【丸分かり・激震中国】(06) 住宅着工は低迷したまま…二極化進み景気の足枷に

金融緩和等で住宅販売は持ち直しつつあるが、在庫は依然として高水準。都市と地方の大きな格差も問題を孕む。 (ニッセイ基礎研究所上席研究員 三尾幸吉郎)

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不動産の建設・販売の動きは、中国の景気循環を作る要因の1つとなっている。中でも、住宅は不動産販売額の8割を占めており、経済全体への影響も大きい。住宅市場が回復すれば、不動産業だけではなく、建物を造る建築業、そこで使用される建設機械や資材を生産する製造業、住宅に収まる家具や家電等に対する需要も増え、小売業も活性化して、その影響は経済全体に及ぶ為だ。住宅市場の最近の動きを見ると、販売は足元で持ち直している。その要因は、住宅購入制限の緩和と金融緩和である。昨年は、住宅を購入する際の戸数や戸籍等の制限の緩和が各地で相次ぎ、住宅ローンを借りる際の頭金比率の条件も緩和されていった。また、2014年11月以降、『中国人民銀行』(中央銀行)は政策金利を6回に亘って引き下げ、それに伴い住宅ローン金利も低下することが多く、新たな住宅が購入し易くなったのである。その結果、昨年1~11月期の住宅販売(面積)は前年比7.9%増となり、2014年通期の同9.1%減からプラスに転じた。こうして、住宅販売が持ち直すと共に住宅価格も底打ちした。北京市の新築分譲住宅価格は前年同月比で10.4%上昇、上海市も同18.2%上昇となっている。『ニッセイ基礎研究所』で70都市の単純平均を計算したところ、全体でも昨年4月を底に上昇してきている。ところが、住宅着工は低迷したままである。昨年1~11月期の新規住宅着工(面積)は、前年同期比15.3%減となり、2014年通期の同14.4%減に続いて2年連続で2桁減となった。在庫が依然高水準な為だ。住宅販売が更に加速して在庫が減れば、新規住宅着工も増加に転じると見られるが、それほどの勢いは無い。このままだと住宅建設が伸び悩んで、景気の足枷になりかねない。この為、昨年12月に開催された中央経済工作会議では、①出稼ぎ農民(農民工)を就業地で転籍させる“市民化”に依って住宅販売を促進すること、②不動産業者に対する住宅販売価格の引き下げを要請すること――等を盛り込み、住宅在庫の削減に取り組む方針が示された。しかし、農民工が本当に住宅を買うのかについては疑問符が付く。もう1つの問題は、中国の住宅市場が二極化していることだ。北京・上海・深圳等といった沿海部の巨大都市では、住宅価格が最高値を更新するほど上昇している一方で、東北部等では底打ちの兆しが見られない(左図)。昨年1~11月期の住宅販売額を見ても、上海では前年比59.3%増、北京では同27.9%増、深圳のある広東省でも同44.5%増と大きく増えたものの、東北部の遼寧省では同24.0%減、黒竜江省では同14.2%減と減少が止まらない。

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また、リーマンショック後の大型景気対策に依り、各地で宅地造成が進み、産業誘致や交通利便性等、そこに住む人の事情を十分に踏まえない乱開発が相次いだ。こうしたこともあって、各地でゴーストタウン(鬼城)と呼ばれる人の住まないマンション群が発生。最近は、地方政府が債務上限を絞られたこともあって、完成せずに建築がストップしているプロジェクトも多い。一方、2014年3月に中国共産党と中央政府が連名で打ち出した『国家新型都市化計画』(2014~2020年)が進めば、地方都市でも住宅需要が増える可能性がある。北京や上海等の巨大都市と周辺の中小型都市を鉄道等の交通網で結ぶことに依り、周辺都市が巨大都市のサテライトとなって新たな産業が生まれる他、その中間に位置する駅周辺でもベッドタウンとしてのニーズが高まると考えられるからだ。例えば北京周辺では、北京と天津を中核として、それを取り囲むような位置にある河北省を1つの経済圏として開発する“京津冀一体化構想”が進められている。北京に集中する機能のうち、首都機能以外を分散ししたり、北京を中心とした“1時間通勤圏”を構築したりすることを目指し、鉄道や道路等の交通網の整備に取り組んでいる。これが進めば、北京周辺の中小型都市でも住宅ニーズが増えると見られる。だが、地方政府の債務上限が絞られる中で、こうした都市化計画を推進するのは至難の業。ならば民間の資金を活用しようとPPP(官民連携)を推奨したものの、今のところ大きな潮流とはなっていない。従って、整備のスピードは鈍く、住宅ニーズが増えると期待された河北省の住宅価格も低迷したままだ。また、腐敗汚職の取り締まりを強化する中で、プロジェクトの推進役を果たすべき地方政府の幹部が、誤解を恐れて様子見姿勢となり、推進が遅れているという側面もある。李克強首相が、汚職だけでなく、こうした職務怠慢も取り締まっていく姿勢を強調し、政策の実施責任を明確にして、自主的な取り組みを評価する方針を示したのも、こうした事情が背景にある。従って、地方政府が債券発行を増やすか、PPPが活発化して民間資金の導入が進むかすれば、新型都市化計画も進み、住宅市場は勢いを取り戻すと考えられる。だが、そうした動きが出てこなければ、住宅市場は低迷を続け、景気の足枷となる恐れがあるだろう。




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■中国企業の日本不動産買い急増
中国市場が混乱する一方で、中国や香港企業による日本への不動産投資は急増している。投資用不動産で見た投資額の合計は、2014年の約800億円から2015年は約3700億円に拡大。2015年の日本の不動産投資額で最大の『目黒雅叙園』に投資したのも『中国投資有限責任公司(CIC)』だ。中国・香港企業による日本への不動産投資は、その性質から大きく3つに分かれる。1つは、欧米等も含めた国際的な分散投資の一環としての投資で、対象はオフィスビルが多い。円安もあり、近年増えている。積極的な企業は、中国のコングロマリット『復星集団』や、日本の不動産会社を買収した香港の投資会社『PAG』等。彼らが狙う地域は東京と大阪が主体で、東京では意外にも都心部から少し外れた場所が多い。これは、日本人や欧米人が指標にするキャップレート(利回り)ではなく、平米単価を指標にしており、平米単価で見るとこうした地域が割安になる為である。但し、高値に対する警戒感が出始めているので、今後、この分野の投資が大きく増えるかは不透明。逆に売却する事例もある。2つ目は、インバウンド目当てのホテルや商業施設への投資で、こちらは未だ拡大余地がある。報道によると、『積水ハウス』は中国の『春秋航空グループ』と資本提携する方針で、春秋の就航先のホテルや商業施設開発等に協力するという。北海道等の地方のホテルも人気で、こうした動きは今後も増えそうだ。3つ目は、富裕層の中国人個人による投資で、対象はマンション等が多い。その目的は、投資・自分で住む・将来的に子供を留学させる・海外への資金逃避等。但し、日本はビザや言葉の問題も多い為、日本よりも欧米やオーストラリアの住宅に投資する中国人のほうが多い。尚、これらの投資は、日本がバブル期にアメリカ本土・ハワイ・オーストラリアで行った投資と類似していると見ることもできる。 (『ドイチェアセットマネジメント』アジア太平洋リサーチ&ストラテジーヘッドディレクター 小夫孝一郎)


キャプチャ  2016年2月2日号掲載


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テーマ : 中国経済
ジャンル : 政治・経済

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