブラザース』等が今後の配給権を巡り、争奪戦を繰り広げているという。一方、スパイダーマンシリーズは元々、2002~2007年に3作が制作されて大ヒット。『アメイジング・スパイダーマン』は、監督と出演者を代えて新たにシリーズ化したものだ。2012年公開の1作目は興行収入2.6億ドルと、2007年の『スパイダーマン3』の3.3億ドルを下回った。2014年の『アメイジング・スパイダーマン2』は2億ドルと更に落ち込んだ。




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そこで、ソニーはテコ入れ策に打って出る。アメリカンコミック(アメコミ)で人気の高い『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ』『ハルク』等の作品の権利を保有する出版社『マーベル』と、スパイダーマンの映画を共同制作すると発表した。実はスパイダーマンも、作品の権利を持っているのはマーベルだ。ただ、スパイダーマンの映画化権はソニーが取得。その為、マーベルが制作するアメコミのヒーロー映画にスパイダーマンは登場していなかった。共同制作にしたことで、マーベルは自社の映画にスパイダーマンを登場させることが可能になり、ソニーはそれに依ってスパイダーマン人気上昇が期待できる。4月公開の『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』に早速、スパイダーマンが登場する。ソニーの思惑通り、スパイダーマン人気が高まり、次作の大ヒットに繋がるかどうかが、今後の戦略に影響を及ぼす。次作の公開は来年を予定している。今年は注目を集める作品もある。久々に復活する人気シリーズ作と、シリーズ化を視野に入れたリメークの2本だ。人気シリーズ作がダン・ブラウン原作『インフェルノ』で、宗教象徴学者のラングドン教授が活躍する歴史ミステリー。過去に『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』が作られ、復活は7年ぶりとなる。シリーズ化を視野に入れた作品は『ゴーストバスターズ』と『ジュマンジ』。ゴーストバスターズは、1980年代に2作が作られたSFアクションを女性主人公でリメーク。ジュマンジは、1995年に作られたアドベンチャー映画のリメークだ。ジュラシック・ワールドの成功に代表されるように、過去のシリーズ作は知名度が高い為、現代風に上手くアレンジできればヒットの可能性は十分ある。これらの作品でどこまでシェアを換回できるか。今年はソニーにとって、非常に重要な戦いになる。


相良智弘(さがら・ともひろ) 映画ジャーナリスト。『日経BP社』『カルチュア・コンビニエンス・クラブ』を経て、『日経エンタテインメント!』の映画担当。2010年から現職。


キャプチャ  2016年1月30日号掲載
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